葉酸の作用を詳しく調べてみた

葉酸の働きは少し理解しづらいです。簡単にいうと、一炭素単位(1個の炭素を基本にできた物質)をやりとりする補酵素としての働きなのですが、食べ物から入って来た葉酸の構造が変化し、活性型として働くテトラヒドロ葉酸までの道のりが結構あります。構造式から一つずつ書いてみました。

ホウレンソウ

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レクタングル大

葉酸の構造って何種類かあるのかな?

葉酸の構造は下図の通りです。葉酸は、プテリジン置換体であるプテリンと4-アミノ安息香酸(パラ安息香酸)とグルタミン酸が結合した構造です。

葉酸

ところで、最初に葉酸の構造式を調べたとき、「あれ、なんか変だな」と思いました。2冊の本で調べたらプテリンに微妙に違いがあるのです。

葉酸の中のプテリン

2つの環がくっついた(下図の赤い環)構造を見てください。違っているでしょう?

アミノ基(NH2)と水酸基(OH)がついている二重結合の位置が違っていて、おまけに2つの環がつながる場所も、単結合だったり二重結合だったりします。

どちらかが間違っているのかもしれないと思いましたが・・・。

葉酸

間違いではなく、調べてみると、これらは互変異性体というものだということが分かりました。

プテリンの互変異性体

下図に書いた構造式が、プテリンの互変異性体です。互変異性体とは、それらの異性体同士が互いに変換する異性化の速度が速く、どちらの異性体も共存する平衡状態に達しているのだそうです。(出典

これらは、プテリンの互変異性体の全てではなく一部であり、まだ他にもあるようです。これらが共存しています。

ということは、葉酸の構造式の中の赤色をつけた部分に違いがあってもよいのです。そのことが分かりました。

プテリン

葉酸の種類

葉酸が実際に働くには活性型になる必要があります。

活性型はテトラヒドロ葉酸

葉酸には種類があります。イラストレイテッド ハーパー・生化学 原書29版によれば、葉酸の活性型は、テトラヒドロ葉酸(下図 THF)です。

水素が4個つく

テトラヒドロは、水素が4個ついた葉酸という意味です。

  • 1は「モノ」
  • 2は「ジ」
  • 3は「トリ」
  • 4は「テトラ」

「ヒドロ」は「水素」の意味です。

水素がどこに結合したのか。テトラヒドロ葉酸は、5,6,7,8‐テトラヒドロ葉酸とも書きます。数字は、位置番号を表します。

プテリンに位置番号をふって、5、6,7、8番についてだけ、葉酸、テトラヒドロ葉酸とも炭素と水素を省略しないで書きました。葉酸とテトラヒドロ葉酸を比べると、二重結合が解消されて、水素が4個増えているのがお分かりになると思います。

テトラヒドロ葉酸

γ-ペプチド結合

食品中の葉酸は、γ-ペプチド結合によりグルタミン酸残基を最大7個付加結合しています。図の中に、赤字でα(アルファ)β(ベータ)γ(ガンマ)と入れました。炭素の位置を示しています。

γ-ペプチド結合とは、γ位の炭素についたカルボキシル基COOHのOHと、アミノ基NH2の1個のHが結合して水となってはずれ、残ったCOとNHが結合することを繰り返します。

グルタミン酸とγ-ペプチド結合

グルタミン酸とγ-ペプチド結合

さらに、下図に示したようにすべての葉酸の一炭素置換体が食品中に存在すると考えられています。

テトラヒドロ葉酸は一炭素単位の運搬体

テトラヒドロ葉酸は、一つの炭素からできた物質を運搬する働きを持っています。イラストレイテッド ハーパー・生化学 原書29版にはこのように書かれていました。

テトラヒドロ葉酸は,一炭素単位を分子内の特定の原子に付加または架橋して運搬する:

N-5に付加(ホルミル,ホルムイミノ,またはメチル基),N-10に付加(ホルミル基)またはN-5とN-10間に架橋(メチレンまたはメテニル基),5-ホルミル-テトラヒドロ葉酸は葉酸よりも安定であるので,薬用として使用され(フォリン酸 folinic acid),および合成(ラセミ体)化合物として知られる(ロイコポリン leucovorin).

