ミネラルは英和辞典では一番に鉱物と出てきます。栄養の話では、酸素、炭素、水素、窒素以外のものの総称です。食品分析表では13種類出てきます。ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、リンは多量ミネラルと呼ばれ、鉄、亜鉛、銅、ヨウ素、セレン、クロム、モリブデンは、微量ミネラルと呼ばれます。不足しがちなミネラルがあるので、多く含まれる食品を知っておくのがよいです。
ミネラルとは何か?
英和辞典でミネラル(mineral)を引くと、まず、「鉱物」と出ていました。何となく金属を思い浮かべます。
改めて、厚生労働省のサイトで調べると、ミネラル(みねらる)に、このように書かれていました。
酸素、炭素、水素、窒素以外のものの総称
生体を構成する主要な4元素(酸素、炭素、水素、窒素)以外のものの総称。代表的なものはカルシウム、リン、カリウムなど。
食品分析表に出てくるミネラルは13種類
厚生労働省の健康増進法施行規則を読むと、栄養素としてミネラルは、下の表にある13種類が定められています。
多量ミネラルと微量ミネラルがある
ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、リンは多量ミネラルと呼ばれ、鉄、亜鉛、銅、ヨウ素、セレン、クロム、モリブデンは、微量ミネラルと呼ばれています。
ちがいは、この通り。
- 多量ミネラル:1日の目安量などが100mg以上のミネラル。
- 微量ミネラル:1日の目安量などが100mg未満のミネラル。
食品分析表を見ると、いつも同じ順番に書かれています。
全粒/ 国産/ 黄大豆/乾 | |
ナトリウム | 1mg |
カリウム | 1,900mg |
カルシウム | 180mg |
マグネシウム | 220mg |
リン | 490mg |
鉄 | 6.8mg |
亜鉛 | 3.1mg |
銅 | 1.07mg |
マンガン | 2.27mg |
ヨウ素 | 0 |
セレン | 5µg |
クロム | 3µg |
モリブデン | 350µg |
日本食品標準成分表2015年版(七訂) |
金属が多い印象がありますが、実際、金属が多いです。リン(P)、ヨウ素(I)、セレン(Se)以外は金属です。
ミネラルの働き
ミネラルの働きは多量ミネラルと微量ミネラルでだいぶ違います。
多量ミネラルは、ミネラル自体が役割を持ったり、骨の材料になります。
微量ミネラルは、鉄は赤血球の材料の一つになりますが、それ以外、体内の化学反応に使われる酵素の中に含まれていることが多いです。つまり、そのミネラル自体が、特別な働きをしているわけではありません。
ナトリウム(Na)とカリウム(K)は細胞内液・細胞外液にイオンとして存在
ナトリウムイオンは細胞の外、カリウムイオンは細胞の中に多く存在します。
中学生か高校生の頃、「ナトリウムポンプ」を教わりました。細胞の中から外へナトリウムイオンは汲み出されます。
ナトリウムは、細胞外液の主要な陽イオン(Na+)であり、細胞外液量を維持している。ナトリウムについてはこの記事に詳しく書きました。
カリウムは、細胞内液の主要な陽イオン(K+)です。また、酸・塩基平衡を維持する作用がある。神経や筋肉の興奮伝導にも関与しています。カリウムについてこの記事をご覧下さい。
カルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)、リン(P)は骨の材料
カルシウムは、体重の 1〜2% を占め、その 99% は骨及び歯に存在しています。カルシウムが骨や歯にあるのは、子供の頃からの常識ですね。
カルシウムについて詳しい記事は、カルシウムの1日の必要量と多く含まれる食品をお読み下さい。
マグネシウムは、骨や歯の形成に関わり、生体内には約 25 g のマグネシウムが存在し、その 50〜60% は骨に存在しています。マグネシウムは、トレーニングをしている人以外にはあまりなじみがないかもしれません。
マグネシウムについて詳しい記事は、マグネシウムの1日の必要量と多く含まれている食品に書きました。
リンは、成人の生体内に最大 850 g 存在し、その 85% が骨組織に、14% が軟組織や細胞膜に、1% が細胞外液に存在するとあります。リンが骨に関係しているのは知られていますが、少し影が薄いミネラルです。でも、本当はとても大切なミネラルです。
リンはカルシウムとバランスをとるために摂りすぎに気をつけるをお読み下さい。
鉄(Fe)は赤血球の材料になる
鉄は赤血球の中にあるヘムというたんぱく質に必ず含まれています。男性は鉄の補給を気にする人は、激しい運動をしている人以外あまりいないかもしれません。しかし、女性にとっては、切実な問題です。
鉄の1日の必要量と鉄分の多い食品についてを読んでいただくと、基本的なことがわかります。
また、鉄剤は2価の鉄(Fe2+)でなければ吸収できないと聞いたことがあります。なぜなのかなとずっと思っていました。それで、鉄がどのように吸収され、運ばれ、貯蔵されるまでを調べました。食べ物から鉄がどこで吸収されてどのように運ばれ貯蔵されるのか調べてみたを読んでみて下さい。
