アルカンの命名法

食品について調べるには有機化学が必要になってきます。アルカンは最も構造が簡単な炭化水素です。しかし、構造異性体があり、置換基が結合すると名前が変わります。その命名法について学びましょう。

特に食品に関係する仕事をしている文系の方は、有機化学が分からなくて悩んでいるのではないかと思います。本を紹介しましたので、それを読まれるとよいですよ。

化学記号

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化学は無視できない

食品のことを調べていると、なるべく避けたいと思いながらも、専門的な本を読むには特に有機化学に少しずつ慣れないといけません。

理系の学部で勉強した方なら昔習ったことを思い出せばよいのでしょうが、文系の私のような人間にはなかなかつらい時があります。

物質名がややこしく、それに加えて頭に数字がついたりします。ずっと本を読んでいるとなんとなくその意味が分かってきますが、なるべくひとまとめに「ルール」を学んでおくと楽になります。

ハート基礎有機化学は大学学部1年生向きの本だそうです。私は弟が昔使っていた本をもらってきました。

また、実はおもしろい化学反応は、理系の知識が好きな一般向けの本です。こちらはかなり読みやすいです。私のように文系で、食品の化学について知る必要がある方におすすめできます。

短いページ数でとても分かりやすくまとめられています。

2冊を読み比べましたが、圧倒的に実はおもしろい化学反応の方が読みやすいので、こちらに書かれていた記事を中心に話を進めます。

アルカンから始めよう

アルカンはもっとも簡単な炭化水素です。

結合のルールは2つ。

  • 炭素には結合する腕が4本ある。
  • 水素には結合する腕が1本ある。

このルールをもとに、炭素数1から炭素数12まで書いてみました。長さが変わるだけで、構造はまったく同じです。

アルカンの一般式

下図を見ながら実際に計算していただければ分かりますが、すべてのアルカンは一般式で表すことができます。

アルカン一般式

アルカンの炭素数1のメタンから炭素数12のドデカンまでの構造式です。メタン、エタン、プロパン、ブタンと燃料に使われていますね。

アルカン

メタンからブタンまでは慣用名を用い、それ以降はギリシア語の数字の語尾をaneとすることでその名を得られる。(出典

ギリシア数字はこのように読みます。

1 モノ(mono) 11 ウンデカ(undeca)
2 ジ (di) 12 ドデカ(dodeca)
3 トリ(tri) 13 トリデカ(trideca)
4 テトラ(tetra) 14 テトラデカ(tetradeca)
5 ペンタ(penta) 15 ペンタデカ(pentadeca)
6 ヘキサ(hexa) 16 ヘキサデカ(hexadeca)
7 ヘプタ(hepta) 17 ヘプタデカ(heptadeca)
8 オクタ(octa) 18 オクタデカ(octadeca)
9 ノナ(nona) 19 ノナデカ(nonadeca)
10 デカ(deca) 20 エイコサ(eicosa)

アルカンがすべて上図のようにまっすぐ(直鎖という)なら分かりやすくてよいのですけれど。

構造異性体を考える

ところが、実際は、炭素数3のプロパンあたりからあやしくなってきます。ルールは、炭素には結合の腕が4本あることと、水素には結合の腕が1本あることなので、いろんな組み合わせができます。

たとえば、プロパンがこんなふうに書かれたらどうでしょう?

