食べ物から鉄がどこで吸収されてどのように運ばれるのか調べてみた

この記事では、体の中にある鉄の量とある場所。そして、食べ物から入って来た鉄が吸収されて運ばれて貯蔵されるまでを調べてみました。

鉄分

以前から、鉄の移動についてじっくり読んで、わからないところを調べて理解したいと思っていました。この記事は、すみません、ほぼ自分のために書いています。

イラストレイテッド ハーパー・生化学 原書29版に詳しく説明されていました。

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鉄は体の中にどのくらいあるか

まずは、体の中にどのくらい鉄があるのか調べてみました。

体重70kgの健康な成人男性の体内には、3~4gの鉄があり,表に示すように分布している.通常の状態では,生体は鉄の量を厳密に調整している.

健康な成人男性が1日に失う鉄の量は約1mgであり,小腸からの吸収で補える程度である.

閉経前の成人女性は1日に約1.5mgの鉄を必要とし,月経で血液を失うために男子より欠乏状態になりやすい.

男性は1mg失って、小腸から1mg補給する。

鉄はどこにあるのでしょう?ほとんどが赤血球のヘモグロビンです。貯蔵鉄は、その次に多いです。

70kgの成人男子の鉄分布1
トランスフェリン 3~4mg
赤血球中のヘモグロビン 2500mg
ミオグロビンおよび諸酵素 300mg
貯蔵鉄(フェリチン) 1000mg
吸収量 1mg/日
喪失量 1mg/日
1同体重の成人女子では一般に、貯蔵鉄がより少なく
(100~400mg),喪失量がより多い(1.5~2mg/日)

食べ物からの鉄の移動

閉経前の女性は、鉄喪失のため鉄欠乏症になりやすいですが、鉄は出血などしなければ、リサイクルされて使われます。

食べ物から鉄が入って来る様子を、図を見ながら追って行きましょう。

下図は、上が小腸内腔、つまり食べ物が通過する腸の内部です。その下に腸管上皮細胞があり、その下が血管です。

鉄は、上から下に入ってくると思ってください。また、図にでてくることばは、説明文の中では太字にしてあります。

非ヘム鉄輸送

腸管上皮細胞での非ヘム鉄輸送

腸管上皮細胞に入る前、3価の非ヘム鉄(Fe3+)が2価鉄(Fe2+)に還元される

食物に含まれた鉄は、胃酸によって鉄イオンになり、胃の幽門とつながる部分である、近位十二指腸の小腸上皮細胞から吸収されます。

食品中の鉄は、植物由来の非ヘム鉄と肉からのヘム鉄があります。非ヘム鉄は、3価の鉄(Fe3+)が多く、ヘム鉄は2価(Fe2+)の鉄です。

3価の鉄(Fe3+)は2価(Fe2+)に還元されてから腸管上皮細胞に取り込まれます。

  • Dcytbによって3価の鉄(Fe3+)は2価(Fe2+)に還元されます。

食物中の鉄は非ヘム鉄またはヘム鉄として摂取される.近位十二指腸の小腸上皮細胞での鉄の吸収過程は高度に制御されている.

食事性無機鉄は刷子縁膜に結合した鉄還元酵素である十二指腸シトクロム b duodenal cytochrome b (Dcytb)によって3価(Fe3+)から2価(Fe2+)に還元される.

ビタミンC,胃酸や食物中の多くの他の還元剤も3価から2価への鉄の還元に有利にはたらく.

近位というのは、胃の幽門とつながる位置、つまり、胃のすぐそばだという意味です。胃から出たらすぐに鉄は吸収されるのですね。

小腸の上皮細胞の頂端膜は、刷子縁膜(さっしえんまく)とも呼ばれます。これは,微柔毛(微細な突起構造)が発達していて、刷子(はけ)で縁取られたような形になっているからです。図を見ていただければわかりますね。(出典

duodenalは十二指腸の意味です。

胃酸は塩酸ですが、還元剤にはならないですね。この書き方だと胃酸も還元剤であるように読めますが、鉄が入って来たときに胃酸で鉄イオンにするという役割のようです。

小腸の上皮細胞に入るには2価鉄がよいみたい

3価の鉄イオンFe3+は、還元されて(電子を1個もらって)2価のFe2+に変えられます。小腸の上皮細胞に入るためには2価鉄であることが必要です。

吸収されやすいのは2価鉄だと覚えておきましょう。

続けましょう。

食物中のヘム鉄の変化

食物中のヘム鉄は、3価の鉄(Fe3+)とは別の仕組みで取り込まれます。これについての詳細は調べられなかったので、分かれば更新します。

2価鉄(Fe2+)が腸管上皮細胞内に取りこまれる

  • 2価鉄(Fe2+)は、DMT1によって腸管上皮細胞内に輸送されます。
  • フェリチンとして貯蔵される場合は、腸管上皮細胞内で3価鉄(Fe3+)に戻ります。
  • 2価鉄(Fe2+)が腸管上皮細胞から血液中に排出される場合は、フェロポーチンを通します。
  • 血液中に排出された2価鉄(Fe2+)は、ヘファエスチンによって再び3価鉄(Fe3+)になります。
  • 3価鉄(Fe3+)は血中のトランスフェリンが結合し、3価鉄(Fe3+)を体内のさまざまな部位へ輸送します。

小腸上皮細胞の頂端膜透過による鉄輸送は,2価金属輸送体 1divalent metal transporter 1(DMT1あるいはSLC11A2)が行う.

