抗酸化作用のあるビタミンEやβ-カロテンだけとっても効かないかもしれないよ

この記事では、サプリメントでビタミンE、β-カロテンをそれぞれ単独で摂っていても効果が出ない結果になった実験について書きます。かなり大がかりな実験です。栄養は新鮮なたべものから摂るのが一番よいと思います。

にんじん

何年も前から活性酸素が話題になり、抗酸化作用ということばや抗酸化物質がよく知られるようになりました。サプリメントもたくさん販売されています。

ところが、体の中の異物「毒」の科学 ふつうの食べものに含まれる危ない物質 に気になることが書かれていました。

β-カロテンだけを喫煙者の男性に飲んでもらっていると、肺がんの発生率が上がるというのです。

抗酸化物質のビタミンEやβ-カロテンを毎日飲み続ける

がんや動脈硬化の原因にヒドロキシラジカルのような活性酸素が関わっていることは、よく知られています。実際、そのようなテレビ番組をよく見ます。

そして、活性酸素による酸化に対抗する物質として、抗酸化物質があることもよく知られています。ビタミンEやβ-カロテン、また、いわゆるポリフェノールも抗酸化物質として知られています。

それなら、毎日ビタミンEやβカロテンを飲み続けたら、ひょっとして発がんを抑制できるのではないかと考えるのは自然な流れです。

喫煙者の男性を対象とした実験

対象をがんになりやすい(と考えられる)喫煙者とすると、抗酸化物質の効果が分かりやすくなります。

フィンランドで行われた喫煙者の男性を対象とする介入試験について書かれていました。

介入研究とは、「疾病と因果関係があると考えられる要因に積極的に介入して、新しい治療法や予防法を試し、従来の治療法・予防法を行うグループと比較して、その有効性を検証する研究手法。治験と違い、承認済みの医薬品・医療機器を用いる(出典)」方法です。

ネットで検索すると、該当する論文もすぐに見つかりました。

The NEW ENGLAND JORNAL of MEDICINEに掲載されていました。

The Effect of Vitamin E and Beta Carotene on the Incidence of Lung Cancer and Other Cancers in Male Smokersというタイトルの論文です。

英文ですが、グーグルクロームの翻訳機能で十分読めるほど日本語化できます。論文を読むとビタミンEやβ-カロテンはサプリメントが使われたようです。

β-カロテンだけを摂ると肺がんの発生率が高くなる

本には実験の内容と結論がまとめられていました。

この研究では、50~69歳の3万人近い喫煙男性を無作為に四つのグループに分け、第一グループには毎日ビタミンEを50mg投与、第二グループには毎日β-カロテンを20mg投与、第三グループにはビタミンE50mgとβ-カロテンを20mgの両方を投与し、第四グループにはプラセボ(偽薬)を投与して、二重盲検法で行った。

二重盲検法とは、患者はもちろん実験を行う医師の側にも、どの患者がどのグループに所属するのかがわからない状態で行うものである。

医師が投与される医薬品を知っていると結果に影響を与えることがわかってから、このような方法がとられるようになった。

もちろん正確な情報は第三者、たとえば病院長などが記録している。

5~8年にわたる発がんへの影響を見て、β-カロテンを投与されたグループで肺がんの発生率が高く、ビタミンEには特別な効果はないことがわかったため、この研究は中止された。

3万人近い喫煙男性が対象なので、かなり大がかりな実験です。論文には、平均年齢57.2歳で、毎日平均20.4本のタバコを喫煙し、平均35.9年間喫煙していたと書かれていました。

β-カロテンを投与されたグループとは、β-カロテンだけを投与されたという意味です。よかれと思ってβ-カロテンを毎日飲んでいたらがんになってしまうのは困ります。

ビタミンEにも特別な効果がないとは。私はこれほど否定的な結果に終わった実験の話をいままで読んだことがありません。

β-カロテンの投与量

念のため、β-カロテンの投与量20mg/日について調べてみました。

以前、ビタミンAは過剰摂取に注意するという記事を書いた時に、1日の摂取量について調べました。β-カロテンはビタミンAの前駆物質です。

もちろん、日本人とフィンランド人では体の大きさが違いますから単純に比較するのは少々乱暴ですが、お許しください。

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ビタミンAの効力を表すのは、レチノール活性当量です。β-カロテンとレチノール活性当量の関係は下の通りです。

β-カロテン(重量)×1/12=レチノール活性当量

日本人の成人男性の場合、レチノール活性当量の推奨量は800~900μg/日なので、β-カロテンの場合は、12倍します。9600~10800μg/日、すなわち、9.6~10.8mg/日です。

また、耐容上限量は、成人男性で2700μg/日なので、β-カロテンの場合、同じく12倍します。32400μg/日、すなわち、32.4mg/日です。

これらの数字と比較してみると、β-カロテンの投与量20mg/日は、少なすぎることもなく、多すぎることもないことが分かります。

なぜβ-カロテンだけではだめなのか

なぜ効かないのでしょう?著者の小城勝相先生の見解が書かれていました。

β-カロテンは、ヒドロキシラジカルのような不対電子をもつラジカルと迅速に結合するが、その結果、自身がラジカルに変わってしまう。

タバコの煙にはラジカルが大量に存在するので、β-カロテンを服用する患者のほうがラジカルを多く発生し、肺がんが増えた可能性もある。

β-カロテンを多く含む緑黄色野菜はすべてのがんの予防に有効であることがすでに多くの疫学調査で明らかになっており、この結果にはまず間違いがない。

重要なのは、だからといって、その成分を抽出して摂取しても、期待されるような効果は表れないということである。

なぜ、抽出成分だけでは効果を持たないのだろうか?

さまざまな理由が考えられる。β-カロテンが無意味ということではなく、たとえば他のカロテン類や、ビタミンCをはじめとする他のビタミンが存在するときだけ効果を発揮するのかもしれない。

野菜ならβ-カロテン以外のカロテン類もビタミン類も豊富に含まれている。米国がん研究協会が、「食品からのみ栄養をとる。サプリメントは勧められない」といっているのは、根拠のあることなのである。

栄養は食べ物からとるに限るということでしょう。緑黄色野菜が健康のためによいことは誰も疑問に思いません。

新鮮な野菜を食べて、安直にサプリメントに頼らないのがよいですね。

まとめ

私は年齢が50代中盤なので、抗酸化物質に興味があります。

渋谷東急の地下にある富澤商店からピュアココアを買って来て飲んだり、食添のビタミンC(アスコルビン酸)を1キロずつアマゾンで買って飲んでいます。

ビタミンCを飲み始めたのは、ポーリング博士のビタミンC健康法をじっくり時間をかけて読んだからです。この本、アマゾンではえらく高い値段がついていますが、有名な本なので図書館に行けばあります。

ポーリング博士のビタミンC健康法
ポーリング博士のビタミンC健康法は、お気楽なタイトルとは反対に大真面目に読まないとなかなか理解できない内容の深い本でした。古本屋でもあまり見かけないので図書館で探すとよいでしょう。

サプリメントは好きではないので、β-カロテンを摂るならニンジンを食べます。ニンジン(生)は、100gあたりβ-カロテンが8600μgあります。レチノール活性当量に直すと716μg。ニンジンを1日1本食べると、ビタミンAは十分にとれますよ。

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