デンプンの消化を理解するにはα-D-グルコースを知ること

デンプンは、グルコース(ブドウ糖)が多数つながったものですが、そのグルコースは、α-D-グルコースです。α-D-グルコースが、α-1,4結合、あるいはα-1,6結合したアミロースとアミロペクチンで構成されています。消化する時は、α-アミラーゼが、α-1,4結合を不規則に切断するところから始まり、最終的にD-グルコースとして吸収されます。α-アミラーゼは、もう一つのD-グルコース、β-D-グルコースが多数つながったものを切ることはできません。それらは食物繊維と呼ばれます。

デンプンの消化を理解するにはα-D-グルコースを知ること

デンプンはα-D-グルコースが、α-1,4結合、あるいはα-1,6結合したもので、ヒトの消化酵素アミラーゼは、そのα-1,4結合を切って短くします。最終的に、他の酵素にも切られ、グルコース(ブドウ糖)として吸収されます。

ここで知っておきたいのは、α-D-グルコースなのです。

私は文系なので、グルコースはブドウ糖なんだからそれでいいじゃないかと思ってしまいます。ところが、食物繊維を理解するには、少し面倒なのですが、α-D-グルコースのことを知った方が理解しやすいのです。

有機化学(第2版) (ベーシック薬学教科書シリーズ) にはこのように書かれています。ちなみにこの本は、文系の私にもやさしく解説してくれるよい本です。

デンプンはα-D-グルコースのα-1,4結合からなるアミロースと,α-1,6結合の枝分かれをもつアミロペクチンの重合体で,植物の貯蔵用の多糖である.

早速、構造式を調べました。

α-D-グルコースとβ-D-グルコースがあります。違いは、右の酸素(O)の下についているヒドロキシ基(-OH)の向きです。

  • α-D-グルコースではOHは下向き
  • β-D-グルコースではOHは横向き(教科書的には上向き)

なんだ、こんな「違い」くらい大したことはないだろうと、一昨日までの私は思っていたのですが、この違いが意外にも大きいのですよ。まぁ、下まで読んでみてください。

デンプンはアミロースとアミロペクチンからできている

デンプンは図にあるアミロースとアミロペクチンが組み合わさったものです。上の引用文では、重合と書かれています。1種またはそれ以上の低分子化合物が2個以上化学的に結合して分子量の大きな化合物をつくることと説明されています。(出典:重合

アミロースは、α-D-グルコースが、「1」と「4」と書かれたところ(ここには書かれていませんが炭素があります)で直線的に結合しています。

アミロペクチンは、α-D-グルコースが、「1」と「4」と書かれたところで直線的に結合する他に、「6」と書かれたところ(ここにも炭素があります)から分岐して「1」に結合しています。

これら、アミロースとアミロペクチンがたくさん集まってデンプンができています。

デンプンを消化するヒトの酵素はα-アミラーゼ

ご飯を長くかみ続けるとほのかに甘くなってきます。これは唾液に含まれるアミラーゼという消化酵素のおかげです。

アミラーゼ、正確にはα-アミラーゼ。デンプンのα-1,4-結合を不規則に切断し、多糖ないしマルトース、オリゴ糖を生み出す酵素である。とウイキペディアに書かれていました。

α-アミラーゼはα-1,4結合しか切断できない

α-アミラーゼは、でんぷんのα-1,4結合を不規則に切断するとあるので、切断されたものは細かいものから大きなものまでばらばらです。その中の細かいものが甘く感じるのです。

ところで、このα-アミラーゼは、α-1,4結合しか切断できません。ほかのもの、例えばアミロペクチンにあるα-1,6結合は切断できないのです。

アミラーゼ

しかし、何しろデンプンを消化するには、最初にα-アミラーゼで切り始めなければグルコース(ブドウ糖)に向かって小さくなって行かないのです。

β-D-グルコースはβ-1,4結合してセルロースになるが、α-アミラーゼでは分解できない

ところで、これまでα-D-グルコースのことを書いて来ましたが、もう一つ、β-D-グルコースがありました。

β-D-グルコースは同じように、1,4結合しないのだろうかと思いますね。もちろん、1,4結合するのです。この場合、β-1,4結合といいます。

セルロース

β-D-グルコースがβ-1,4結合して、直線的につながっているのはセルロースと呼ばれます。セルロースは、繊維質などといわれますが、ヒトは消化できません。

つまり、α-アミラーゼで結合部分を切断できないのです。

同じグルコース(ブドウ糖)がつながったものなのに、1本のヒドロキシ基(-OH)のちょっとした向きの違いで大違いなのです。

ヒトが消化できないセルロースは、食物繊維と呼ばれます。

結晶中はα-D-グルコースなんだけど、水に溶けるとβ-D-グルコースが多くなる

セルロースの話を知ると、では、ブドウ糖としてα-D-グルコースの方が一般的なのかと思いますが、(面白いことに)そうではないのです。

有機化学(第2版)からです。

結晶中のD-グルコースはほとんどがα-アノマーとして存在している.一方,水溶液中ではヘミアセタールの環が開いた鎖状構造を経てα-アノマーとβ-アノマーのあいだで相互変換し,α-アノマーとβアノマーの比が36:64の平衡状態にある.

少しわかりにくいところがありますが、つまり、こういうことです。

デンプンなどの結晶中では一般的に、α-D-グルコースがつながっていることがほとんどである。しかし、グルコース単体として水溶液にある時は、環が開いた鎖状構造から、α-D-グルコースとβ-D-グルコースを行き来して、最終的に、α-D-グルコースとβ-D-グルコースの比は、36:64になる。

鎖状構造はもちろん真ん中です。左右の環状の構造式では、炭素(C)と水素(H)が省略されています。

D-グルコース

一般的にグルコースで出てくる構造式は、β-D-グルコースが多いですね。

α-デンプンはα-D-グルコースやα-アミラーゼの「α」とは関係ない

ところで、登山が好きな方は、昔から水を注ぐだけでもどして食べられるアルファ米があることはご存知だと思います。今は非常食として、いろんな種類があるんですね。

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このアルファ米の「アルファ」は、α-デンプンがその由来になっていると思います。

天然のデンプン粒は微結晶構造の部分があり、特有のX線回折図形(A、B、C形に分類される)を示す。デンプン粒に水を加えて加熱すると糊化(こか)し、粒が壊れるとともに微結晶構造も壊れる。オランダのカッツJ. R. Katzは、糊化したデンプンをα‐デンプン、もとのデンプンをβ(ベータ)‐デンプンとよんだ。(出典:α‐デンプン

ご飯を炊いたら糊のようなデンプン、α-デンプンになるということです。これは、上で説明してきたα-1,4結合とは全く別の話なので、区別してください。

NOTE

この記事では説明しなかったのですが、α-D-グルコースの「D」って何だろうと思われた方もいるでしょう。また、「α」と「β」の位置の違いはなぜ生じるのか?これも疑問です。

ブドウ糖の構造式の種類とDとL、αとβの区別についてで詳しく説明しています。よかったら読んでみてください。

ブドウ糖の構造式の種類とDとL、αとβの区別について
グルコース(ブドウ糖)は、複数のヒドロキシ基(OH)とアルデヒド基(CHO)を持っています。アルデヒド基から一番離れた不斉炭素についているヒドロキシ基(OH)が右に結合していたらD-グルコースです。天然物はD-グルコースが多いです。また、ア...
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