鶏胸肉はブライニングしないで塩を擦り込むとよい

鶏胸肉をパサパサさせないように、5~6%の塩水にしばらく浸けておく「ブライニング」という方法があります。しかし、実験した人によると、塩を振るだけで同じ効果が得られ、水道水を肉に吸わさないで済むというのです。

胸肉

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鶏胸肉はパサパサしやすい

昔は食べたいとあまり思わなかったのですが、皮をはいでしまえば脂肪が少ないので、鶏むね肉をよく買うようになりました。

鶏むね肉はパサパサしやすいので、5%くらいの塩水にしばらく漬けてから調理する、ブライニングをする人が多いようです。私も何回か、ジップロックのような袋に入れてやってみました。

ところが、ザ・フード・ラボ 料理は科学だを読むと、否定的なことが書かれていました。もちろん、代替案があります。それは塩を擦り込むことです。ブライニングすることとほとんど変わらないそうです。

ブライニングするより塩をすりこんだ方がよい

著者についてはあとでご紹介しましょう。まずは結論から書きます。

ブライニングするのと塩を擦り込むのと、どちらが望ましいのか。数値だけを見ればブライニングのように思える。水分の保持量で何%か勝っている。

だが、本当にそれは喜ばしいことなのか。何ですって?パサパサの豚肉、鶏肉、七面鳥はもうイヤだ?早くブライニング隊に入れてくれ?

いやいや、早まってはいけません。実はブライニングすると大切なものが犠牲になるのだ。

それも、味の面で。確かに肉はジューシーになったかもしれないが、思い出してほしい。その肉汁に含まれているのは、ただの水道水だ。

これが肉の風味に顕著な打撃を与える。一方の塩を擦り込む手法なら、その肉汁は正真正銘、肉自体から出てきた水分だ。

七面鳥からポークチョップまで、あらゆる肉で数えきれないほどこの実験を繰り返したが、いつも同じ結論に至った。

塩を擦り込んで寝かせる方が、あらゆる面でブライニングより優れている。

実は、塩水に浸けておくという方法を知った時に、少しだけ「?」な感じがしました。なぜ肉に水を吸わせるのだろうと思ったのです。もちろん、そんなことはすぐに忘れてしまいましたが。

著者について

この本の著者、J. Kenji López-Altさんは料理人であり、フードライターでもあります。ウイキペディアに記事がありましたので、リンクを貼っておきます。

自己紹介のページでこんなことが書かれています。

明るい未来の待つ大学教育の時を迎えると、ぼくはマサチューセッツ工科大学に進んだ。オタクがわんさか集まってヘルツだのバイトだのと語り合い、冬に履く靴は平均3分の2足(ぼくは平均を下げていた)という、あの科学の殿堂だ。

しばらくは順調だった。待ちに待ったオタク仲間だらけの世界で魅惑のサブカルチャーに浮かれそれまでにないほど多くを学んだ。

ところが、生物学研究所の実験があまりにスローなので、嫌気がさして逃走します。そして料理人としてモンゴル風グリル料理の店で働き始めます。

プロの厨房で包丁を手にしたとたん、ぼくに何かが舞いおりたのだ。もはや自分では自分の運命をどうすることもできず、あの日、あの滑稽な野球帽と、我こそは「円形グリルの騎士」だと宣伝する(本当の話だ)あのTシャツを初めて身につけたあの瞬間、ぼくは料理人となった。(中略)

もちろん、店でアルバイトしながらも学業を終え(どうにか建築で学位を取って卒業した)、その過程で正しい科学というものについて深く学び(科学そのものに対する興味を失ったことは一度もない。生物学の実務に興味が持てなかっただけだ)、その上で卒業してからボストンの有名シェフのところで働きはじめたわけだが、母にとっては料理人は料理人であり料理人でしかなかった。

つまり、この方は、科学的知識を持ったオタク的料理人なのです。

公式サイトがありました。

A grand tour of the science of cooking explored through popular American dishes, illustrated in full color.