運搬される一炭素単位は、下図の赤字にしてある通りです。

  • ホルミル基・・・(-CHO) アルデヒド基ですね。
  • ホルムイミノ基・・・(-CHNH)
  • メチル基・・・(-CH3
  • メチレン基・・・(-CH2-)
  • メテニル基・・・(-CH=)
テトラヒドロ葉酸とその一炭素単位置換の葉酸類

テトラヒドロ葉酸とその一炭素単位置換の葉酸類

食事から入って来るのは5-メチルテトラヒドロ葉酸がほとんど

日本人の食事摂取基準(2015年版)の葉酸を読むと、次のように書かれていました。

食品中の葉酸の大半は補酵素型の一炭素単位置換のポリグルタミン酸型として存在し、酵素たんぱく質と結合した状態で存在している。

このポリグルタミン酸型の補酵素型葉酸は、サプリメントとして使用されているプテロイルモノグルタミン酸に比べ加熱調理によって活性が失われやすい。

食品を調理・加工する過程及び胃酸環境下でほとんどのポリグルタミン酸型の葉酸補酵素型はたんぱく質と遊離する。

遊離したポリグルタミン酸型の補酵素のほとんどは腸内の酵素によって消化さ
れ、モノグルタミン酸型の葉酸となった後、小腸から吸収される。

消化過程は食品ごとに異なり、一緒に食べる他の食品によっても影響を受ける。食品中の葉酸の相対生体利用率はプテロイルモノグルタミン酸と比べ 25~81% と報告によってばらつきが大きい。

日本で食されている平均的な食事中の葉酸の遊離型プテロイルモノグルタミン酸に対する相対生体利用率は 50% と報告されている。

食事性葉酸のほとんどは、消化管内で消化され、5-メチルテトラヒドロ葉酸のモノグルタミン酸型となり、促通拡散あるいは受動拡散によって血管内に輸送された後、細胞内に入る。

しかしながら、ポリグルタミン酸型となるまでは、細胞に保持されない。ポリグルタミン酸型となるには、5-メチルテトラヒドロ葉酸のモノグルタミン酸型をテトラヒドロ葉酸に変換しなければならない。

この反応を触媒する酵素がビタミン B12 を必要とするメチオニン合成酵素である。つまり、食事性葉酸を補酵素型葉酸に転換するためには、メチオニン合成酵素が必須である。

最後の3つの段落が重要です。

5-メチルテトラヒドロ葉酸がテトラヒドロ葉酸に変換されてポリグルタミン酸型にならないと細胞に保持されず、そのためにはメチオニン合成酵素が必要だということに注目して、次に行きましょう。

葉酸の作用

下図の薄い水色を下地にしたものが葉酸です。上で説明してきたように葉酸にはいくつか種類があります。

葉酸の働きを示すこの図は、図解入門よくわかる栄養学の基本としくみに出ていたものを改めて書き直しました。

葉酸が、一炭素単位を運搬して受け渡すところを見てみましょう。

葉酸の代謝

葉酸の代謝

まずは図の中央、葉酸の代謝経路、メチルテトラヒドロ葉酸から見ていきましょう。

食品中の葉酸の大半は補酵素型の一炭素単位置換のポリグルタミン酸型として存在し、酵素たんぱく質と結合した状態で存在しています。食事からの葉酸のほとんどは、消化管内で消化され、5-メチルテトラヒドロ葉酸のモノグルタミン酸となると書かれていましたので、ここからスタートします。

ビタミンB12も関係するホモシステインからメチオニンへの変化

ホモシステインからメチオニンの変化は下図の通りです。このとき、ビタミンB12も関わっています。硫黄(S)に一炭素単位であるメチル基(-CH3)がつきます。

homocysteine to methionine02

ホモシステインからメチオニン

メチルテトラヒドロ葉酸からテトラヒドロ葉酸

このとき、5-メチル葉酸からメチル基(-CH3)が外れ、かわりに水素がついて、5,6,7,8-テトラヒドロ葉酸になります。この変化によって、ポリグルタミン酸型になることができるようになり、細胞内に保持されることが可能になります。

