ビタミンEには抗酸化作用がある

この記事では、ビタミンEについて、どのようなものなのか。ビタミンEの作用、欠乏するとどうなるのか。ビタミンEの効果、1日の摂取量、ビタミンEが多い食品、そして発見の歴史について調べました。

茶

ビタミンEとは

ビタミン E には、4 種のトコフェロールがあります。α(アルファ)、β(ベータ)、γ(ガンマ)、δ(デルタ)。文科省の食品データベースでも表示されます。

しかし、血液と組織中に存在するビタミンEの大部分がα-トコフェロールです。日本人の食事摂取基準(2015年版)では、α-トコフェロールだけをビタミンEの指標にしています。

α-トコフェロール

α-トコフェロール

ビタミンEの作用

ビタミンEの特徴は

  • 酸化を防ぐ抗酸化物質である。
  • 細胞膜の脂質の中と、血液中でコレステロールや中性脂肪を運ぶリポタンパクの中にある。
  • 抗酸化力はビタミンCと一緒に発揮される。

ビタミンEの作用について図解入門よくわかる栄養学の基本としくみに書かれていました。

図解入門よくわかる栄養学の基本としくみ
ビタミンについて簡単にまとめて話してくれといわれた時に使った『図解入門よくわかる栄養学の基本としくみ』をご紹介します。むずかし過ぎず、かんたん過ぎない。やたらと構造式が出てこない本です。

ビタミンEは細胞にとって脂溶性の抗酸化物質として最も重要です。とくに細胞膜の脂質中に存在して、膜を構成する脂質(不飽和リン脂質など)を活性酸素などのフリーラジカルから守る役割を果たしています。

鉄が酸素によって錆(さ)びるように、細胞も酸化によって痛んできます。酸素は体内のエネルギー産生に欠かせないものですが、同時に細胞などを傷めるフリーラジカルを産生します。

老化、関節炎、ガン、白内障、糖尿病、アルツハイマー病などには、このような酸化ストレスが関係しているといわれています。これを食い止めるのが、ビタミンEなどの抗酸化物質なのです。

また、ビタミンEは細胞膜のほか、血中でコレステロールや中性脂肪を運ぶリポタンパクの中にも存在して、動脈硬化の原因と考えられる脂肪の酸化を防ぎます。

この抗酸化作用は、ビタミンCなどと関連して起こるので、他のビタミンと一緒に摂ることが必要です。

化粧品のビタミンE

化粧品に入っているビタミンEは日焼けのシミ対策ですね。紫外線が当たると皮膚が酸化されます。酸化されないようにするのです。

紫外線によっても酸化ストレスを生じ、皮膚の老化を起こします。これは、肌のいつも日に当たっているところと、衣服に隠れているところを比べてみるとよくわかります。

日に当たっているところは、肌が荒れていてシミも増えています。そこで、化粧品にはビタミンEが配合されています。

ビタミンEは皮膚から浸透することもできるので、直接皮膚に作用して、シミが起こらないようにします。

欠乏するとどうなるか?

毎日の食生活では、何らかの形でビタミンEを含む植物油が入って来ます。そのため、通常の食品からの摂取において、ビタミンE欠乏症はないそうです。

日本人の食事摂取基準(2015年版)には、動物におけるビタミンE欠乏実験では、不妊以外に、脳軟化症、肝臓壊死、腎障害、溶血性貧血、筋ジストロフィーなどの症状を呈すると書かれていました。

これらの症状は、食餌をコントロールして、わざわざビタミンEを欠乏させて発現させています。

ビタミンEをたくさん摂れば、不妊や脳軟化症や肝臓壊死などに効果があるというわけではありません。お間違いなく。

ビタミンEの効果

ビタミンEの効果では、勧められた1日の摂取量を超えた量を摂っていて特有の効果が得られるのかどうか調べました。過剰摂取と関係があります。よく数値を見比べてくださいね。

  • 心臓疾患、動脈硬化など、血管の疾患について予防と治療効果があるようです。

以下長いですが、ゆっくり読んでください。

心血管疾患に対して

ポーリング博士のビタミンC健康法 (平凡社ライブラリー)では、心血管疾患に対してのビタミンEの効果がかなり長く書かれていました。

ポーリング博士のビタミンC健康法
ポーリング博士のビタミンC健康法は、お気楽なタイトルとは反対に大真面目に読まないとなかなか理解できない内容の深い本でした。古本屋でもあまり見かけないので図書館で探すとよいでしょう。

