辛い大根おろしはお好きですか?辛味成分に効果があるのです。その他、大根の栄養成分、捨てられてしまう葉っぱと根の栄養成分の比較、大根の効能、大根の保存方法も紹介しましょう。
大根はお好きですか?ほとんど水分ばかりなのに昔から体によいといわれています。知り合いの酒飲みのオヤジさんは、毎朝大根おろしを欠かさず食べていました。確かに胃がスッキリします。
大根おろしはなぜ辛くなる
辛い大根おろしが好きな方のために
大根を生で食べても辛くないのに、大根おろしにすると辛くなります。辛み成分は、アリルイソチオシアネートという物質で、マスタードやワサビなどの辛味成分でもあります。
鼻にツーンと来る辛さです。
イソチオシアネートは大根をすりおろしたり切ることで、細胞が壊れると初めて化学反応により生成される。
そもそも大根中の別々の場所に存在していたイソチオシアネートの前駆物質(グルコシノレート、芥子油配糖体)とミロシナーゼと呼ばれる酵素が、細胞が壊れることにより混ざりあい、イソチオシアネートを生成する化学反応を起こすことによる。
イソチオシアネートの前駆物質は根の先端部分ほど含有量が多く、葉に近い部位の約10倍にもなる。また若い大根には多く、成長するにしたがって減少する。そのため辛い大根おろしには夏大根がより適している。(出典)
私は辛い大根おろしが好きなので、大根を買ってくると、まず先端部分をおろします。とても辛くてよいです。
確かに、根元の(いわゆる青首の)部分はおろしてもほとんど辛くないのですが、醤油をたらすと辛くなります。あれはなぜなんでしょうね?
辛くなるおろし方
さらにおろし方にもコツがあります。
大根の切断面を繊維を断ち切るようにおろすとよい。おろし金に対して直線に力をこめて一気にすりおろすとより辛味が増す。
具体的には長手方向に対して直角に円を描くように回しながらおろすと良い。『怒りながら大根をおろすと辛くなる』という昔ながらの伝承は、道理にかなっているといえる。
さらに、おろしてから5分程度経過したら、辛みがピークに達しその後減少する。また、皮付きでおろすと更に辛みが増す。(出典)
画があまりきれいではないですが、このようにまっすぐの向きで大根をおろすと辛いのができます。
ところで、今はよほど気のきいた八百屋さんに行かないと葉っぱのついた大根は売っていません。大根葉は栄養があるといわれていますが、実際に調べたことがなかったので、大根と比較してみました。
大根と大根葉の栄養成分
生の大根と大根葉の栄養成分を比較してみました。
カリウムとカルシウム、β-カロテン、ビタミンK、葉酸、ビタミンCの含有量が大きく違います。下の表を見るだけで、大根葉は捨てるものではなくて食べるものだと分かります。もし、幸運にも葉つき大根が売っていたら八百屋さんで切ってもらって持ち帰りましょう。
ビタミンKについては、ビタミンKに過剰症はないで1日の必要量など説明しています。
だいこん葉生 | だいこん根皮つき生 | |
エネルギー | 25kcal | 18kcal |
水分 | 90.6g | 94.6g |
たんぱく質 | 2.2g | 0.5g |
脂質 | 0.1g | 0.1g |
炭水化物 | 5.3g | 4.1g |
カリウム | 400mg | 230mg |
カルシウム | 260mg | 24mg |
マグネシウム | 22mg | 10mg |
リン | 52mg | 18mg |
鉄 | 3.1mg | 0.2mg |
亜鉛 | 0.3mg | 0.2mg |
βカロテン | 3900μg | 0 |
レチノール活性当量 | 330μg | 0 |
ビタミンD | 0 | 0 |
α-トコフェロール | 3.8mg | 0 |
ビタミンK | 270μg | Tr |
ビタミンB1 | 0.09mg | 0.02mg |
ビタミンB2 | 0.16mg | 0.01mg |
葉酸 | 140μg | 34μg |
ビタミンC | 53mg | 12mg |
食物繊維総量 | 4.0g | 1.4g |
※日本食品標準成分表2015年版(七訂)から引用 |
大根の効能
薬剤師の橋本紀代子さんが書かれた野菜の力を読むと、大根は胃腸が疲れたときに食べるものと紹介されています。
この本には面白いことが書かれていました。
肝臓と胆のうによい
