ヒトの体を構成するタンパク質の30%はコラーゲンです。加齢とともに肌や骨のコラーゲンが減るのは事実なのですが、化粧品やサプリメントで補充するのは無理があると思いませんか?
細胞膜について調べていた時に生命の内と外を読みました。新潮選書は個人的に当たり外れが結構あると思っているのですが、この本はとても面白いです。
内容が優しい本ではないですが、一般向けに書かれている本です。著者の永田和宏先生はウイキペディアに記事がありました。「コラーゲン生成に特異的な機能を持つ熱ショックタンパク”HSP47″を発見した」方だと書かれていました。
ヒトの身体を作っているタンパク質の30%はコラーゲン
コラーゲンというと肌、化粧品、コマーシャルが頭に浮かびます。少し前まで、コラーゲンなんて年寄りに近づきつつある私には関係がないことだと思っていました。
しかし、ビタミンCのことを調べていた時に、ビタミンCとコラーゲンの関係から、ヒトの体のタンパク質のうち30%がコラーゲンだと知りました。それ以後、大切なものなんだと思うようになりました。
そして、単純に量から考えて、化粧品やサプリメントや飲料でとても補充できないだろうなと思っています。当たり前なんですけど。
本には、まずこのように書かれています。
加齢とともにコラーゲンの量は減少する
コラーゲンは、私たち人間の身体を作っているタンパク質のなかでもっとも量の多いたんぱく質である。
ヒトの総タンパク質の実に3分の1がコラーゲンである。コラーゲンは現在までに29種類が知られているが(そのうち1種類は我々の研究室で初めて報告したもの)、もっとも量の多いものがⅠ型コラーゲンと呼ばれるものである。
Ⅰ型コラーゲンは骨や皮膚の主成分である。コラーゲンは骨代謝、特に骨粗鬆症にも深い関係をもっているが、ここでは皮膚だけについて説明しておこう。
皮膚は表皮と真皮に分けられるが、真皮は結合組織という組織からなり、結合組織の主成分としてⅠ型コラーゲンがある。
加齢とともにこのコラーゲンの量が減少したり、コラーゲン線維同士の架橋に変化が生じたりして、質、量とともに悪くなる。
肌の張りがなくなったり、皺の原因ともなる。これは正しい。
加齢とともにコラーゲンが減少したり、変化が生じて、肌に影響がある。では、コラーゲンを食べると効果があるのでしょうか?
コラーゲンを食べてもそのままコラーゲンにならない
ごはんを食べ過ぎると、脂肪に変わってお腹にたまります。ごはんは脂肪になるけど、タンパク質にはなりません。
タンパク質をつくるのは、タンパク質です。しかし、コラーゲンたっぷりのフカヒレや手羽先を食べても身体の中で、コラーゲンになるわけではありません。
消化されるからです。もしタンパク質がきちんと消化されてアミノ酸にならないと、「異物」と判断されて免疫反応が起きるかもしれません。もっとも、免疫反応は口から入ったものには多少、優しいらしいですが。
コラーゲンを摂ったら、コラーゲンとして組織に沈着するのか、という問題である。
答えは断じてノーである。コラーゲンを摂ったからと言って、それがそのままコラーゲンとして私たちの身体の一部になり、機能を発揮することはあり得ない。
コラーゲンに限らず、どのようなタンパク質であっても、食べ物として摂取したタンパク質が、そのまま機能することはあり得ない。
血中などに直接投与されたタンパク質が、短期間、血中などで機能を発揮する場合はある。たとえば糖尿病患者へのインスリン注射などがそれにあたる。
しかし、胃を通り、小腸で吸収されるタンパク質の場合は、まずアミノ酸にまで分解され、それを材料として、遺伝情報に従って、「新たに」タンパク質を作るのである。
コラーゲンのアミノ酸は偏っている
私がこの記事を書こうと思ったのは、コラーゲンを構成するアミノ酸が極めて偏っていることを知ったからです。
普通の食品で、コラーゲンが多いとされるものなら他のアミノ酸も入っているのでよいと思いますが、サプリメントでコラーゲンを摂ろうとしている方は気をつけた方がよいなと思いました。
私、たいていのサプリメントは生活に必要のない無駄なものだとしか思っていないのです。
コラーゲンから摂ったアミノ酸は、他のタンパク質を作るのにも当然使われるし、逆に他のタンパク質を摂取して分解したアミノ酸からも、コラーゲンは作られるのである。何も高い金を払って、コラーゲンだけを摂る必要はない。
もう少しだけ言っておくと、コラーゲンに含まれているアミノ酸は、とても偏っている。ヒトや動物、植物も含めて地球上の多くの生命は、20種類のアミノ酸を使ってタンパク質を作っている。
肉などを食すると、多くのアミノ酸が(もちろん種類によって偏りはあるとしても)含まれている。
ところが、コラーゲンの場合は、グリシンおよびプロリンというアミノ酸がそれぞれ約4分の1を占めている。この2種類のアミノ酸だけでほぼ半分。アミノ酸摂取という観点からは効率が悪いのである。
おまけにプロリンの約半分は水酸化という修飾を受けていて、再利用できないときている。まことに以てコストパフォーマンスの悪い食材と言わねばならないだろう。
プラセボ効果(偽薬効果)というのもあることだし、コラーゲンの効果を信じていて、軟骨を食い、あるいはサプリメントを飲んで、肌が若返ったように感じられればそれはそれで幸せなことなのかも知れない。
そう目くじらを立てることもなかろうと、いっぽうでは思いつつ、しかし、一般の人々の科学的知識の不完全さにつけ込むようにしてなされる広告に、いつも腹が立つ。
何より確信犯的に、一部科学的知識を持ちこみながら、なんら科学的根拠のない効果をもっともらしく見せようとする広告に、あるいはそれに間接的に関与している研究者に腹立たしい思いがするのである。
まとめ
昔、どこかのラーメン屋さんで、少し温度が下がると固まる鶏の骨でとったスープが出てきて驚いたことがあります。コラーゲンだと説明されました。
魚の煮こごりなどコラーゲンが多い食べものは案外と身近にあります。
美容のためにそのような食品を食べるのはよいことだと思いますが、アミノ酸のバランスのよいタンパク質を摂ることが一番大事なことのように思います。
コラーゲンが加工されてサプリメントのように姿が分からなくなったものには、注意を払った方がよいと思いますよ。