この記事では、脂肪細胞から分泌されるアディポネクチンについて、どのようなものか。どんな働きをするか。アディポネクチンを増やすためにどうしたらよいか。増やすのに役立つ食べ物にはどんなものがあるか調べました。
超善玉ホルモン「アディポネクチン」で健康長寿になるを読みました。
アディポネクチンとは
アディポネクチンは脂肪細胞から分泌されるホルモンです。次に説明しますが、おもに健康に役立つ4つの働きをしてくれます。
脂肪細胞は、特別な細胞ではありません。脂肪をため込んでいるので脂肪細胞と呼ばれます。脂肪細胞について以前調べたことがあります。こちらを読んでみてください。
アディポネクチンは、1996年に日本で発見され、2003年にホルモンとして認められた物資だそうです。
ホルモンと聞くと、中学や高校で習ったアドレナリンを思い出します。副腎皮質でつくられて、血液中を流れ、ごく微量で、心拍数を上げたり、血圧を上げ、瞳孔を開き、ブドウ糖の血中濃度(血糖値)を上げるなどの働きがありました。
ホルモンは特定の場所で働きを指示する物質です。
それにしても、アディポネクチン、脂肪細胞から分泌されるなら、脂肪細胞がたくさんある肥満した人の方がよいのかと思いますね。
しかし、そうではないのです。
それを説明する前に、まずはアディポネクチンの働きについて説明します。
アディポネクチンの作用は4つ
『超善玉ホルモン「アディポネクチン」で健康長寿になる』を読むと、アディポネクチンの作用は4つありました。
血管を修復し、動脈硬化を防ぐ
私たちの血管は、糖や脂質、有害物質などによって、日々損傷を受けます。こうした傷があるとコレステロールが付着しやすくなり、それが血管の壁にたまって血管を詰まらせ、動脈硬化や高血圧を引き起こします。
そしてある日突然心筋梗塞や脳梗塞を発症する元凶となってしまうのです。アディポネクチンには血管内の傷を修復する働きがあるため、こうした事態を未然に防ぐことが期待できます。
さらにアディポネクチンには血管を拡張する作用もあり、これによって高くなった血圧を下げる効果があります。血管を守りトラブルを防ぐことが可能になるのです。
若い方なら、動脈硬化なんか関係ないと思われるでしょう。しかし、気になる年代の方にとっては、ありがたい話です。動脈硬化が進むと血圧も上がってきます。
インスリンの働きを高める
インスリンは、体内において血糖値を下げる唯一のホルモンですが、糖が増え過ぎた状態にあると対応しきれなくなり、またインスリンの働きそのものが低下してしまうことで、糖尿病の発症に至ります。
アディポネクチンはこのインスリンの働きをサポートする働きがあるため、おもに生活習慣から発症する2型糖尿病などの有効な解決策となり、糖尿病の予防や治療にも新たな可能性が期待されています。
「インスリンの働きをサポートする」と書かれると、インスリンと同じ働きをするのか、それとも同じインスリンが普段より過剰に働くようにしてくれるのか、意味がよく分かりません。
少し調べてみました。
ウイキペディアのアディポネクチンを読むと、「AMPキナーゼを活性化させることによるインスリン感受性の亢進」と書かれていたので、AMPキナーゼという酵素が関係しているようです。
首都大学東京の運動分子生物学研究室のページを読ませていただきました。
簡単に説明しましょう。
血液中のブドウ糖を骨格筋の細胞内に取り込むには、細胞膜を通過させる手段が必要となり、それを行うのがグルコーストランスポーター4(GLUT4)というものです。インスリンは、このトランスポーターを細胞膜の表面に呼び出す働きをします。
一方、AMPキナーゼが活性化されると、インスリンを介さないでこのトランスポーターを細胞膜の表面に呼び出すことができるようになります。
つまり、インスリンに加えて、インスリンと同じような働きをすることで「インスリンの働きをサポートする」と書かれていたようです。
脂肪を燃焼させる
運動などの身体活動でエネルギーが必要になると、脳からの伝達によって脂肪分解酵素「リパーゼ」が活性化され、蓄えておいた脂肪をエネルギーとして消費します。
またその際には筋肉の中にある「AMPキナーゼ」という酵素も活性化され、インスリンの働きとは関係なく糖や脂肪をエネルギーとして活用する働きがあります。
一般的にダイエットに運動が欠かせないのはそのためですが、実はアディポネクチンには、必ずしも運動を伴わなくても筋肉のAMPキナーゼを活性化する働きがあります。運動なしでも糖を取り込み、脂肪燃焼を促すことができるのです。
これは糖については、一つ前の説明のいい換えですね。インスリンを使わなくても細胞の中にブドウ糖を入れることができました。
脂肪を燃やすには、リパーゼによって、脂肪はグリセリンと脂肪酸3本に分解され、さらに脂肪酸を短くしていって、炭素数2のアセチルCoAとしてミトコンドリアに送り込みます。
AMPキナーゼは、この代謝のどこかに関係しているのでしょう。
アディポロン
また現在では、アディポネクチンの効果を利用した糖や脂肪の研究も進められています。現時点で臨床応用にもっとも近い状態といえるのは、東京大学大学院の門脇孝教授、山内敏正准教授らの研究グループによるものです(2014年6月現在)。