プロパン

一見、別の構造式に見えます。しかし、実は同じプロパンになるだけです。実はおもしろい化学反応ではこのように説明されています。

炭素同士の単結合は非常に自由度が高く、紙の上で直角に結合を曲げたものを考えても、実際の分子は分子が一番安定する角度まで勝手に結合を変化させ安定する形になります。

炭素3個で紙の上でどのように複雑にねじっても、実際の分子は同じ形に落ち着くことになります。

ブタンから構造異性体が存在する

ところが炭素数4個のブタンになると変わります。

直線的なブタンから、下図右のように結合を変化させます。炭素(C)の数も水素(H)の数も変わりません。

しかし、この分子は、どうやって変形させても元のブタンには戻りません。炭素が1個枝分かれしています。これをイソブタンといいます。

イソとは、炭素2個が枝分かれした分子の名前に付ける接頭語です。

どちらのブタンも分子を構成する炭素の数(4個)と水素の数(10個)は同じですが、構造が異なります。

このような兄弟のような分子のことを「構造異性体」と呼びます。

図の一番右は、イソブタンを少し見やすくするために、水素の数をまとめて書いた構造式です。

ブタン

では、炭素数が5個のペンタンだとどうなるでしょう?炭素数がこのくらい増えてくると、省略した構造式の方が見やすくなってきます。

ペンタンの場合、構造異性体は、全部で3つあります。なにやら物質の読み方に数字が入るようになりました。この数字の意味をはっきりさせましょう。

ペンタン

名前を付けるためのルールがあります。下図を見てください。

ペンタンの構造異性体

下図にある物質は、形が違いますが、炭素数5、水素数12でペンタンの構造異性体です。

まず、基本骨格となる炭素原子に順番に番号を付け、何番にどのような分子が結合しているのかを表記して、名前を決めます。

下図の上から行きましょう。

2-メチルブタン

基本骨格は炭素数4ですから、ブタンになります。ブタンの炭素には左から1、2、3、4と番号をつけます。その2番目の炭素にメチル基がついています。

場所を表す番号2をつけ、メチル基がついたブタン、すなわち、2-メチルブタンと名前がつきます。

次に、下図の下の方です。

2,2-ジメチルプロパン

基本骨格は炭素数4ですから、プロパンになります。プロパンの炭素に左から1、2、3と番号をつけます。

次に2番目の炭素の上に1個メチル基がついているので場所を表す番号2をつけ、さらに2番目の炭素の下にもう1個メチル基がついているので、もう一つ番号2をつけます。

「2,2」と並びます。そしてこの場所の番号の後ろに、合計2個のメチル基がついているので「ジメチル」を続け、プロパンをつけます。

「2,2-ジメチルプロパン」という名前になります。

2-メチルブタン

ヘキサンの構造異性体

今度は、炭素数6のヘキサンの構造異性体です。

2-メチルペンタン

ヘキサンの構造異性体「イソヘキサン」を使って同じように名前をつけてみます。

  • 炭素が5個並んでいるので、炭素数5のペンタンになります。
  • 左から順番に数えて2番目の炭素にメチル基が1個ついています。

2-メチルペンタンとなります。

2-メチルペンタン

ヘプタンの構造異性体

炭素数7ヘプタンの構造異性体を考えてみます。

2,3-ジメチルペンタン

下図のヘプタンの構造異性体をいままでと同じように考えていきます。

  • 基本骨格は炭素数5のペンタン。
  • 左から数えて、2番目と3番目の炭素にメチル基が結合しています。
  • メチル基は合計2個あります。

2,3-ジメチルペンタンとなります。

2,3-ジメチルペンタン

3-エチルペンタン

炭素数は同じく7のヘプタンの構造異性体ですが、エチル基(-CH2-CH3)がつく場合を考えてみます。

  • 基本骨格の炭素数は5でペンタン。
  • 左から数えて3番目の炭素にエチル基が結合しています。

3-エチルペンタンとなります。

3-エチルペンタン

2,2,3-トリメチルブタン

炭素数は同じく7のヘプタンの構造異性体です。

  • 基本骨格は炭素数4のブタン。
  • 左から2番目の炭素に2個メチル基が結合。
  • 左から3番目の炭素にも1個メチル基が結合。
  • メチル基は合計3個結合。