肉をブライニングする

ブライニングは、briningと綴るようです。英和辞典で調べると、brineは、「~を(食)塩水につける」という意味です。また、brineingは「塩水づけ、立て塩」という意味があります。

肉をフライパンで焼くと表面がかたくなります。脂肪があれば噛んだ時に口の中に脂が広がり満足感がありますが、鶏むね肉のように脂肪がない肉は、パサパサしやすいものです。

噛んだ時にしっとりとさせるための技術としてブライニングがあります。これに著者は疑問を持つのです。

すべての肉は加熱すると乾燥してかたくなり、極めて高い温度に達する表層は特にそれが顕著だ。だが、それでも中まで火を通したい。

どうすれば表層を砂漠化させることなく中心部まで火を通せるのか。ブライニング隊に入ろう。赤身の肉(七面鳥、鶏胸肉、豚肉など)を塩水に浸けておくと、調理中も水分を保持できるようになるのだ。

もちろん目新しい話でも何でもない。スカンジナビア半島や中国には、何千年というブライニング賛美の歴史がある。

だけれど、本当にそんなにすごいのか。何かを犠牲にしていやしないか。美味しい話に飛びつく前に、いくつか素朴な疑問を整理しよう。

つまりはブライニングするとどうなるのか?どういう仕組みなのか?わざわざやるべきなのか?

ここから実験の記事になります。ちなみに、本よりもネットで公開されている記事の方がずっと詳しいです。記事のタイトルは、Turkey(七面鳥)ですが、後半、これから書くChicken Breast(鶏胸)の実験が出てきます。

The Food Lab: The Truth About Brining Turkey

ブライニングした鶏胸肉と塩を擦り込んだ鶏胸肉の水分保持率は変わらない

実験の4つの条件

まずはブライニングによって実際に何が起こるのかを見てみよう。

科学の出番だ。まずは、ほとんど同じ鶏胸肉を12枚用意する。うち3枚は普通に焼き、3枚は6%の塩水(水1リットルに対して「ダイヤモンドクリスタルコーシャソルト」なら約2/3カップ、食卓塩なら約1/3カップを溶かした)に一晩浸けてから焼く。

3枚は塩を擦り込んで一晩寝かせてから(この方法をドライブライニングと呼ぶこともある)、そして最後の3枚はただの水に一晩浸けておいてから焼く。

それぞれ各段階で重さをはかった(ということは、水分の損失量をはかったことになる)。

この12枚を同時に135℃のオーブンに入れ、中心温度が66℃に達するまで焼いた。以下がその結果である。

本にはグラフも出ていましたが、表だけ写します。それだけで十分分かります。加熱後の重量を見比べてください。

開始前の重量 寝かせたあと 加熱後
そのまま 100% 99.1% 82.9%
ブライニング 100% 111.6% 89.6%
100% 99.4% 88.6%
100% 103.2% 81.7%

塩に意味がある

このとおり、何もせずに焼いたものは17%の水分損失があったが、ブライニングしたものは10%に留まった。僅差の2位は塩を擦り込んだもので11%だ。

ただの水につけたものは、調理前に3%近く重量が増加していたが、その増えた水分は加熱ですべて帳消しになった。何もしなかった肉と何もかわらなかったのだ。

このデータからわかるのは、ブライニングという手法を使うにしても、単純に表面に塩を擦り込むにしても、塩は確かに何らかの形で水分保持に貢献しているということだ。

いったいどのような力があるというのだろう?

実は牛肉に塩をしてから焼くのと同じで、鍵はタンパク質の形にある。自然界の筋肉細胞は、タンパク質でできた細長い鞘にきっちり収まっている。隙間がほとんどないので、余分な水が入り込むことはできない。

ところが、ソーセージや塩漬け肉を作ったことがあればわかると思うが、塩は筋肉に多大な影響を及ぼす。塩溶液が筋束周囲の鞘を形成しているタンパク質を、みるみる変性させる(意味:ほぐす)のだ。

鞘が変性して弛緩すると、通常ではもう入らない水分を入れ込めるようになる。しかも、この変性タンパク質は加熱してもさほど収縮しないので、追い出される水分量もずっと少なくなる。

この部分を読みながら、浸透圧のことを思い出していたのですが、体液は6%の塩分よりずーっと薄いですから、6%の塩水に浸けると肉から水分が抜けてしまいそうです。

ここに書かれている通り、塩に意味があるのだと思います。

塩を振っておいてしばらく置いておけば、ブライニングしなくてもパサパサしない胸肉が食べられるようになります。

まとめ

ブライニングはほとんど手間がかからない方法ですが、こうして実験結果を知らされると、塩を振って置いておくのがいいんだなと思います。

きっと著者は、「水道水を吸わせる」ことを疑問に思ったのでしょう。しかし、水でなく、お酒なら独特の風味があり、よいかもしれませんね。

今度、酒と塩を使ってみます。何も使わないなら、塩だけにしようと思いました。

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