ほうれん草は造血や便秘の解消にも役立ちます。また、昔の本草書にはのどが渇く糖尿病の人に役立つと書かれていたようです。ただし、アレルギー反応に関係するヒスタミンなどが含まれているので、授乳中のお母さんが食べるときは、ゆでこぼし、しっかりと水にさらしましょう。
ほうれん草はよほど安く売っていないと買わなくなりました。普段、小松菜を好んで食べていることと、ほうれん草は何となく「石」ができるのではないかと気にしているのです。小松菜はアクが少なく食べやすいのです。
この記事では、ほうれん草の栄養成分と効果について改めて調べてみたいと思います。
ほうれん草の選び方
葉は大きめで葉脈がはっきりしていて茎が太くてしっかりしているものを選びましょう。新鮮さの目安は、根元の赤い部分です。赤みが強いものが新鮮です。
ほうれん草の旬は1月
ほうれん草の旬は1月です。霜にあたって甘味が増してきます。ほうれん草は一般に色の小芋のがよいとされていますが、冬に露地栽培されているものは、霜にあたって少し色が淡くなっています。
これはほうれん草が寒さから身を守るためにたんぱく質の草を葉につくるためといわれています。この頃のが一番味が濃いといわれます。ほうれん草自体が、自分で体内の成分濃度を高めて凍らないようにしているのです。
この時期選ぶときは、色が淡いものを選びましょう。
サラダほうれん草
サラダほうれん草は生食用に水耕栽培されたものです。アクがすくないのでゆでる必要がなくそのまま食べられます。
葉も小さめで茎も細く、柔らかいのが特徴です。
シュウ酸をとり除く
ほうれん草にはシュウ酸というアクの成分があります。これがいわゆる石(結石)ができる原因になるといわれています。カルシウムを同時に摂取するとシュウ酸がカルシウムと腸内で結合しシュウ酸塩となり体内に吸収されにくくなります。
しかし、さっとゆでて水にさらせばシュウ酸は水溶性なので流れでてしまいます。
アクが強いものを生食しても、通常の食事でとる程度の量なら害は及ぼさないといわれています。しかし、アクが強いものを食べると舌に残るのと、何となく気になるのも事実です。
ほうれん草の栄養成分
ほうれん草の栄養成分の特徴は、カリウム、マグネシウムが多いこと。鉄、β-カロテンと葉酸も多いです。レチノール活性当量は、ビタミンAの実質的な効力を表します。β-カロテンは数字の1/12がビタミンAの実質的な効力になります。
葉酸は、乳酸菌の増殖因子として、もともとほうれん草の葉から発見されたので当たり前です。葉酸が不足すると貧血になります。
β-カロテンはにんじんの半分くらいですが、ほうれん草は100gよりももっと多く一度に食べていると思います。たいてい熱を通して食べるのでかなりたくさん食べています。
ほうれんそう葉通年平均生 | |
エネルギー | 20kcal |
水分 | 92.4g |
たんぱく質 | 2.2g |
脂質 | 0.4g |
炭水化物 | 3.1g |
カリウム | 690mg |
カルシウム | 49mg |
マグネシウム | 69mg |
リン | 67mg |
鉄 | 2.0mg |
亜鉛 | 0.7mg |
βカロテン | 4200μg |
レチノール活性当量 | 350μg |
ビタミンD | 0 |
α-トコフェロール | 2.1mg |
ビタミンB1 | 0.11mg |
ビタミンB2 | 0.20mg |
葉酸 | 210μg |
ビタミンC | 35mg |
食物繊維総量 | 2.8g |
※日本食品標準成分表2015年版(七訂)から引用 |
ほうれん草の効果
薬剤師であり、あん摩指圧マッサージ師でもある橋本紀代子先生の食べものはくすりからです。
貧血の妙薬
ホウレンソウといえば、まずあげられるのが増血作用です。鉄分、ビタミンB12、葉酸、ビタミンC、根もとの赤い部分に含まれるマンガンなど増血作用のある物質がたくさん含まれ、貧血の予防に役立ちます。