3はトリ(tri)でした。

2,2,3-トリメチルブタンとなります。

2,2,3-トリメチルブタン

ノナンの構造異性体

炭素数が1つ飛びますが、炭素数9のノナンの構造異性体です。

4-メチルオクタン

下図上の4-メチルオクタンは今までと同じ方法で名前がつけられます。

  • 基本骨格は炭素数8のオクタン。
  • 左から4番目の炭素にメチル基が1個結合。

4-メチルオクタン

4-Methyloctane

ウンデカの構造異性体

炭素数11、ウンデカの構造異性体についてです。

ただ、ここでの問題は、炭素数11の構造異性体を問題にしているのでなく、基本骨格の炭素数の決め方です。基本骨格の炭素数が7(ヘプタン)なのか、8(オクタン)なのかという話です。

そう思って下図を見てください。

4-プロピルオクタン

下の4-プロピルオクタンは、注意が必要だと書かれていました。図を見ていただくと分かるように、基本骨格を決める時に、構造式の書き方によって「どっちなんだろう」と悩みます。

基本骨格は炭素鎖が長い方

これは、原則があり、基本骨格は炭素鎖が長いものを選びます。

上図には、4-プロピルオクタンを2通り書きましたが、炭素鎖は、炭素数7か8です。炭素数8が基本骨格になります。

基本骨格に結合する基の炭素数が増えると紛らわしくなりますが、原則に従えば難しくはありません。

  • 基本骨格は炭素数8のオクタン。
  • 左から4番目の炭素にプロピル基が1個結合。

4-プロピルオクタンとなります。

4-プロピルオクタン

アルカンの名前のつけ方のルール

ここまで、いろいろな炭素数のアルカンの構造異性体を使って、名前のつけ方を学んで来ました。

基本骨格を決める

構造異性体の名前を決める場合、まず第一にやらなければいけないことは、基本骨格を決めることですね。

基本骨格は炭素鎖が数えていって一番長いものになります。

炭素鎖に番号をふる

基本骨格が決まったら、炭素鎖の左から順番に番号をふります。これまでは、あまり考えずに左からふればよいと思っていました。

ところで、この場合を考えてみてください。両方とも、基本骨格はオクタンで、左から4番目か5番目にメチル基がついています。

4-メチルオクタンと5-メチルオクタンじゃないかと思います。

しかし、4-メチルオクタンを左右逆にすると5-メチルオクタンになります。同じものです。

4-Methyloctane alt

アルキル基はできるだけ若い番号の炭素につける

4-メチルオクタンと5-メチルオクタンは左右逆にすれば同じものです。つまり、4-メチルオクタンと5-メチルオクタンは同じ物質です。

この場合、名前をつける時の原則があります。

アルキル基はできるだけ若い番号の炭素につけます。従って、この物質は、4-メチルオクタンと呼ばれます。5-メチルオクタンはありません。

番号と分子の間には「‐」ハイフンを入れる

何の気なしに4-メチルオクタンなんて書いていましたが、アルキル基がついている番号の後には、「‐」ハイフンを入れます。

2種類以上のアルキル基が結合している場合

次に、基本骨格の炭素鎖に2種類以上のアルキル基が結合している場合、どのように名前をつけるのでしょう。下図を見てください。

原則通り進めて行きます。

  • 基本骨格は炭素数8のオクタン。
  • 左から3番目の炭素にメチル基が1個結合。
  • 左から5番目の炭素にエチル基が1個結合。
  • 左右からアルキル基が結合する順番を比較すると、3番目が早いことを確認。

次の問題は、メチル基とエチル基をどの順番で読むかです。

種類が違うアルキル基はアルファベット順に読む

同じアルキル基がついている場合は、基本骨格の若い番号から順番に数字をつけていきますが、種類が違うアルキル基は、アルファベット順に読むというルールがあります。

メチルはMethyl。
エチルはEthyl。

エチルの方から先に読みます。

5-エチル-3-メチルオクタンと名前が決まりました。

5-エチル-3-メチルオクタン

その次も同じ要領で進めて行きます。

  • 基本骨格は炭素数8のオクタン。
  • 左から3番目の炭素にメチル基が2個結合。
  • 左から5番目の炭素にエチル基が1個結合。
  • 左右からアルキル基が結合する順番を比較すると、3番目が早いことを確認。
  • エチル基の方がアルファベットでは先。

5-エチル-3,3-ジメチルオクタンと名前が決まりました。

右から数えても左から数えても順番が変わらない場合

下図を見てください。右から数えても左から数えても2番目4番目にアルキル基がついています。こういう場合はどうしたらよいでしょう?