ダイコンのしぼり汁(ジュース)を冷やして飲むのは、ドイツ流の肝臓・胆のうの薬です。100~150ミリリットルを1日何回かに分けて飲みます。
ミキサーでジュースをつくると大根おろしのように辛くならないのでしょうか?まだやってみたことがありません。
大根の酵素
ジアスターゼ
大根にはジアスターゼが含まれていると昔からいわれます。ジアスターゼは、アミラーゼのことで、デンプンをブドウ糖に変える糖化酵素です。
今はあまりやらないかもしれませんが、お餅を食べるときに大根おろしと一緒に食べると消化を助けて胃もたれしません。
プロテアーゼとリパーゼ
また、たんぱく質をアミノ酸に分解するプロテアーゼや脂肪を分解するリパーゼも含まれています。
焼肉屋さんに行くと、たれに大根おろしを入れるように用意してくれるお店もあります。また、天ぷらを食べるときによく大根おろしが出て来ますが、口直しにもなり、消化を助けて胃がもたれないようにする意味があるのでしょう。
本草書に書かれていた効果
本朝食鑑 (東洋文庫)にはこのようなことが書かれていました。
4つの項目が出てきます。気味(寒温などの別や有毒・無毒の別)・主治(薬の効用)・発明(不明な点に対する解釈)・附方(処方の仕方)です。(出典)
[気味]根は辛甘、葉は辛苦。温。無毒。生薑は能く莱菔(だいこん)の毒を制する。大根葉を晒乾(さらしほ)すと甘温で、人の身体によい。
[主治]生食すれば、気を動かし噫(おくび)を発する。熟食すれば、気を下す。いずれの場合も、能く穀を消し、痰癖を除き、吐血・衄血(はなぢ)を止め、麪毒を制し、魚肉の毒・酒毒・豆腐の毒を解する。あるいは、煙に咽(むせ)んで死ぬほどの苦しみにある者がこれを生食すると、津(つば)が出てきて難を免れる。他は『本草綱目』に詳らかである。また[発明]をも併せ考えるとよい。私の考えでは、乾した葉や茎は能く湿を逐い、血を和し、小水を利す。水煎(ゆどおし)して洗ったものも佳い。
[発明]孫思邈(そんしばく)(『千金方』)は、「地黄(じおう)と一緒に食べてはいけない。毛髪が白くなる。気血のめぐりを渋滞させるためであろう」といい、李時珍(『本草綱目』)は、生食熟食による気の昇降が同じでなく、下気が気血のめぐりを渋滞させることを論じている。その限りでは、予(わたし)が今さら二番煎じをする必要はない。が、あえて論者の遺言(いいたりぬところ)を述べるならば、地黄は性が冷であって行(めぐ)りが遅く、莱菔は性が温であって行りが速い。
さらに、莱菔は地黄を引行することができないし、地黄も莱菔に随行することはできないのである。したがって、どうして同じく気血のめぐりの渋滞するという理があるであろうか。もしかりに、莱菔の気が猛くて昇降し、地黄の気を去って胃中に止めないため地黄の効は作用し得ないのだというならば、理に合っている。人の髪を白くするというのは、理に合致しない。
近世(ちかごろ)、六・八味の地黄丸を毎(つね)に服用する人、一日か毎日、あるいは一月か一年以上も服用する人が、莱菔を食べないのは、実(まこと)に拙(おろか)である。たとえ地黄一味を服用するとはいえ、穀食で隔てるならば、莱菔の気は地黄の気に当たり難(にく)く、穀食は胃に入って運行の気を添え、地黄の気を転じ去るから、どうして腹中に留まって莱菔の入ってくるのを待つようなことがありえようか。
かつ、六味は茯苓(ぶくりょう)・沢瀉(おもだか)および酒気があり、能く地黄を引導して運行するし、八味も熟附の峻速を添え、相引導して去る。これもやはり莱菔一物の猛をものの数ともしないのである。俗話に、四・五十歳になる人で、毎(つね)に地黄丸を服用していても鬚髪黒くなく、あるいは斑(まだら)であったり白かったりするのは、莱菔を禁じなかったからだというのを常に聞く。
しかし、これは実(まこと)に笑止なことである。惟(ただ)六味の壮水(精力増進か)だけを恃(たの)みとして、日夜交戦、陰血(熱血が耳目・口鼻から出るもの)漏下しては、単に鬢髪を悉く白くするだけではなく、竟(つい)に身命をも失うに至る。これはどうして咎を莱菔根に帰することができようか。噫(ああ)。
[附方]頭痛裂けるが如し。生大根の辣汁を用いる。頻りに鼻の竅(あな)に滴り入れると落ちつく。耳の中が俄(にわか)に痛む場合、一滴を耳の竅(あな)に入れると、やはり験(ききめ)がある。
熟食とは火を通して食べることです。麪毒(めんどく)とはむぎこの毒です。