亜鉛(Zn)、銅(Cu)、マンガン(Mn)、セレン(Se)は酵素の中にある
亜鉛を含む酵素は、約300知られているそうです。亜鉛が欠乏するとそれらの酵素が働きにくくなってしまいます。亜鉛欠乏症は味覚障害と嗅覚障害から始まるそうです。亜鉛について、摂取量や多く含まれる食品については、亜鉛は不足しやすいミネラルなんだってをお読み下さい。
銅が含まれる酵素には、活性酸素種を消去し、コラーゲンを強固にし、メラニン色素をつくり、神経伝達物質をつくり、鉄の酸化に作用する酵素があります。銅が欠乏すると、これら酵素がうまく働かなくなります。銅の摂取量、銅が多く含まれる食品について銅は体内で働く酵素に存在するミネラルをお読み下さい。
マンガンは尿素を作ったり、活性酸素を分解し、アセトアルデヒドを作る酵素の中に含まれています。マンガンの摂取量、マンガンが多く含まれる食品についてマンガンは不足することがほとんどないミネラルをお読み下さい。
セレンは、活性酸素を分解する酵素、甲状腺ホルモンのヨウ素原子を外すことで甲状腺ホルモンを活性型に変換する酵素に含まれています。セレンの摂取量、セレンが多く含まれている食品について、セレンは欠乏を考えなくてよいミネラルをお読み下さい。
ヨウ素(I)は甲状腺ホルモンの材料
ヨウ素は、甲状腺に関係があることはよく知られています。甲状腺から分泌される甲状腺ホルモンに含まれています。ヨウ素の摂取量や多く含まれる食品については、ヨウ素は甲状腺ホルモンの中にあるをお読み下さい。
クロム(Cr)はインスリン受容体を活性化するクロモデュリンに含まれる
クロムは酵素ではなく、インスリン受容体を活性化するクロモデュリンというオリゴペプチドに含まれています。オリゴペプチドとは、2から20個のアミノ酸からなるペプチド鎖と呼ばれるものです。クロムの摂取量や多く含まれる食品についてはクロムは今後も必須栄養素であるかどうかわからないミネラルをお読み下さい。
モリブデン(Mo)は、酵素を補助する補酵素の中にある
モリブデンはいくつかの酵素の働きをビタミンのように助ける補酵素の中に入っています。モリブデン補欠因子と呼ばれます。モリブデンの摂取量や多く含まれる食品については、モリブデンは酵素を補助するモリブデン補欠因子に含まれているミネラルをお読み下さい。
不足しがちなのは、カリウム(K)、カルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)、鉄(Fe)
カリウムは野菜を食べていれば十分だと思っていたのです。欠乏することはありませんが、ナトリウムとバランスを取るために、もっと摂った方がよいです。上で紹介したカリウムについての記事に、どんな食品に多いのか書いてあります。海藻に多いです。
カルシウムが足りないとは私が子供の頃からよく聞きました。今でも変わらず、足りないようです。お金のかからないカルシウム源に卵の殻があります。キューピーも製品化しています。卵の殻からカルシウムを摂るという記事で書きました。
マグネシウムは骨に関係があるミネラルであることは知られていますが、どのくらい摂ったらよいのか、また、どんなものに含まれているのかあまり知られていないように思います。海藻に多いです。
鉄は女性に特に必要です。女性に貧血が多いといわれますが、貧血ではないものの、鉄欠乏状態の人が 41.4%なのだそうです。鉄分が不足する理由は、女性の場合は、月経による失血が一番の原因です。鉄分が不足する理由と鉄欠乏性貧血が起きるまでという記事に詳しく書きました。
摂りすぎないように気をつけるのは、ナトリウム(Na)、リン(P)、ヨウ素(I)
ナトリウムは、「摂りすぎない」ではなく、減らすことを求められています。塩は血圧に影響があり、腎臓病にも影響があります。日本人に昔胃がんが多かったのは、塩辛いものを摂りすぎているからといわれていましたが、昔も今も求められていることは変わりません。
日本人の食事摂取基準(2020年版)では、塩の1日の目標量を成人男性は、7.5g未満、成人女性では、6.5g未満にされました。私が若い頃は「1日10g以下にしましょう」といわれていたのを思い出します。
リンは、魚に含まれていて不足することはないミネラルです。食品添加物にリン酸塩があります。加工肉や練り物につかわれています。リン酸塩には使用量の表示義務がないため、摂りすぎになりやすい。摂りすぎると副甲状腺ホルモンが多く分泌され、骨からカルシウムが抜けていってしまいます。
ヨウ素は、もともと海藻を食べる日本人は、とてもたくさん摂っています。そのため、毎日どのくらい摂ると摂りすぎになるのかはっきりわかっていません。しかし、摂りすぎると、甲状腺にヨウ素が輸送されなくなり、長期化すると、ヨウ素欠乏症と同じ甲状腺機能が低下します。
NOTE
ミネラルの中で、ナトリウムとカリウムは細胞の内と外にイオンとして存在している。カルシウムは骨。鉄は赤血球。ヨウ素は甲状腺と関係があると知っていました。
何となく骨がカルシウムからできていることが頭にこびりついていて、特に微量ミネラルの働きがピンと来なかったのです。しかし、酵素や助酵素などに含まれていることを知ると、働きがわかってきます。もちろん、ミネラルが単独で働くわけではないのですけれども。