アスピリンはヤナギの樹皮から

アスピリンはヤナギの樹皮に含まれる物質をルーツに持ちます。ヤナギの樹皮に解熱、鎮痛、消炎作用があることは昔からよく知られていました。さらに肩こりやねんざに使われる湿布薬のスースーする成分もアスピリンと近い物質です。

アスピリン

アスピリンは古くからある薬として知られますが、もともとはヤナギの樹皮を煎じたものがルーツです。

薬のルーツ”生薬” -科学的だった薬草の効能-を読みました。技術評論社の「知りたい!サイエンス」シリーズは面白い本が多いのですが、この本もとても面白かったです。

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ヤナギの解熱、鎮痛、消炎作用

ヤナギの木の薬効は、古代ギリシャ時代、そしてアメリカ原住民にも古くから知られていました。

ちなみに、私はこの本を読んで(最近見ないので昔の)街路樹のヤナギに薬効があると初めて知りました。本には次のように書かれていました。

ヤナギの樹皮を煎(せん)じたものが、「アスピリン」のルーツと言われます。古代ギリシャの医師で”医学の父”とも称されたヒポクラテスの時代から、ヤナギの木には、解熱、鎮痛、消炎作用があることが知られていました。

ヤナギは、樹皮や葉にサリシン(サリチル酸の配糖体=糖を含んだ構造をもつ化合物)という物質を含んでいて、薬効成分になるのはサリチル酸と呼ばれるものです。

医薬品としてのサリチル酸の研究はヤナギから始まりましたが、アメリカ原住民の民間療法では、古くから発熱や痛みの緩和に使われていたことが知られています。

ヤナギの樹皮に含まれているサリシンとはこのような物質です。ちょうど真ん中にある酸素(O)から下が糖です。

サリシン

サリチル酸

一方、サリチル酸はこのような物質です。

サリチル酸

日本でもよく知られていた

ヤナギの効果は昔から日本でもよく知られていました。

日本では昔から「歯痛には柳楊枝(やなぎようじ)」と言って、ヤナギの枝が歯痛止めや楊枝の材料として用いられてきました。

また、「柳のお加持(かじ)」と言って、正月に汲んだ初水を霊木とされるヤナギの枝に振りかけて頭痛封じを祈願する行事が、現在でも京都の三十三間堂に残っています。

柳楊枝を使ったことはあると思いますが、こんな効果が期待されていたとは知りませんでした。歯に詰まった食べかすをとり除くだけのものだと思っていました。

サリチル酸の製造

サリチル酸の製造方法は、19世紀半ばに開発されました。フェノールに高温高圧で水酸化ナトリウムと二酸化炭素を反応させ、さらに酸を反応させてサリチル酸ができます。

コルベ・シュミット反応といいます。(出典

サリチル酸

サリチル酸を飲むと胃痛の原因になる

鎮痛効果があるサリチル酸ですが、どうも欠点があったようです。薬のルーツ”生薬” -科学的だった薬草の効能-には、このように書かれていました。

サリチル酸は胃粘膜を刺激します。

これだけだとよく分かりません。ウイキペディアを調べると、より具体的に書かれていました。飲むと胃が痛くなるのだそうです。

19世紀には、苦味が強い柳エキスに代わって鎮痛剤に使われたが、強い胃痛という副作用があった。その後、副作用がより少ないアセチルサリチル酸(アスピリン)に取って代わられることになる。サリチル酸

この副作用を避けるため、アセチルサリチル酸が使われるようになりました。

アセチルサリチル酸

アセチルサリチル酸はアスピリンのことです。

アスピリンは商標名

アスピリンは、商標名です。薬のルーツ”生薬”にはこのように書かれていました。

「アスピリン(Aspirin)」は、ドイツのバイエル社が名付けた商標名としてよく知られていますが、日本薬局方ではそれが正式名称にもなっています。

アセチルサリチル酸の製造

サリチル酸に無水酢酸を反応させると、アセチルサリチル酸ができます。無水酢酸とは、酢酸(CH3COOH)2分子が脱水縮合したものに相当します。構造式を見ていただくと分かりやすいと思います。

アセチルサリチル酸

効果

薬のルーツ”生薬”にはこのように書かれていました。

リウマチへの効果もある「アスピリン」ですが、解熱、鎮痛、抗炎症をはじめ、脳梗塞や心筋梗塞の原因にもなる血栓の予防などには少量を使用するなど、幅広く治療に使用されています。

サリチル酸メチルは湿布薬に

サリチル酸からサリチル酸メチルもつくられます。なんとこちらは筋肉痛や打ち身ねんざなどに使われる、スースーした芳香のある成分です。サロメチールやサロンパスのにおいです。消炎効果があります。

サリチル酸にメタノールを反応させてつくります。湿布薬がアスピリンと近い物質だったとは。

サリチル酸メチル

まとめ

私は風邪を引いたくらいでは薬を飲みません。もちろん、薬は異物なので体にあまりよくないだろうと思っているからです。

ただ、こうして発見の歴史を知ると、薬によって助かった人たちがたくさんいただろうなということが分かることと、すごく長く使われてきたことが分かり、アスピリンが身近になってきます。

そして、最初に分離されたサリチル酸が胃痛の原因になることが分かると、結合している水酸基(-OH)を別のものに変えることで、同様の効果が得られて副作用が少なくなるのが面白いと思いました。

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