門脇教授らは、アディポネクチン受容体を活性化する「アディポロン」(アディポネクチン受容体活性化低分子化合物)を発見し、科学誌『ネイチャー』電子版に2013年10月31日付で発表しています。
この発表では、肥満や2型糖尿病のマウスを用いた実験で高脂肪食を与えたマウスが120日後には約70%死亡したのに対し、「アディポロン」を1日1回投与したマウスの死亡率は約30%にとどまり、生存率自体も上がっていました。
肥満に伴うさまざまな病気の治療につながるものとして今後が期待されています。
抗がん作用が期待される
アディポネクチンにはがんや腫瘍の増殖を抑える抗がん作用の可能性も期待されています。
東京大学の北山丈二講師らが行った人の胃がん細胞を移植したマウスを使った実験で、健康な人の血液中と同じ濃度のアディポネクチンを注射すると、がんの増殖が抑えられたという研究があります。
こんな話を読むと、自分の脂肪細胞が出すのだから、どうやったらアディポネクチンが増えるのかなと思います。
内臓脂肪を減らすとアディポネクチンは増える
アディポネクチンは内臓脂肪が増えると少なくなり、内臓脂肪が減ると多くなります。
内臓脂肪、説明しなくてもお分かりになると思います。お腹につく脂肪です。お腹ポッコリ。男性ならウエストが85センチ以上でメタボといわれますが、これは内臓脂肪がついている証拠です。
内臓脂肪は減りやすいのが特徴です。減量すると、まず内臓脂肪から落ちてくるからです。やせましょう。
どんなものを食べるとよいか
メタボリックシンドローム、がんも撃退する! 奇跡のホルモン「アディポネクチン」 (岡部 正 2007 講談社+α新書)には、普段食べるものについてアドバイスが書かれていました。
大豆タンパク質、その中でも豆腐がよい
大豆はアディポネクチンを増やす強力な働きがあるそうです。ベータコングリシニンという成分がアディポネクチンを増やすそうです。
中でも豆腐が一番多く含まれています。絹ごしでも木綿でも差はありません。
納豆にも多く含まれています。納豆を食べるときは、ご飯にかけて食べることが多いので、ご飯を食べ過ぎないようにしてください。
小松菜、にんじんなど
小松菜、トマト、にんじん、オクラ、ほうれん草、ピーマン、ブロッコリーなどの緑黄色野菜をよく食べる人には低アディポネクチン血症の人が少ない、というデータがあるそうです。食物繊維が関係しているのではないかと書かれていました。
マグネシウム
アメリカで発表されたデータでは、マグネシウムをよく食べ物からとっている人は、アディポネクチンの値が高いことが栄養調査で明らかにされているそうです。
マグネシウムはインスリンの効きをよくする(インスリン抵抗性を改善する)ことが知られていましたが、マグネシウムがアディポネクチンを増やすので、インスリンの効きがよくなっていたのでしょうと書かれていました。
私はサプリメントが好きではないので、普通の食品でマグネシウムが多いものを調べました。
100g食べられるものが少ないですが、ピュアココアをなるべく飲もうとか、きっと高カカオのチョコレートもよいだろうとか、蕎麦を食べるようにするといいなとお分かりになると思います。
また、米ぬかを食べる人はあまりいないと思いますが、玄米に多いと予想ができます。実際、炊いた玄米100gにはマグネシウムが49mg含まれています。
食品名 | 成分量 100gあたりmg |
あおさ/素干し | 3200 |
あおのり/素干し | 1400 |
乾燥わかめ/素干し | 1100 |
米ぬか | 850 |
ピュアココア | 440 |
インスタントコーヒー | 410 |
ごま/乾 | 370 |
そば粉/表層粉 | 340 |
アーモンド/いり無塩 | 310 |
まつ/生 | 290 |
アマランサス/玄穀 | 270 |
きな粉/全粒大豆/黄大豆 | 260 |
えごま/乾 | 230 |
かたくちいわし/煮干し | 230 |
抹茶 | 230 |
紅茶 | 220 |
黄大豆/乾 | 220 |
カレー粉 | 220 |
せん茶 | 200 |
らっかせい/いり小粒種 | 200 |
日本人の食事摂取基準(2015年版)によると、マグネシウムの食事摂取基準(mg/日)での推奨量は、成人男性で、320~370mg/日、成人女性で、270~290mg/日です。
リンゴ、キウイ、トマトなどオスモチンを含むもの
リンゴ、さくらんぼ、ぶどう、キウイ、とうもろこし、トマト、ピーマンなどには、オスモチンが豊富に含まれています。
オスモチンは、アディポネクチンの一部と立体構造がよくにているため、筋肉や肝臓のアディポネクチン受容体にくっつくことが分かりました。
同じような働きをしてくれる可能性があります。
まとめ
本を読み始めた時、脂肪細胞がホルモンを出す?と頭の中で引っかかりを感じていました。脂肪細胞って、普通の細胞で、単に脂肪をたらふくため込んでいる状態だからです。
しかし、考えてみればもともとは全て同じ細胞です。細胞は1個でも生きていく能力をもっています。環境に適応していろいろな働きをするんだなと思いました。
無理なダイエットはよくないですが、食べ過ぎないで適度に体を使って、「太らない」ことが一番です。