ほうれん草が貧血によいことは昔から広く知られていることで、いまさら説明の必要がないくらいですね。
便秘の妙薬
アメリカの食養家は、ホウレンソウは「消化管の清掃、再建、再生」の妙薬だといい、「かなり重症の便秘もわずか数日間か数週間以内で快癒した例が多い」と書いています。
ホウレンソウには食物繊維が多く、腸のぜん動を盛んにする働きもあります。また、腸液の分泌をうながし消化管を潤して便通をととのえるので、高齢者や虚弱体質の人の便秘に適しています。
栄養成分を見ると、食物繊維総量は2.8gで多い方ですが極端に多いわけではありません。しかし、ほうれん草を食べるときは、たいていゆでたり炒めたりしているので、かさが減って量をたくさん食べることになります。
糖尿病対策として
ホウレンソウは「糖尿病の特効薬」ともいわれます。中国の薬物書には糖尿病で口が渇き、「一日一石の水分をとるものの治療」にホウレンソウを用いる例が書いてあります。
一石とは180リットルらしいですが、そんなに飲めませんから、たくさん水分をとるという意味です。口が渇くなどの症状がある糖尿病は、医師による治療が必要な段階なので、医師の指示に従ってくださいとのことでした。
中国の薬物書とは本草書のことで、日本だと江戸時代の始まり1600年頃に編まれた本草綱目のことを指しているようです。
私も興味があって本草綱目の国訳本(日本語訳)を読みに国会図書館に行ったことがあります。ビタミンの歴史よりも本草書が蓄積してきた人の経験則の方がはるかに長いので、ほうれん草は糖尿病によい効果があるんだなと覚えておいて損はないと思います。
エネルギーを補給し、気力や体力を高める
世界一やさしい! 野菜薬膳食材事典にはこんな効果が書かれていました。
「血(けつ)」を補い、エネルギーを補充。気力、体力ともにアップさせ、気持ちを落ち着かせる働きがあるので、心と体両面の調子を整えてくれます。
さらに「血」には潤す働きがあるので、血色がよくなるとともに、肌の乾燥を防ぐ効果も期待できます。
腸を潤す効果もあり、便通も改善します。
授乳中のお母さんはご注意を
食べものはくすりには注意することも書かれていました。
ホウレンソウには、アレルギー反応が起きたときにできる物質と同じ、ヒスタミンなどが含まれます。
授乳中のお母さんが食べるときは、ゆでこぼし、しっかりと水にさらしましょう。
離乳食には、あわてて用いる必要はありません。刺激が強いので、普通食が食べられるようになってからでも遅くはありません。
ほうれん草の保存方法
湿らせた新聞紙に包んでポリ袋に入れ、冷蔵庫の野菜室に「立てて」入れるのがよいです。
まとめ
私は二人の友人から結石の(耐えられない)痛さについて聞かされたことがあり、それ以来、ほうれん草は食べていますが、自分では何となく積極的に買わないようになっています。
しかし、このように自分で改めて調べてみると、ほうれん草は血液に関係している食べものだなと分かります。
子供の頃見た漫画ポパイでは、ポパイが一仕事やる前に、ほうれん草の缶詰を一口で食べて力こぶを作っていたのを思い出しました。
ホウレンソウをつくる人々
ほうれん草について、ホウレンソウをつくる人々という本を見つけました。2006年発行の本なのでもう古本しか手に入りません。日本ホウレンソウ紀行と書かれています。さすが農耕と園芸を出している誠文堂新光社。一応アマゾンリンクを貼っておきます。
岩手、静岡、千葉、埼玉、徳島、岐阜、広島、東京、鹿児島、富山、茨城、神奈川、群馬、沖縄の17箇所の農場を訪ねて書いた、ほうれん草だけの本です。
サラダホウレンソウの栽培では、生食するために、結石の原因になるシュウ酸を減らす工夫が書かれています。肥料の窒素分を硝酸態窒素でなくアンモニア態窒素にするとシュウ酸の集積が減るなど、深く掘り下げてみたい話題がたくさん出て来ます。
ほうれん草好きの方は図書館で探してみるとよいかもしれません。