アスタキサンチンとは藻からできるのか

アスタキサンチンは、サケやマスの赤い色、天然色素です。もともとは、ゆでると赤くなるエビやカニなど、甲殻類が持っているのですが、それを食べているので身が赤くなります。アスタキサンチンには抜群の抗酸化力がありますが、それがアピールできるのは、ヘマトコッカスという藻からアスタキサンチンが大量生産できるようになったからです。

サーモン

「ミドリムシの仲間がつくる地球環境と健康 シアノバクテリア・緑藻・ユーグレナたちのパワー」を読みました。この中に、アスタキサンチンが出てくるのです。

アスタキサンチンはサケの紅色成分だとなんとなく知っていたのですが、詳しく知りたいと思っていました。

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アスタキサンチンはサケの身の紅色になる色素

アスタキサンチンはカロテノイドの一つです。カロテノイドは天然色素であり、たとえば、ニンジンの橙色もその一つです。

抗酸化力がビタミンEの1000倍ある

サケの身の紅色は色素、アスタキサンチンによるものです。アスタキサンチンは、ビタミンEよりもはるかに強い抗酸化力を持つことが分かりました。

緑黄色野菜に含まれるβ-カロテンの抗酸化作用が報告されてから,リコピンやアスタキサンチンなどのカロテノイドにも抗酸化作用があるだろうと考えられて,多くの研究が行われました。

その中で,アスタキサンチンの抗酸化活性がビタミンEの1,000倍もあることが分かり注目を集めました。

赤い身のサケ・マスは実は白身の魚です。アスタキサンチンを筋肉中に蓄積しているため,「サーモンピンク」になっています。サケは,産卵のために川を上る時にたくさんの酸素を取り込むため,体内で活性酸素が発生して筋肉に大きな負担がかかります。

その活性酸素を消去するために,たくさんのアスタキサンチンを筋肉に蓄えていると考えられています。さらに,産卵の準備が始まると,メスはアスタキサンチンを卵(イクラ)に移行させます。

これは,紫外線の影響を受けやすい浅瀬に卵を産み付けるために,卵の遺伝子(DNA)を紫外線から守るためだと考えられています。

さらに海から生まれた毒と薬にはもう少し詳しく書かれていました。

エビ、カニの赤さもアスタキサンチン

エビカニからピーナッツの薄皮までアスタキサンチンだと知ると急に身近に感じるようになります。

アスタキサンチン(astaxanthin)はエビやカニ,サケ,オキアミ,イクラ,スジコなど,多くの海産生物のほか,高山の夏の雪渓を赤く染める氷雪藻やフクジュソウの花弁,ピーナッツの薄皮など陸上植物からも知られている.

フラミンゴの羽が赤いのもアスタキサンチンだという.

サケの身が赤くなるのは、エサよってアスタキサンチンが入って来るからです。たとえば、プランクトン性の甲殻類を食べていると身が赤くなります。(出典

アスタキサンチンという名称の由来も書かれていました。

アスタキサンチンは1930年代にロブスターAstacus(現Homarusgrammarus から発見され,当時の属名に因んで astaxanthin と命名された.

アスタキサンチンの構造はβ-カロテンにそっくりだ

本には説明が書かれていましたが、構造式を見比べるとそっくりです。

アスタキサンチンの化学構造は,β-カロテンに2個の水酸基(ヒドロキシル基)と2個のケトン基をもつ3,3’-ジヒドロキシ-β,β-カロテン-4,4’-ジオン(3,3-dihydroxy-β,β-carotene-4,4′-dione)

まずは、βカロテンから。βカロテンは分解されるとビタミンAになります。

ベータカロテン

そしてアスタキサンチンです。3番と3’番の炭素にヒドロキシ基(-OH)が付き、4番と4’番の炭素にケト基(=O)が付いています。

アスタキサンチン

わずかな違いで、抗酸化力がまったく違うところが化学の面白いところです。βカロテンは名前はよく知られているものの、ビタミンAよりも抗酸化力は弱いです。ビタミンAとして重量計算するときは、1/12になります。

