β-グルカンってどんなものでなぜ効果があるのか調べてみた

β-グルカンが体によいと知って20年くらいたちました。もともとはアガリクスというキノコから知りました。β-グルカンは、どのような構造で、どんな働きをするのか調べてみました。

アガリクス

薬のルーツ”生薬” -科学的だった薬草の効能-を読みました。この本はアマゾンでレビューがこの記事を書いている時点で1つしかついていなかったですが、実に面白い本です。

薬のルーツは植物ですが、植物の生きる仕組みから、薬がなぜ効くかが大まかに説明されていて、なるほどなあと思えるようになります。

この本の紹介は、アスピリンはヤナギの樹皮からの記事の最初にしています。

アスピリンはヤナギの樹皮から
アスピリンはヤナギの樹皮に含まれる物質をルーツに持ちます。ヤナギの樹皮に解熱、鎮痛、消炎作用があることは昔からよく知られていました。さらに肩こりやねんざに使われる湿布薬のスースーする成分もアスピリンと近い物質です。 アスピリンは古くか...

アガリクスって有名だった

本を読んでいて、とても惹かれたのは、この部分でした。

一時、アガリクス由来のβ-グルカンが、免疫力を高めると話題になりましたが、この不消化糖質は、椎茸、松茸、エノキ茸、ナメコ、シメジなど、広く食用とされるキノコ類に共通する物質です。

したがって、高価なアガリクスを摂らなくても、普段からキノコ類を食べていれば、ほとんど同じ効果が得られます。

1995年頃、アガリクスは有名でした。特にガンの人に効果があるとかで、いわゆる健康食品は10日分くらいで数万円するのが普通でした。なぜ知っているかというと、当時、私の親がガンになったからです。(幸い、命拾いして今でも元気に生きていますが)

私も1度買いましたが、以後、さすがに高いので買う気がしませんでした。その時に、β-グルカンということばを何となく覚えました。

「グルカン」だから糖と関係があるんだろうなあ・・・と思いましたが、その当時は、まだネットで日本語のページが充実していなかったので調べられませんでした。

β-グルカンという化学用語を出されると、何か意味ありげでありがたくも思えました。しかし、あれから20年経ちました。今なら調べることができます。

β-グルカンってなんだろう?

β-グルカンとは、不消化糖質、つまり食物繊維だと説明されています。ヒトは消化できません。いったい、どんな構造をしているのでしょう?

まずはグルコース(ブドウ糖)についてからです。β-グルカンのβ(ベータ)は、β-グルコースがもとになっています。

β-グルコースについて最初に説明します。

β-グルコースのβ(ベータ)を理解する

下図を見てください。

2つグルコースを書きました。α-D-グルコースと、β-D-グルコースです。構造式を見ていただければ違いが分かると思います。

炭素番号1番についている水素(H)と水酸基(-OH)の位置が違います。

グルコース

グルコースの構造式を読ませていただくと、手持ちの本にも出ていなかった、スッキリとした説明が出ていました。引用させていただきます。β-D-グルコースに、炭素番号(下の文章で*位を表す)を振っておきました。

グルコースの六員環構造(6つの原子で環を形成している構造)は、5位の炭素原子に結合するヒドロキシ基が、アルデヒド基に付加することで生成します。

このとき、1位の炭素原子は新たに不斉炭素原子となり、2種類の立体異性体が生じます。

D-グルコースの、1位の炭素原子に結合する-OHと、6位の-CH2OHが環平面に対して反対側にあるものをα体、同じ側にあるものをβ体と呼びます。

重要なところに黄色いマーカーを引いておきましたが、実に分かりやすいです。CH2OHと1位のOHが同じ側にあるグルコースがβ-グルコースです。

D-グルコースのDとは?

次にD-グルコースについて知りましょう。まずは図を見てください。上の環構造をとったグルコースと同じように炭素番号を振ってあります。

D,L-グルコース

イラストレイテッド ハーパー・生化学 原書29版にはこのように説明されていました。

イラストレイテッド ハーパー・生化学について
2017年の春にイラストレイテッド ハーパー・生化学原書29版を買ってそれ以来使っています。きっかけは、アセチルCoAからコレステロールが合成される図を見たからです。最新版は2016年刊行の30版です。出版社に敬意を表して先に最新版を表示し

糖の異性体はD型とそれとは鏡像の関係にあるL型があり,この表記は糖の出発物質であるトリオース,すなわちグリセルアルデヒドとの空間的な関係にもとづいている.(中略)

末端の第一級アルコール炭素に隣接する炭素原子(グルコースでは5位の炭素)のどちら側にH基とOH基が位置するかによってDおよびL型が決まる

OH基が右側の場合だと糖はD型になり,左側だとL型となる.天然に存在する単糖のほとんどのものはD型であり,糖質代謝酵素はこの立体配置を特異的に認識する.

