マグネシウムで洗濯する?

マグネシウムの粒を入れた水で洗濯をすると、油汚れとマグネシウムイオンが反応して石けんができます。またマグネシウムを入れた水はアルカリ性になり、タンパク質汚れを溶けやすくします。

洗濯

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マグネシウムで汚れとにおいが落ちる

ガイアの夜明け2018年9月4日 放送『始まる! 水”革命”』を見ました。

最高気温が35度以上となる「猛暑日」が40日続いた、今年の日本。各地で豪雨も観測され、河川の決壊な…毎週火曜夜10時「日経スペシャル ガイアの夜明け」~事実はニュースで、真実はガイアで。~ 案内人/江口洋介 ナレーター/杉本哲太

洗濯物のにおいに困っていた主婦が、マグネシウムの粒が入ったものと一緒にいつものように洗濯機をまわすだけで、洋服の汚れがきれいになり、洗濯物に残るにおいも解消する。

さらに使い続けることで、洗濯槽や排水ホースについた汚れまで落としてしまう、という内容でした。

洗たくマグちゃん/洗濯グッズ

製造しているのは、茨城県古河市の宮本製作所。早速、サイトを探しました。

当社は、マグネシウム加工のエキスパートとして、あらゆる加工対応をしています。素材から加工,塗装まで何でもご相談下さい。もちろんステンレスや難削材の加工にも完全対応いたしております。平面研磨はもとより、ロータリー研磨、センターレス研磨も自社設備にて対応します。

マグネシウムの特徴がいくつも書いてありましたが、においに関してマグネシウムだけで洗濯した方が効果があることがわかりました。

これは、洗剤に効果がないというよりも、洗剤に添加されている香り成分がにおい成分をカバーするためだそうです。

なぜマグネシウムで洗濯できるのか

マグネシウムが水に溶けるとマグネシウムイオンと油よごれの脂肪酸が反応して石けんになり、全体がアルカリ性になるので、タンパク質よごれも落ちやすくなります。

私が一番知りたいのは、なぜマグネシウムだけで洗濯できるのかということです。洗濯に使われるマグネシウムの粒を網に入れた「せんたくマグちゃん」という商品サイトがありました。

このように説明されていました。

油汚れがアルカリイオン水と反応して石鹸になる

アルカリイオン水が油汚れを分解して石鹸にするというのです。

石けん

一般の水道水にマグネシウムを入れる。

マグネシウムが水と反応水素の気泡を発生させてアルカリイオン水を生成。(pH値は9.5前後)

アルカリイオン水は洗濯物につく油脂分を分解して石鹸化します。洗剤と同様に洗浄能力を持つ界面活性効果で汚れを落とします。

マグネシウムはイオンになりやすい

マグネシウム(Mg)は水の中でマグネシウムイオン(Mg2+になりやすいのです。

イオン化傾向って覚えてますか・・・?

マグネシウムはイオン化傾向が大きい。

イオン化傾向って覚えていますか?私は共通一次世代で、理科は化学Ⅰを選択したのでまだイオン化傾向を覚えています。イオン化傾向は、溶液中(おもに水溶液中)での金属のイオンへのなりやすさを表したものです。

こんなふうに順番を習いました。いまの高校生はLi(リチウム)を1番目だと習うようです。きっとリチウム電池が普及したからでしょう。私が高校生だった頃はリチウムは化学の教科書に出てきませんでした。

イオン化傾向

マグネシウムは上の図では4番目。イオンになりやすいのです。

石けんはこんなふうにつくる

石けんは、油と水酸化ナトリウムもしくは水酸化カリウムを反応させてつくります。

石けんは油よごれを溶かして落とすものです。

無添加の石けんとして昔から知られているシャボン玉石けんのサイトに石けんのつくり方が書かれていました。

無添加石けん「シャボン玉石けん」の各種取組みについて。環境への取り組み。健康な体ときれいな水を守る。無添加石けんの「シャボン玉石けん」公式サイト。

油脂とアルカリを反応させる

石けんは、天然油脂(もしくは天然油脂が元の脂肪酸)を原料に、「ケン化法」もしくは「中和法」という製法で作られます。

天然油脂などの原料を苛性ソーダ・苛性カリと反応させることにより、石けんが出来上がります。

※シャボン玉石けんでは、天然油脂にある保湿成分が石けんに残る「ケン化法」にこだわって石けんを製造しています。

「ケン化」を簡単にいうと、油脂をアルカリ(上の場合、苛性ソーダと苛性カリ)溶液と混ぜて加熱することです。

ナトリウムもカリウムもイオン化傾向が大きい

苛性ソーダはナトリウム、苛性カリはカリウムが溶けたアルカリ溶液です。

  • 苛性ソーダ:NaOH(水酸化ナトリウム)
  • 苛性カリ:KOH(水酸化カリウム)