DMT1は比較的特異性がなく,Mn2+,Co2+,Zn2+, Cu2+やPb2+などの2価陽イオンの輸送にもかかわっていると思われる.

一度上皮細胞内に取り込まれると,鉄はフェリチン ferritin として貯蔵されるか,鉄排出タンパク質であるフェロポーチン ferroportin あるいは鉄調整タンパク質 1 iron-regulated protein 1 (IREG1 あるいは SLC40A1)によって基底膜から血流中に輸送される.

この過程はヘファエスチン hephaestin と共同で行われる.ヘファエスチンは,セルロブラスミンに似た銅含有フェロオキシダーゼで,Fe2+をFe3+に酸化する.

鉄は,血漿中では輸送タンパク質トランスフェリン transferrin によってFe3+の状態で輸送される.過剰な鉄は,フェリチンとして上皮細胞に貯蔵され,上皮細胞が腸管内腔に剥離するときに失われる.

あまり気にしていなかったのですが、ferrinってよく出てきますが、Fe(鉄)そのものか、それと関係が深いことばなのでしょう。Fe(鉄)の語源は、 ferrum(フェラム )で、ラテン語で強固を意味するのだそうです。

血液中に取り込まれたFe2+を、ヘファエスチンが、またFe3+に酸化しますが、これは血液中にFe2+があると過酸化水素と反応して有害な酸素フリーラジカルをつくる触媒になってしまうのを防ぐためなのでしょう。

Fenton(フェントン)反応

この反応は、Fenton(フェントン)反応といいます。ヒドロキシラジカル(OH)は、寿命は短いが、反応性が非常に高く、細胞内高分子を酸化して組織に障害をもたらします。

Fe2+が過酸化水素に酸化されて、Fe3+になるときに、ヒドロキシラジカル(OH)ができます。

フェントン反応

フェントン反応

過酸化水素は体の中で普通にみられる

過酸化水素(H2O2)水は、私が子供の頃、消毒に使われていました。傷口にかけると泡が出てしみるやつです。体の中で過酸化水素は、いつも発生しているのかどうか調べてみました。

過酸化水素は好気的細胞では普通にみられる代謝物であり、その細胞内濃度は生成と分解のバランスにより 10-9~10-7 M に調節されているといわれている(Chance et al., 1979)。

酸素正常状態では、麻酔された健常ラットの肝臓における H2O2 生成速度は、肝臓 1 g 当たり380 nmol /分と測定されている。ラット 100 g 当たりの H2O2 推定総生成量は 1,450 nmol/分であることから、H2O2 全生成量の約 75%が肝臓によるものであることが示された(Chance et al., 1979)。(出典

文中、Mは、mol/L(濃度)のことです。nmolの「n」はナノです。ナノは10億分の1です。

過酸化水素は、ヒトのような酸素呼吸をして生きている細胞では普通に見られるものだとわかりました。さらに、ラットもヒトも体の仕組みに大差はないですから、特に、肝臓で多くつくられると考えてよさそうです。

血液中に入ってきたFe2+は過酸化水素に酸化されないようヘファエスチンによってFe3+に変えられ、改めてできたFe3+には、トランスフェリンが結合します。トランスフェリンが鉄を必要な場所に運びます。

血液中を流れてトランスフェリンが鉄を輸送する

トランスフェリンは肝臓でつくられるタンパク質です。Fe3+に高い親和性を示す結合部位を2つもちます。つまり、トランスフェリンは、鉄原子を2個結合して運ぶことを意味します。

2個の鉄原子を結合したトランスフェリンは、ホロトランスフェリン(Tf-Fe)と呼ばれます。

血漿中のトランスフェリン濃度は、約300mg/dLである.この量で,1dLの血症あたり全部で約300μgの鉄を結合することができる.

この値が,血漿の総鉄結合能 total iron-binding capacity (TIBC) である.通常は,30%のトランスフェリンが鉄で飽和されている.

重篤な鉄欠乏時には,飽和度は16%に満たなくなり,鉄過剰状態では45%を超えることもある.

文中、μg(マイクログラム)は1/100万グラム。1dL(デシリットル)は100mlのことです。

トランスフェリンサイクル

トランスフェリンは、鉄を2個連れて細胞に取り込まれますが、細胞内で鉄を離したあと、アポトランスフェリンとなり、また細胞外へ出ていって鉄を運びに行きます。これを繰り返しています。

ホロトランスフェリン(Tf-Fe)は,細胞表面のクラスリン被覆ピットにあるトランスフェリン受容体(TfR1)に結合する.

TfR1-Tf-Fe複合体は,エンドサイトーシスで細胞内に取り込まれ, エンドサイトーシス小胞は融合して初期エンドソームになる.

