食物繊維の1日の摂取量である食事摂取基準では、成人男性は、1日20g以上。成人女子は、1日17g以上です。しかし、これはもともと毎日の食事の食物繊維量が少なすぎるので、実現可能な量を設定してあり、このくらい摂ってほしいという目標量です。1日25~29gの摂取量で生活習慣病対策として効果的だったという話があり、もっと摂ることを考えてよいですね。
食物繊維は生活習慣病の予防のために役に立つ
食物繊維は、昔は便秘解消に役にたつくらいにしか思っていなかったのですが、もっともっと体のためになるものでした。
日本人の食事摂取基準(2020年版)にはこのように説明されています。
生活習慣病の重症化予防と書かれていますが、それ以前に生活習慣病にならないためにも役に立つのは明らかです。
食物繊維が各種疾患及びその生体指標に及ぼす効果を検証した介入試験をまとめたメタ・アナリシスでは、体重、血中総コレステロール、LDL コレステロール、トリグリセライド、収縮期血圧、空腹時血糖で有意な改善が認められている。
また、こうした結果は、糖尿病患者を対象としたHbA1c の改善を指標とした介入試験のメタ・アナリシスでも同様であったことから、こうした指標の改善が関連する各種生活習慣病の重症化予防においては、食物繊維の積極的摂取が推奨される。
メタ・アナリシスは、いくつもの研究の成果を精査してより高い見地から分析することです。
トリグリセライドは、血液検査で調べる中性脂肪(TG)のことです。
だいたい健康診断で問題になりそうな症状に関係していることがわかりました。
どうも日本人は食物繊維量が少ないらしい
日本人の食事摂取基準(2020年版)1―4 炭水化物の中に食物繊維があります。読んでいくと日本人が食事で摂る食物繊維量が少なすぎてアメリカやカナダの基準に合わせることが難しく、実現可能な量に「落として」設定されたようです。
毎日の食事の食物繊維量が少なすぎるので、実現可能な量を設定したようだ
このように書かれています。
アメリカ・カナダの食事摂取基準では、これらの研究論文を中心にレビューを行い、14g/1,000kcal を目安量としている。(中略)
アメリカ・カナダの食事摂取基準では、上記の限界はあるものの、この基準を参考にすれば、成人では理想的には 24 g/日以上、できれば 14 g/1,000 kcal 以上を目標量とすべきであると考えられる。
しかしながら、平成 28 年国民健康・栄養調査に基づく日本人の食物繊維摂取量の中央値は、全ての年齢区分でこれらよりかなり少ない。そのために、これらの値を目標量として掲げてもその実施可能性は低いと言わざるを得ない。そこで、下記の方法で目標量を算定することとした。
1日の食事が2000kcalくらいですから、28gあってもよいということです。
日本人は実際のところ1日どのくらいの食物繊維を摂っているか?
上の引用した部分にあった平成 28 年国民健康・栄養調査に基づく日本人の食物繊維摂取量というのが表になっていました。摂取量だけを持って来ました。
中央値とは平均値のことかなと思ったのですが、違います。平均値と中央値の違いを読むとわかります。この場合は、極端な摂取量に引きずられない平均値だと思っておきましょう。
1日15gも摂っていないのですね。65歳以上の摂取量が少し多いのは食生活の違いでしょう。
性 別 | 男 性 | 女 性 |
年齢等 | 摂取量(中央値)1 | 摂取量(中央値)1 |
1~2(歳) | 6.62 | 6.63 |
3~5(歳) | 8.12 | 8.66 |
6~7(歳) | 10.44 | 11.03 |
8~9(歳) | 11.47 | 12.02 |
10~11(歳) | 12.87 | 12.24 |
12~14(歳) | 14.55 | 12.56 |
15~17(歳) | 13.11 | 10.21 |
18~29(歳) | 11.27 | 10.65 |
30~49(歳) | 12.16 | 11.57 |
50~64(歳) | 14.00 | 13.87 |
65~74(歳) | 15.76 | 15.86 |
75以上(歳) | 15.61 | 14.35 |
※1平成 28 年国民健康・栄養調査 |
食物繊維の1日の摂取量
日本人の食事摂取基準(2020年版)で設定された食物繊維の食事摂取基準は、以下の表です。目標量なので、それ以上摂って下さいということです。成人男子は、1日20g以上。成人女子は、1日17g以上です。
上で書いて来たように、日本人の実際の食物繊維摂取量が少ないので、現実と折り合いをつけて、このくらいは摂って下さいという目標量です。
性 別 | 男 性 | 女 性 |
年齢等 | 目標量 | 目標量 |
0~5(月) | ― | ― |
6~11(月) | ― | ― |
1~2(歳) | ― | ― |
3~5(歳) | 8以上 | 8以上 |
6~7(歳) | 10以上 | 10以上 |
8~9(歳) | 11以上 | 11以上 |
10~11(歳) | 13以上 | 13以上 |
12~14(歳) | 17以上 | 17以上 |
15~17(歳) | 19以上 | 18以上 |
18~29(歳) | 21以上 | 18以上 |
30~49(歳) | 21以上 | 18以上 |
50~64(歳) | 21以上 | 18以上 |
65~74(歳) | 20以上 | 17以上 |
75以上(歳) | 20以上 | 17以上 |
妊婦(付加量) | 18以上 | |
授乳婦(付加量) | 18以上 |
NOTE
生活習慣病の重症化予防のところにこのように書かれていました。1日25~29gの摂取量で効果的だったということです。
メタ・アナリシスでは、観察研究も含めて、25〜29g/日の摂取量で最も顕著な効果が観察されたと報告している。これは、現在の日本人成人の食物繊維摂取量に比べるとかなり多く、目標量よりも多い。したがって、少なくとも目標量を勧めるのが適当であると考えられる。
食物繊維の食事摂取基準にとらわれず、もっと摂ることを考えてよいですね。