飽和炭化水素であるアルカンから水素1個を抜いたものがアルキル基です。構造式の一般形の中で「R」と書かれています。
この記事は、アルカンの命名法に関連付けて補足するために書いています。アルカンってなんだ?という方は、まずそちらからお読みいただけると分かりやすくなります。
置換基とアルキル基
下図は2,3-ジメチルペンタンの構造式です。
横に並ぶ炭素は5個あり、2番目と3番目の炭素に-CH3がそれぞれ1個ずつ結合しています。比較のため、ペンタンも書いておきました。
ハート基礎有機化学では、2,3-ジメチルペンタンの構造式を使って、置換基とアルキル基についてこのように説明されていました。
主鎖についた基は置換基(substituent)とよばれる。炭素と水素だけでできた飽和の置換基はアルキル基(alkyl group)とよばれる。
これらは同じ数の炭素原子でできたアルカンの語尾 -ane を -yl にかえた名称を持つ。
上の例では,どの枝分かれ部分も炭素原子を1つしかもっていない。この置換基は炭化水素のメタンから水素1つを取り除いた形をしているので,メチル基(methyl group)とよばれる。
主鎖というのは、図に書かれた5個並んだ炭素の鎖のことです。
置換基
本来、ペンタンは、炭素(C)の結合の手に水素(H)しか結合していません。ところが、2,3-ジメチルペンタンの場合は、左から2番目と3番目の炭素に水素の代わりにCH3が結合しています。
このCH3を置換基といいます。
アルキル基はアルカンの置換基
さらに、CH3は、炭素と水素だけでできていて、しかも炭素と結合する手以外は、すべて水素が結合して「飽和」しています。
このような基は、アルキル基と呼ばれます。
そして、炭素が1つしかないアルキル基は、メチル基と呼ばれます。炭素が1つしかないアルカンはメタンでした。
メタン(methane)からメチル(methyl)と名前が変わります。
アルキル基はアルカンから水素1個抜いたもの
実はおもしろい化学反応には、アルキル基について、こんな表が載せられていました。
炭素数 | 対応するアルカン | アルキル基の名称 | 構造 |
1 | メタン | メチル基 | CH3- |
2 | エタン | エチル基 | CH3CH2- |
3 | プロパン | プロピル基 | CH3CH2CH2- |
4 | ブタン | ブチル基 | CH3CH2CH2CH2- |
5 | ペンタン | ペンチル基 | CH3CH2CH2CH2CH2- |
このあとは、ヘキサン、ヘプタン、オクタン・・・に対応してアルキル基ができます。
しかし、よくよく見ると、アルキル基は、アルカンから水素(H)を1個抜いただけのものです。
当初、2,3-ジメチルペンタンの構造式を見て、炭素数5のアルカンのペンタンに、置換基としてアルキル基のメチル基(-CH3)が2個結合したものだと考えました。
しかし、ペンタン自体、いや、もっと多くの炭素が連なったアルカンでも、水素(H)を1個抜けば、アルキル基になります。
構造式に出てくる「R」はアルキル基のこと
時々、本やネットの記事を読むと、構造式の一般形(?)にR-が入っています。炭化水素を省略したものだろうと思いながら深く調べていませんでしたが、「R」とはアルキル基のことでした。
たとえば、アルコールは、R-OHと表され、脂肪酸は、R-COOHと表されます。
実はおもしろい化学反応ではアルコールについて次のように書かれていました。
アルカンの水素を「-OH」で置き換えたものをアルコールと総称します。
私たちはアルコールと言えば飲用できるエチルアルコールのことを無意識に指しています。
しかし化学的には、炭素1個のメタンの水素を「-OH」で置き換えたメチルアルコールもアルコールですし、炭素10個であってもその水素を「-OH」に置き換えるとアルコールの仲間になります。
つまり、様々な種類のアルカンと「-OH」は結合することができ、その結合したアルカンの種類ごとに異なる性質を持つアルコールを形成できるのです。
アルカンの水素を「-OH」で置き換えたものをアルコールといいますが、「-OH」以外の部分は、アルキル基です。
そして、これらのアルキル基の構造を毎回描くのは大変なので、アルキル基をひとまとめにして「-R」と表現します。
「R-OH」と書けば、アルキル基でできたアルコールという意味です。
「R」はradical
アルキル基なのに、なぜ「R」なのかなと思われるでしょう。英和辞典を引くと、分かりました。
【化学】 基.(出典)
まとめ
アルカンから水素(H)を1個抜いたものが、アルキル基です。
アルキル基というと、置換基ですから、何となく短いメチル基、エチル基、プロピル基・・・などをイメージしますが、もっとずっと長いものでもアルカンから水素を1個抜けば、アルキル基になります。
構造式の一般形では「R」と表され、よく使われています。「R」はradicalで、「基」という意味です。アルキル基のことだと覚えておきましょう。