東京の大根
江戸東京野菜 図鑑編(農文協 2009)を読むと東京の大根は3種類ありました。それぞれ特徴があります。八百屋さんによっては地元野菜を積極的に販売しているところもあります。近くで買えるといいですね。
亀戸大根
亀戸大根の祖先は江戸時代初期に砂村(現・江東区北砂、南砂)の開拓地に持ち込まれた関西系の四十日大根だといわれます。
小ぶりなこの大根は地大根と交雑を繰り返しながら、幕末の文久年間には砂村の北隣の亀戸で栽培されていた記録が残っています。
やがて江戸東京の名物野菜となり、亀戸近郊に産地が広がったのには理由(わけ)があります。当時、大根はおもに秋から冬に出回る野菜でした。
ところが東京湾に近い亀戸周辺は、練馬大根や大蔵大根の育つ内陸部より気温が高めだったことから、春先でも出荷が可能。
また、荒川流域の肥沃で適度に粘土質の土壌は、かぶのように緻密(ちみつ)やわらかいとんがり型の大根を育てました。そしてみずみずしい葉とともに浅漬けにされ、早春の食卓をにぎわせました。
亀戸はその後、鉄道の開通とともに工場が立ち並ぶ街となり、産地はさらに北上して荒川上流の葛飾区高砂へ。高砂では突然変異によって、白い茎の大根があらわれ、以来、地元の農家によって栽培が継続されています。
画像を探したのですが、JAの江戸東京野菜にありました。
練馬大根
子供の頃、数年江古田に住んでいたのですが、品種はともかく、たしかに大根畑が多かったことを覚えています。
五代将軍・徳川綱吉が栽培を命じたとされる練馬大根。『新編武蔵風土記稿』(文政11年 1828)には、「この辺より産する物を概して練馬大根と呼、人々賞美せり」とあります。
大根に適した土壌に加え、幕府御用達の市場では、上納大根は練馬産と指定されたことなども練馬大根が特産になっていった理由に挙げられます。
実際には練馬系と呼ばれる大根には数種あり、沢庵用の長尻大根と、煮色用の丸尻大根が代表的な品種です。
日露戦争後、保存食としての沢庵の需要が高まり、練馬大根は大量生産されるようになりました。しかし、長年にわたる連作で作柄が低下し、昭和8年(1933)のバイラス病の大発生以後、被害が続き、昭和27年頃には栽培が途絶えてしまいます。
その後、練馬区がJAあおばと協力し、平成元年(1989)から練馬大根育成事業に力を注ぎ、現在は区から委託を受けた農家が栽培した約1万数千本が、収穫体験や沢庵漬けに利用され、当地の冬を活気づけています。
画像はこちらにありましたよ。
大蔵大根
この大根は形が面白いです。多分1回買ったことがあったと思います・・・。
サラダの素材としてもすっかり定着した大根、数あるその品種の中で、大蔵大根は、煮物に最適と言われる世田谷区の地場野菜です。
江戸時代に豊多摩郡(現在の杉並区あたり)の源内という農民が作り出した「源内つまり大根」が原種と言われており、その名の通り、円筒形で尻(先端)が丸くつまっているのが特徴です。
それが世田谷区の大蔵原に伝わり、昭和28年(1953)に石井泰次郎氏が品種登録をしました。昭和40年代までは世田谷の至るところで栽培されていましたが、病気に強く栽培しやすい青首大根の普及に伴い、大蔵大根は次第に姿を消しました。
しかし、世田谷の古きよき野菜を見直そうという動きのなかで、平成8年(1996)に農業改良普及員と区内農家が試作をします。大蔵大根の特徴に近いもののなかから「七福」「永楽」の2種類を選抜しました。
平成9年には復活を果たし、今や世田谷ブランドの人気商品のひとつとなっています。
画像はこちらにありました。
大根の保存方法
まず、葉っぱがついていたら切り落とします。葉っぱをつけたままにしておくと、葉っぱに水分をとられて大根がすぐに柔らかくなってしまいます。
新・野菜の便利帳 健康編 (高橋書店 2016)によると、大根はラップで包み、切り口を上にして野菜室で保存します。寒い季節には、新聞紙で包んで風が直接当たらないところにおけば、一週間は保存できます。
まとめ
大根おろしは食事の脇役にしかなれませんが、調べてみると、意外とよいものだと分かります。毎日食べてもよいですね。
大根おろしの辛さが、からしやわさびと同じ成分だと知れば、辛いのが当たり前で、辛味が抜けてしまうとつまらなく感じてきます。
私は辛い大根おろしが好きです。あなたはいかがですか?