鉄分が不足する理由と鉄欠乏性貧血が起きるまで

この記事では、女性には鉄欠乏貧血にならないまでも鉄分が不足している人が多くいること。そして、鉄分が不足する理由と、鉄欠乏性貧血が起きるまでに3段階の経過をたどることについて説明します。

鉄分

鉄分不足の女性が多い

いまに始まったことではありませんが、女性は貧血の人が多く、貧血までいかないまでも鉄が不足する人がとても多いそうです。

鉄欠乏性貧血の治療指針にはこのように書かれていました。

貧血のない鉄欠乏状態が 41.4%

鉄欠乏性貧血は,貧血の中で最も頻度が高い疾患である.特に女性に多い.日本人女性 3,000例の調査(1891~1991 年)では,鉄欠乏性貧血が 8.5%,貧血のない鉄欠乏状態が 41.4% と報告されている.

したがって,日本人女性の半数が鉄欠乏状態で,約 500 万人が鉄欠乏性貧血ということになる.

鉄分が不足する理由

女性の場合、月経による失血が一番の原因で、鉄欠乏をきたしやすいのです。上で「日本人女性の半数が鉄欠乏状態で」と書かれていましたが、鉄欠乏性貧血までいかなくても鉄が欠乏している人は多いようです。

男性の場合、消化管出血がほとんどといわれていますが、スポーツ選手のように日常的に激しい運動をしている場合、スポーツ貧血になることがあります。

月経による失血が一番

鉄欠乏性貧血になる原因も、月経による失血が多いことが一番の原因となります。しかし、それ以外にも原因があります。鉄欠乏性貧血の治療指針からです。

女性では過多月経,子宮筋腫が圧倒的に多い.女性なら婦人科的検索は必須である.男性および閉経後の女性では,消化管出血がほとんどである.

特に高齢者では,鉄欠乏性貧血をきっかけとして胃癌や大腸癌が発見されることも珍しくない.

痔も非常に多い疾患だが,貧血の原因として見逃されていることが多い.虚血性心疾患や虚血性脳血管障害に対する血栓症予防として,少量のアスピリンやワルファリンカリウムがよく使用されているが,これらが誘因となり消化管出血を起こし結果的に鉄欠乏性貧血を呈する例もしばしば経験される.

男性の貧血は、消化管出血がほとんどと書かれていますが、以前、知り合った方(男性)が、自転車競技(ロードレース)に出るほど熱心な方だったのですが、走れば走るほど鉄分が足りなくなるといってました。スポーツ貧血もあるのです。

スポーツ貧血

スポーツ選手の貧血は、鉄欠乏性貧血と溶血性貧血の場合があります。

鉄欠乏性貧血になるのは、スポーツ選手は一般人に比べ大量に汗をかくことが多いからです。汗の中にも微量に鉄は含まれます。そのため、大量に発汗すると、失われる鉄も増えるのが理由です。

溶血性貧血とは、自分の赤血球を自分で踏み潰して壊してしまい、赤血球の中身のヘモグロビンが血液中に放出されてなる貧血です。マラソンはもちろん、素足で強く踏み込む剣道や空手でなることがあります。(出典

鉄欠乏性貧血の進行は3段階

イラストレイテッド ハーパー・生化学 原書29版では、鉄欠乏性貧血の進行は3段階あることが表とともに書かれていました。

イラストレイテッド ハーパー・生化学について
2017年の春にイラストレイテッド ハーパー・生化学原書29版を買ってそれ以来使っています。きっかけは、アセチルCoAからコレステロールが合成される図を見たからです。最新版は2016年刊行の30版です。出版社に敬意を表して先に最新版を表示し

文中、μg(マイクログラム)は1/100万グラム。1dL(デシリットル)は100mlのことです。

負の鉄バランス(貯蔵鉄欠乏)

初期段階。小腸からの鉄の取り込みが不十分なため、生体に必要な量をまかなえない状態です。その結果、体内の貯蔵鉄が使われ、貯蔵鉄の減少が進行します。

鉄欠乏性造血

貯蔵鉄が枯渇し、血清フェリチン濃度が15μg/dLを下回り、血中のトランスフェリン濃度が増加し、そのため総鉄結合能(TIBC)も増加します。しかし、トランスフェリンの飽和度は減少し、20%を下回ります。

鉄欠乏性貧血

鉄欠乏状態が改善されずにいると、血中のヘモグロビン濃度が徐々に減少し始め、最終段回の鉄欠乏性貧血に至ります。この段階は、小球性低色素性血球像によって特徴づけられます。典型的な患者は、疲れやすく、顔面が蒼白で運動能力が低下します。

鉄欠乏性貧血の判定に用いられる検査値の変化
検査項目正常値負の鉄バランス鉄欠乏性造血鉄欠乏性貧血
血清フェリチン(μg/dL)50~200減少<20減少<15減少<15
総鉄結合能(TIBC)(μg/dL)300~360わずかに増加>360増加>380増加>400
血清鉄(μg/dL)50~150正常減少<50減少<30
トランスフェリン飽和度(%)30~50正常減少<20減少<15
赤血球プロトポルフィリン(μg/dL)30~50正常増加増加
可溶性トランスフェリン受容体(μg/L)4~9増加増加増加
赤血球形態正常正常正常小球性,低色素性

また、鉄代謝と鉄欠乏性貧血―最近の知見―を読むと、日本での診断のことが書かれていました。

日本鉄バイオサイエンス学会は,鉄欠乏性貧血の診断基準として,ヘモグロビン12 g/dl以下,総鉄結合能360 μg/dl以上,血清フェリチン値12 ng/ml以下を挙げている.

ng(ナノグラム)は、1/10億グラムのことです。μg(マイクログラム)よりも1/1000小さくなります。

潜在的鉄欠乏と鉄欠乏性貧血
ヘモグロビン
g/dl
血清フェリチン
ng/ml
鉄欠乏性貧血<12<12
貧血のない鉄欠乏≧12<12
正常≧12≧12

まとめ

鉄分不足は、ずっといわれていることですが、日本人女性の約半数が鉄分が不足しているとは、少々驚きました。私はサプリメントが嫌いなので、鉄分の多い食べ物についてまた別記事を書きます。

貯蔵鉄なんて聞くと、どこに貯蔵されているのだろうと思います。また、検査項目にあることばについても調べてみます。

ミネラルについては、ミネラルについての記事一覧をご覧下さい。

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