ナトリウムとカリウムはマグネシウムよりもイオン化傾向が大きく、よりイオンになりやすい金属です。

昔、同僚の女性がオリーブオイルと苛性ソーダ(水酸化ナトリウム)で石けんをつくっていました。話を聞くと、石けんをつくるのは手間はかかりますが案外簡単にできるものらしいです。

石けんは、実質、油を構成する脂肪酸と金属イオンが結合してできています。

一例として炭素数16のステアリン酸とナトリウムからなるステアリンナトリウムを書いておきます。

ステアリン酸ナトリウム

このノコギリ状の波線は炭化水素鎖なのですが、よく分からない方は、油の構造を知ろうという記事をお読みください。

油は脂肪と同じものです。油には基本的な構造があります。グリセリンと3本の脂肪酸がエステル結合したものです。脂肪酸には飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸があり、炭素の長さで性質も違います。油の性質は、結合する脂肪酸によって決まります。

タンパク質汚れはアルカリで分解しやすくなる

タンパク質は弱アルカリ溶液の中では溶けやすくなります。

石けんで落とす汚れは、主に油汚れです。しかし、汚れは油だけではありません。食べものをこぼした汚れの中には、タンパク質汚れもあります。すぐに拭いても落ちにくいことは経験済みです。

なぜ、マグネシウムで落ちるのだろう?

洗浄のメカニズムを読むとこのように書かれていました。

タンパク質汚れは弱アルカリ液で処理すると,分子間の反発力が増して水を含んで膨潤し,溶解性が高まる.

なるほど。

アルカリ性にするとよいのですね。

実は、マグネシウムが水に溶けると、その水はアルカリ性になります。これでタンパク質汚れも落としやすくなることがわかりました。

マグネシウムが汚れ落とす仕組みをさらに詳しく

マグネシウムはナトリウムやカリウムと少し性質が違いますが、汚れを落とし、溶液をアルカリ性にすることは変わりがありません。

これまで書いて来たマグネシウムのポイントを簡単にまとめます。

  • マグネシウムは、イオン化傾向が大きく、水の中でマグネシウムイオンになりやすい。
  • マグネシウムイオンが溶けた水は、アルカリ性になります。
  • マグネシウムイオンは汚れの油脂と反応して、石けんになり、油汚れが落ちます。
  • さらにアルカリ性になった溶液の中では、タンパク質汚れは分解されやすくなります。

さて、ここからは、もう少し詳しく考えてみましょう。

特許公報を読んだ

洗たくマグちゃんに関して、特許公報を探してみました。特許第5312663号『洗濯用洗濯補助用品及びこれを用いた洗濯方法』が見つかりました。

マグネシウムが水と反応するとこのようになると書かれていました。

金属マグネシウム(Mg)単体が水と反応して水素を発生する反応は、次の反応式で表される。

Mg+2H2O→H2+Mg(OH)2

水素(H2)は空気中に抜けるという意味です。水酸化マグネシウムMg(OH)2が残りますが、水の中ではこのように存在します。

マグネシウムは2価のイオンになる

マグネシウムはナトリウムやカリウムと違って2価のイオンになります。

Mg2++2OH

ヒドロキシイオン(OH)が残るので、溶液はアルカリ性になります。マグネシウムイオン(Mg2+)は、汚れの脂肪酸と結合して石けんになります。

石けんは、金属と脂肪酸が結合したものです。一例を書きましょう。

図は炭素数16の飽和脂肪酸ステアリン酸とマグネシウムが結合したものです。あれ、ナトリウムがステアリン酸と結合した図と違いますね。

これはマグネシウムが2価のイオンなので、ステアリン酸2本と反応するのです。

ステアリン酸マグネシウム

このように構造式で違いがあると、性質も変わるものです。

ナトリウムを使った石けんは、お風呂や洗面所で使う石けんです。マグネシウムと脂肪酸からできた石けんは、金属石鹸と呼ばれます。ウイキペディアに記事がありました。

金属石鹸(きんぞくせっけん)は、長鎖脂肪酸と、ナトリウム・カリウム以外の金属塩の総称。

水に不溶である。そのため洗浄力はないと言ってよい。反面、非極性有機溶剤への溶解性や樹脂との相溶性は比較的高い。(中略)