下図では、5,6,7,8-テトラヒドロ葉酸はポリグルタミン酸型で書きました。

5-MethylTHF to 5,6,7,8-THF02

5-メチルテトラヒドロ葉酸から5,6,7,8-テトラヒドロ葉酸へ

次に、5,6,7,8-テトラヒドロ葉酸は、セリンがグリシンに変化することに関わります。

セリンからグリシンへ

セリンがグリシンに変化します。下図左のCH2OHが右ではHに変わっていて、一炭素単位が外れていることがわかります。

Serine to Glycine

セリンからグリシン

テトラヒドロ葉酸からメチレンテトラヒドロ葉酸へ

このとき、5,6,7,8-テトラヒドロ葉酸は、一炭素単位のメチレン基(-CH2-)がN-5とN-10間に架橋されて付いて、5,10-メチレンテトラヒドロ葉酸に変化しています。

ポリグルタミン酸型で書こうかと迷いましたが、見やすいモノグルタミン酸で書きました。(以下も同じ)

5,6,7,8-THF to 5,10-MethylenTHF

5,6,7,8-テトラヒドロ葉酸から5,10-メチレンテトラヒドロ葉酸

次は、図の左上、DNAの合成に関わるところです。

DNAの合成にかかわるdUTPからdTTPへ

メチレンテトラヒドロ葉酸がジヒドロ葉酸に変化しながら、DNAの合成に利用されるdTTP(チミジン三リン酸)の合成に関係します。

dUTPからdTTPの変化は次の通りです。実際は何段階もある変化なのですが、結果だけ。

dUTP to dTTP

dUTP からdTTP

dUTPとdTTPを比較すると、反応後のdTTPには一炭素からなるメチル基(-CH3)が結合しています。

上の構造式には、原子が結合する手に、破線とくさび形の線が書かれています。これはくさび形表記といわれます。

通常の実線でつながれた原子は紙面(画面)上の2次元空間にあるものとし、それに対して、紙面の手前に出ている原子をくさび形で、紙面の奥に出ている原子を破線でつなぎます。立体的な結合をしていることを表しています。

メチレンテトラヒドロ葉酸からジヒドロ葉酸へ

このとき、メチレンテトラヒドロ葉酸はジヒドロ葉酸に変化します。図を見ていただければお分かりになるように、一炭素のメチレン基(-CH2-)が外れます。

これらの反応で、一炭素単位をやりとりしているのが分かります。

5,10-MethyenTHF to 7,8-DHF02

5,10-メチレンテトラヒドロ葉酸から7,8-ジヒドロ葉酸へ

サプリメントの葉酸の代謝は注意

一般的な食品から入って来る葉酸の代謝はいままで書いて来た通りですが、サプリメントの場合は、少し違います。

葉酸

図にあるプテロイルモノグルタミン酸(PGA)が葉酸の基本構造です。

これが一定濃度を超えると、そのままの形で細胞に取り込まれ、モノグルタミン酸型のジヒドロ葉酸、テトラヒロド葉酸を経て、ポリグルタミン酸化され、5,10-メチレンテトラヒドロ葉酸のポリグルタミン酸型に変換されてしまいます。

つまり、メチオニン合成酵素に依存していた、ビタミンB12も関係するホモシステインからメチオニンへの変化を飛ばして、DNA 合成に必要な反応を進めてしまうことになります。

ビタミン B12 が欠乏している人は、赤血球が新しく作られなくなり巨赤芽球性貧血になるのですが、それがカバーされてしまいます。つまり、ビタミン B12 が欠乏していることがわかりにくくなる。

そして、より深刻な神経疾患症状が進行してしまう場合があるようです。

まとめ

葉酸を理解するのにとても時間がかかりました。

最初、プテリンの構造が本によって違っていて、なぜなんだろうと思い、それを解決するのにかなり時間がかかりました。

テトラヒドロ葉酸になって、モノグルタミン酸からポリグルタミン酸構造にならないと、一炭素単位の補酵素にならないというのもネックですね。

構造式を調べて書いて、やっとわかったような気になりました。

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