1980年代から海産物の色づけに使われていた

魚の身が赤くなるのは、エサ由来のアスタキサンチンのためです。赤い色はスモークサーモンやマス寿司できれいに見えますから、人工的にも使われていました。

アスタキサンチンは1980年代からサケやマス,マダイなどの養殖の色揚げ剤として使用されるようになった.当初はオキアミやザリガニなどの抽出物,1990年代には合成品,その後ファフィア酵母やパラコッカス(Paracoccsu)菌の発酵によるもの,緑藻ヘマトコッカス(Haematococcus)の培養によって生産されたアスタキサンチンも使用されている.

2000年代になると,サプリメントや化粧品への需要が高まり,おもにヘマトコッカス藻抽出物が用いられている.

ヘマトコッカスという藻については後で説明しましょう。

アスタキサンチンということばをよく聞くようになったのはここ数年のことです。ヘマトコッカスを容易に培養することができるようになり、大量生産ができるようになったからだと思います。

アスタキサンチンのCMはたまに見ますが、化粧品に使われる成分のように思っていました。どんな効果があるのでしょう?

アスタキサンチンの効果

アスタキサンチンは抗酸化力がとても強く、しかもアスタキサンチン自身が、他の物質を酸化する働きを持ちにくいことがわかりました。抗酸化力の強さでさまざまな健康効果が期待できるようです。

抗酸化力がとても強い

アスタキサンチンの生理活性が注目されるようになったのは,1980年代,幹渉(現 三重大学)らが強力な抗酸化作用,とくに一重項酸素(singlet oxygen)消去活性や脂質過酸化抑制作用(ビタミンEの約1000倍)を明らかにしたことであった.

一重項酸素消去能について山下栄次ら(富士化学工業)による種々の天然抗酸化物質との比較試験で,アスタキサンチンはビタミンEや緑茶成分のEGCG(epigallocatechin gallate)の100~500倍,ビタミンCの6000倍強力であったという.

アスタキサンチンは活性酸素との接触で化学変化を受けずに励起状態となり,そのエネルギーを熱として放出して基底状態に戻るので,プロオキシダントになりにくい物質であると考えられている.

一重項酸素は、いまの私では説明できません。活性酸素の一つだと思っておきます。ウイキペディアへのリンクを貼っておきました。

プロオキシダント

また、プロオキシダントは、抗酸化物質の二面性にご用心!にていねいに説明されています。抗酸化物質は、別な物質を酸化する「酸化剤」として作用することがある。

抗酸化物質は,活性酸素種(ROS)発生を抑制したり,消去したりする能力「抗酸化能(Aox)」を持ち,生体分子の過剰な酸化を抑制する「救世主」的な見方をされているようだ.

しかし,期待したような抗酸化物質の効能が得られない経験は多くの研究者がお持ちであろう.

抗酸化物質は使い方によっては,ROS発生を促す側に回ってしまう,つまり「酸化剤」として作用する厄介な性質を持つことが一因と考えられる.これは,「プロオキシダント能(Pox)」と呼ばれ,多くの抗酸化物質に見られる.

具体的な効果についても書かれていました。

動脈硬化を予防、筋肉疲労の軽減などさまざまな効果

ここからまた「海から生まれた毒と薬」に戻ります。

アスタキサンチンの具体的な効果は深く突っ込むとサプリメントの宣伝のようになるので、サラッと流します。抗酸化力が強いことがポイントです。

LDL(悪玉コレステロール)が酸化されると,マクロファージに取り込まれて泡沫細胞となり血管壁に沈着して動脈硬化を引き起こす.

アスタキサンチンはヒトへの経口投与試験でLDLの酸化を防ぎ,動脈硬化予防効果のあることが示されている.

そのほか,アスタキサンチンは筋肉疲労の軽減,肥満,高血糖,脂質代謝異常症に対する改善効果,がん予防効果,糖尿病合併症の抑制,眼疾患,とくに眼精疲労の改善や加齢黄斑変性リスクの軽減など,さまざまな薬理作用が明らかになってきている.