浴室用品などにこびりつくいわゆる石鹸かすも、カルシウム塩やマグネシウム塩等の金属石鹸である。(出典

水に不溶で石鹸かすと書いてあるので、ああ、洗面器にくっついてくるあれかと思い出します。溶けないとか洗浄力はないと書かれていますが、皮脂や油汚れの脂肪酸がマグネシウムに結合(捕捉)されているのは間違いないことです。

石けんを使って洗濯する場合と比べてみる

いま汗くさいタオルを、手を洗う石けんを使って洗濯した場合と、マグちゃんで洗濯した場合を考えて比べてみましょう。

石けんは油よごれを溶かして水に流す

手を洗う石けんをタオルにこすりつけ泡立てて洗うと、石けんが混ざった水に皮脂などの油よごれが溶けだして水ですすぐとタオルから落ちて水に流れていきます。

マグちゃんのマグネシウムイオンが皮脂などに由来する脂肪酸を結合する

洗濯機に水を入れ、マグちゃんを入れて同じタオルを入れてスイッチを入れると回り始めます。

マグネシウムがマグネシウムイオンになり、水がアルカリ性になっていきます。タオルについている皮脂などの油よごれ由来の脂肪酸がマグネシウムと結合して、脂肪酸マグネシウムとなり分離します。先ほど出てきた金属石鹸になるのです。

マグネシウムイオンがたくさんあれば、脂肪酸がなくなるまでこの反応は続きます。

石けんをつけて洗うのと、石けんを作る反応の違いがありますが、皮脂や油よごれを落とすことに変わりはありません。

生乾きのにおいが取れる理由

ところで、におい成分は炭素数のもっと短い脂肪酸です。

以前、短鎖脂肪酸はくさいという記事を書きました。生乾きのにおいは皮脂由来の脂肪酸です。洗濯物から脂肪酸が落ちていないと、雑菌によって分解され、炭素数が小さく、短くなります。するとにおい始めます。

食用油のにおいをかいでもくさくありませんが、脂肪酸が短くなるとにおうようになります。ギンナンのにおい、靴下のにおい、汗臭いにおいなど短鎖脂肪酸が原因です。炭素数2から6の短鎖脂肪酸のにおいを調べました。納豆がくさいのは短鎖脂肪酸のせいだ昨日

上で書いたように、マグネシウムイオンは、脂肪酸と結合します。生乾きのにおいの原因になる短鎖脂肪酸がマグネシウムイオンと結合して、洗濯物から離れるのでにおいが効果的に取れるのだと思います。

まとめ

私はこのような洗剤を使わなくても落ちると説明された商品にとても弱いです。いいなあと思います。

自転車が好きで日常的に乗っているのですが、たまに多摩川サイクリングロードを走ります。

多摩川サイクリングロードは全長55キロあり、往復すると100キロ走ることができます。自分のペースでまとまった距離を走ることができ、下流と上流ではかなり違う景色を楽しむことができます。羽田から奥多摩までご案内しましょう。多摩川サイクリングロー

それがきっかけになり、山梨県にある笠取山の多摩川最初の一滴の場所まで行って、水を飲んだこともあります。上流から河口まで走るうちに水が汚れ、においもついて来るのがよくわかりました。

なるべく無駄に洗剤を使わないようにしたいと思っています。

ナトリウムやカリウムは反応が激しすぎて危険

ところで、賢い方なら、マグネシウムよりもイオン化傾向が大きいナトリウムやカリウムを使えばよいではないかと考えるでしょう。原理は同じです。

しかし、アルカリ金属と呼ばれるナトリウムやカリウムは反応が激しすぎて火が出ます。危険すぎて使えないのです。

【化学実験】アルカリ金属と水の反応!取り扱い注意!危険!?という動画がありました。見れば危険さがわかります。

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