D-とL-は、グリセルアルデヒドのOHの位置が基準になる

グリセルアルデヒドをもとにして、アルコール基(CH2OH)の上にある炭素についている水酸基(-OH)が左ならL、右ならDとし、それをもとにグルコースのD、Lも分類します。

天然型は、ほとんどD型だと覚えておきましょう。

グルカンとは

グルカンは、グルコースがつながったもの。デンプンもグルカンだそうです。

グルコースを構成糖とする多糖の総称.デンプン,セルロースなど.(出典

デンプン、セルロースといわれると、それほどむずかしくない感じがします。セルロースは紙の繊維質です。植物細胞の細胞壁でもあります。

セルロース

セルロースはβ-グルカンの1つであり、こんな構造をしています。β-D-グルコースの1位の炭素についているOHと4位の炭素についているOHが反応し、水(H2O)がとれて下図のように結合します。

β-グルカンについてで、とてもていねいに説明されていました。

下図では4個結合していますが、実際はこれがずーっとつながっています。セルロースは、β-1,4-グルカンです。

セルロース

アガリクスのグルカンはどんな構造?

やっとアガリクスまでたどり着きました。アガリクスのβ-グルカンはβ-1,6-グルカンと呼ばれます。ここまで読んできたら分かりますね。

β-1,6-グルカン

ネットをじっくり調べていって、真菌 β-1, 3-グルカンの構造と生物活性という論文を見つけました。この中にはアガリクスのグルカンのタイプが図示されていました。それをもとに構造式で書きました。

主鎖がβ-1,6-グルカンです。ところどころ分岐していますが、その部分はβ-1,3-グルカンです。この論文によると、菌類(キノコの種類)によってグルカンの構造がかなり変わるようです。

アガリクスのβ-1,6-glucan

β-グルカンの効果

薬のルーツ”生薬”-科学的だった薬草の効能-では、このように説明されていました。

キノコの成分であるβ-グルカンという糖鎖(糖の結合形態)は、異物が入ってくると、非特異的(相手を選ばずに攻撃すること)にリンパ球を刺激し、免疫監視機能を高める(免疫賦活)働きをします。

細胞の表面には糖鎖がありますが、それは細胞同士の確認信号として働きます。そして、その信号をやりとりすることで、身体の中の異常細胞を排除し、発生させないようにします。

それが、「非特異的な免疫監視機能を高める」、つまり「自然免疫能を高める」ということなのです。

「糖鎖」の意味は、β-グルカンは、ブドウ糖がつながっているものなのでその通りですね。食物繊維として、消化されないことに意味があるようです。リンパ球をいつも刺激して免疫機能を高めているということなのだと思います。

まとめ

β-グルカンが免疫機能を高めるといわれると、そういうものなのかと思います。20年前なら調べるのがとても大変で、途中であきらめることが多かったです。

しかし、今は情報過多時代でもありますが、調べようと思ったら少し根気が必要ですが、ネットでかなり正確なところまで調べられるようになりました。もちろん、信頼できない情報が多く、選択するには私たちも学んでいかねばなりません。

β-グルカンは、消化できない食物繊維で、高価なアガリクスを摂らなくても、普段からキノコ類を食べていれば、ほとんど同じ効果が得られるということが分かるだけで気分がよくなります。

どうやら、食物繊維はかなり大切なものみたいです。麦飯は食物繊維の量が玄米よりあるんじゃないかでも書きましたが、押麦をお米に混ぜて炊くのもよいと思います。

麦飯と玄米どちらを食べたらよいのか?
麦飯がよいと聞いて、長年玄米を食べてきた私はどちらがよいのだろうと迷い、調べました。麦飯の麦は大麦のことで、押麦は大麦の外皮を取り除き熱処理をされてローラーでつぶされたものでした。たんぱく質が少し多く、食物繊維がとても多いのが特徴です。ビタ...
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