合計した数字が小さくなるように

まず、原則通り進めましょう。

  • 基本骨格は炭素数5のペンタン。
  • 左から2番目の炭素にメチル基が2個結合。
  • 左から4番目の炭素にメチル基が1個結合。
  • 左右からアルキル基が結合する順番を比較すると、どちらも同じ。

この場合、最初の数字部分は、「2,2,4-」か「2,4,4-」になりますが、これは最初の方が合計した数字が小さくなります。

左右から結合する順番が変わらない場合は、数字を書いてみて、合計数字が小さいものが優先されます。

従って、2,2,4-トリメチルペンタンに名前が決まります。

2,2,4-トリメチルペンタン

アルキル基以外の原子が結合するとき

今までは炭化水素のアルキル基が結合する場合について調べましたが、次に、塩素(Cl)や臭素(Br)が結合する場合を考えます。下図を見てください。

塩素は、Chlorine(クロリン)、臭素はBromine(ブロミン)です。

まず、原則通り進めましょう。

  • 基本骨格は炭素数4のブタン。
  • 左から2番目の炭素に塩素が1個結合。
  • 左から3番目の炭素に臭素が1個結合。
  • 右から数えるなら2番目の炭素に臭素が1個結合。
  • 右から数えるなら3番目の炭素に塩素が1個結合。

原子名もアルファベット順に

読む順番は、アルキル基と同じアルファベット順にします。つまり、臭素(Br)から読みます。

2-ブロモ-3-クロロブタンと名前が決まりました。

2-ブロモ-3-クロロブタン

さて、いよいよ最後の原則です。

基本骨格が同じ炭素数なら置換基の数が多くなるようにする

最後にとても変わった、しかし、大切な原則が出てきました。

基本骨格が同じ炭素数のものがあった場合、名前を決める時は、置換基の数が多くなるように選ぶのです。

これまで実はおもしろい化学反応の進め方に沿って紹介してきましたが、これを最後に持って来ていただいてよかったです。初めの方で説明されると混乱します。

下図を見てください。

まず、原則通り進めましょう。

  • 基本骨格は炭素数6のヘキサン。
  • 左から3番目の炭素にイソプロピル基が1個結合。

3-イソプロピルヘキサンじゃないの?

ところが違うのです。イソプロピル基の側から下図の2番目の構造式のように回転させて改めて見ます。

すると、基本骨格は炭素数6のヘキサンで変わらないものの、置換基が2個あるように見えます。

3-エチル-2-メチルヘキサン

さらに回転させて、見やすい位置に置いてみましょう。

原則通り進めてみましょう。

  • 基本骨格は炭素数6のヘキサン。
  • 左から2番目の炭素にメチル基が1個結合。
  • 左から3番目の炭素にエチル基が1個結合。
  • 右から数えると4番目の炭素にエチル基が結合することになるので、左から数えるのが有効。

従って、3-エチル-2-メチルヘキサンと名前が決まりました。

アルカンの名前の決め方は以上です。

まとめ

実は、構造式が出てくる本を読み始めても、どうやって物質の名前が決まるのか、そのルールについての記事を見つけられませんでした。

学生さんなら体系的に習うので、教科書に出てくるのだと思います。しかし、私のように途中から知る必要を感じて調べ始めても、どの本を読めばよいのかまったく分からないのです。

多分、同じような悩みを持つ人はいらっしゃるでしょう。今回、紹介した本には説明があります。また、大学で使う有機化学の一番やさしいものを探してみるのもよい方法かもしれません。

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