初期エンドソームは成熟して後期エンドソームになり,内部のpHが酸性になる.低いpHで,鉄はトランスフェリンの結合部位から離れる.

アポトランスフェリン(apo-Tf)はTfR1に結合したままである.Fe3+は,3価鉄還元酵素 Steap 3 によりFe2+に還元される.

Fe2+はDMT1を経て細胞質に輸送される.TfR1-apo-Tf複合体は,細胞表面に戻り,再利用される.

細胞表面で,TfR1からはapo-Tfが離れ,新たなTf-Feが結合する.このようにしてトランスフェリンサイクルが完成する.

エンドサイトーシス とは細胞が細胞外の物質を取り込む過程の1つ。ちょうど下図左上のホロトランスフェリンとトランスフェリン受容体がついて、細胞の中に取り込まれようとしている状態のことを指しています。

エンドソームとは、一重の生体膜からなる小胞のことです。ほぼ全ての真核細胞(細胞核をもつ細胞)が持ち、細胞外の分子の取り込みに使われます。

アポトランスフェリンとは、血漿中で鉄の輸送をするタンパク質のことです。鉄と結合した形はトランスフェリンと呼ばれます。

下図サイトゾルは、細胞質基質のことで、細胞質から細胞内小器官を除いた部分のことです。

トランスフェリン受容体1は、ほとんど全ての細胞表面に存在し、とくに骨髄の赤血球前駆細胞には多く存在します。赤血球には鉄が必要ですからね。

トランスフェリンサイクル

赤血球にある鉄はマクロファージが再利用する

赤血球は、酸素を運ぶ役割を負っています。形が特殊なのでタンパク質なのかなと思いますが、物質ではなく、1個の細胞です。

赤血球の寿命は120日。老化したり損傷した赤血球は、マクロファージ(貪食細胞)に取り込まれます。

毎日2000億個の赤血球(約40mlの血液に相当)が分解され、1日25mgの鉄が再利用されます。

老化赤血球は,マクロファージにファゴサイトーシス(食作用)によって取り込まれる.ヘムオキシゲナーゼの作用でヘモグロビンは分解され,鉄はヘムから離れる.

2価の鉄は,フェロポーチン(Fp)を介してマクロファージの外へ輸送される.

Fe2+は,血漿中でセルロプラスミンにより3価に酸化され,トランスフェリン(Tf)に結合する.Tfにしっかりと結合した状態で,鉄は血中を循環する.

セルロプラスミンは、肝臓で合成されます。フェロオキシダーゼ活性(酸化)があり、Fe2+がFe3+に変化します。

赤血球から再生された鉄は、トランスフェリンに渡され、必要なところに運ばれます。

マクロファージ

フェリチン(貯蔵鉄)

フェリチンってなんでしょう?実は、イラストレイテッド ハーパー・生化学 原書29版を読んで、さっぱりわからなかったのです。

フェリチンは,分子量が約440kDaである.24個のサブユニットからなり,それらは3000~4500個のFe3+原子を取り囲んでいる.

kDaはキロダルトンと読みます。こんな単位、私は初めて見ましたよ。

分子量は、分子を構成する各原子の原子量と原子数の積の総和として計算される数量のこと。「単位ダルトン(Da)は,静止して基底状態にある自由な炭素原子12Cの質量の1/12に等しい質量」(出典

分子量440000と考えて先に行きます。

さらに、コトバンクにはこんな説明が出ていました。

動物の肝臓・脾臓(ひぞう)・小腸粘膜などに含まれる鉄たんぱく質。鉄原子をヘム基の形で含まない非ヘム鉄たんぱく質に分類される。

フェリチンは肝臓、脾臓、小腸粘膜にある鉄を含むタンパク質

一応、まとめておきましょう。

フェリチンは、肝臓、脾臓、小腸粘膜にある鉄を含むタンパク質で、3000~4500個のFe3+原子を取り囲んでいる。

ネットで画像を探すと、名古屋大学環境医学研究所のサイトには、フェリチンの画像が出ていました。

さらに、続きます。フェリチンは肝臓、脾臓、小腸粘膜にあるのですが、少量のフェリチンは血漿にもあります。

正常時のヒト血漿中には,体内の総鉄貯蔵量に見合った少量のフェリチン(50~200μg/dL)がある.

したがって,血漿中のフェリチン量は,体内鉄貯蔵量の指標と見なされている.

まとめ

食べ物の鉄分は、胃を通過するとすぐに吸収されることが分かりました。

細胞の中に入れるには2価(Fe2+)鉄にする必要がありますが、2価(Fe2+)鉄を放っておくと、ヒドロキシラジカル(OH)ができてしまうので、また、3価の鉄(Fe3+)に戻して、タンパク質のトランスフェリンが運びます。

古い赤血球は、マクロファージが食べてFe2+が放出され、酸化されたFe3+がトランスフェリンに運ばれます。

フェリチンは、肝臓、脾臓、小腸粘膜にあるタンパク質で、鉄を貯蔵します。少量のフェリチンは、血漿にも存在します。

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