アスタキサンチンをつくる藻、ヘマトコッカス

ここからは、「ミドリムシの仲間がつくる地球環境と健康 シアノバクテリア・緑藻・ユーグレナたちのパワー」に書かれていた内容です。

この緑藻は、珍しいものではなく、冬の学校のプールの壁面あたりに付着しているそうです。強い光と栄養不足の環境で、アスタキサンチンを大量に蓄積して赤色になる性質があります。

ヘマトコッカスは単細胞性の緑藻ですが,栄養欠乏で強い光にさらされると細胞がシスト(厚い膜を被った休眠状態)化します。その際にカロテノイドの一種であるアスタキサンチンを大量に蓄積して,赤色になります。(中略)

ヘマトコッカスは世界中に分布し,岩棚などにできた一過性の水溜まりなどによく見つけることができます。

冬の学校のプールの水面辺りの壁面が赤く色づいていることがありますが,その場所にヘマトコッカスが付着していることが多いのです。

ヘマトコッカスは,生育環境に応じて異なった形態を示します。活発に生育している状況では鞭毛をもつ直径8~50μmの緑色の遊走子を多く見ることができます。

乾燥や強い光などの厳しい環境にさらされると鞭毛を失い,液胞が発達したパルメラ(いくつかの細胞が共通の寒天質の内に入っている状態)に移行します。

この状態ではまだ緑色をしています。さらに栄養欠乏にさらされるとシスト(内部に液体や固体状のものを含む袋状)化を起こし,アスタキサンチンを大量に蓄積して赤色になります。

これを利用して,弱い光と富栄養培地でヘマトコッカスを増やし,その後,強い光と栄養欠乏の条件にしてアスタキサンチンを蓄積させる大量栽培方法をとっています。

画像がないか探してみました。

ヘマトコッカスの画像

Modia[藻ディア]というとても面白いサイトの、ヘマトコッカスとは? -生物学的特徴とアスタキサンチンの生産-に大きな画像と詳しい記事がありました。

アスタキサンチンという赤色の抗酸化色素を蓄えることで有名な藻類「ヘマトコッカス」。数ある藻類種の中でも特に産業化が進んでいる、認知度の高い種です。本記事ではこのヘマトコッカスという藻について、紹介していきたいと思います。1.ヘマトコッカ

また、量産化できるようになったのは、世界で初めて日本の会社が開発したそうです。

量産化は1994年から

調べてみると、富士化学工業グループアスタキサンチンの製造で知ることができました。富士フィルムとは関係がありません。富士フィルムもアスタキサンチン関係の商品を販売しているのでグループ会社かと思いました。

量産化できるようになってコストが下がり、原料として供給できるようになったのです。

アスタキサンチンは、エビ・オキアミからの採取ではコストが高く、商業用に安定生産することは難しいといわれていました。

そこで富士化学工業グループは、1994年に世界で初めてヘマトコッカス藻によるアスタキサンチンの生産に成功。以来世界中で安定した供給を続けています。

まとめ

アスタキサンチンは、サケの紅色やエビやカニの赤色だとなんとなく知っていましたが、それがどのようなもので、なぜ、ここ数年、よくCMで見るようになったのかわかりませんでした。

抗酸化力がとても強い物質で、ビタミンEの1000倍くらいあるそうです。

1980年代から、養殖サケやマス,マダイなどの身の色を仕上げるために使われていたようですが、抗酸化力の強さも同じ頃調べられていました。

しかし、1990年代にヘマトコッカスという藻からアスタキサンチンの大量生産が可能になってからサプリメントの原料になりました。

アスタキサンチンは、普段の食生活では大量に摂ることが簡単ではないのですが、藻の培養方法を工夫してアスタキサンチンを大量に生産できるようになってから、効果がアピールできるようになった天然色素(カロテノイド)だと思います。

薬の原料になっていくのかもしれないですね。

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