ウィルフリド・E・シュートとハロルド・J・タウブ共著の『病める心臓と健全な心臓のためのビタミンE』(一九六九年)、および、エヴァン・シュートと共同研究者たちの共著による『心臓とビタミンE』(一九五六年、一九六九年)である。

二冊の本で論じられている疾患は、冠状及び虚血性の心臓疾患と、それに伴う狭心症、リューマチ熱、急性および慢性のリューマチ性心臓疾患、高血圧、先天性心臓疾患、末梢血管疾患、動脈硬化症、バーガー病、静脈瘤、血栓静脈炎、動脈血栓症、無痛性潰瘍、糖尿病、腎疾患、火傷などである。

彼らは、ビタミンEを一日五〇~二五〇〇単位投与すると、これらすべての疾患の治療に効果がある、と信じている。

ビタミンEは経口投与されるが、軟膏(三パーセントのビタミンEを含むワセリン)も、火傷、潰瘍、ある種の痛みなどに使用される。

ビタミンEの単位とは、国際単位(IU)のことです。ミリグラムとの換算は、1IU=1mgです。(出典

上で出てきた投与量は、50~2500mgということになりますね。

ウィルフリド・E・シュート氏は、綴りを調べるとWilfred E. Shuteと書きます。残念ながら日本語訳の本はでていませんでした。

冠状動脈閉塞に対して

さらに冠状動脈閉塞の患者さんの話が続きます。

別の患者は、一九五一年に五八歳で、後部梗塞を伴う冠状動脈閉塞だった。ある病院に二週間入院したが、仕事ができるほどよくならなかった。

六ヵ月後、ウィルフリド・シュートに診てもらい、一日八〇〇単位のビタミンEが投与された。一〇週間で症状がなくなり、再び働けるようになった。

冠動脈は、心臓の上に冠のように乗っている血管(動脈)で、心臓を取り囲むようにして走行しています。(出典)冠状動脈閉塞とは、これが詰まってしまったのです。

それから半年後、800単位、つまり1日800mgのビタミンEを飲むようになり、10週間、2ヶ月程度で改善されたようです。

一七年後に心房細動の発作を起こしたが、すぐに酸素吸入で抑えられた。一九六八年現在、彼は健康で七六歳になった。

同書には、このような症例が数多く載っている。それらは確かな証拠にはならないが、ウィルフリド・シュートとエヴァン・シュートが、ビタミンEをこの世で最も重要な物質だ、と信じていたことは確かである。

この方は、一度発作を起こしたものの、本が書かれた時点でご存命でした。

末梢閉塞性動脈疾患に対して

次に、たくさんの人数の末梢閉塞性動脈疾患の患者に対してビタミンEを投与した話も出てきました。

スウェーデンのマルモ病院外科、クヌート・ヘーヤー博士の研究で、末梢閉塞性動脈疾患の患者二二七人についての報告である。

患者のうち一〇四人(平均年齢六〇・〇歳)は、一日三〇〇~六〇〇単位のビタミンEを与えられて他の治療は受けず、残りの一二三人(平均年齢五九・四歳)は、血管拡張剤、抗プロトロンビン剤、総合ビタミン剤のいずれかを与えられた。

末梢閉塞性動脈疾患とは、足の動脈が狭くなったり詰まったりして血液の流れが悪くなり、足にさまざまな症状を引き起こす病気です。(出典

与えられたビタミンEは1日あたり300~600mgになります。

与えられた薬のうち、抗プロトロンビン剤は、血栓を作らせない、血液を固まらせないための薬です。いわゆる血液サラサラのための薬です。

その後どうなったか。

後者の三種の治療を受けた患者の間には、有意の差がなかった。二~七年の観察後、ビタミンE患者とその他の患者との間に、いくつかの点において差が現れた。

研究期間中に死亡した患者は、ビタミンEグループが九人、他のグループが一九人だった(八・七パーセント対一五・四パーセント)。

生存者のうち、脚を切断しなければならなかった患者は、ビタミンEグループが九五人中一人、他のグループが一〇四人中一四人だった(一・〇五パーセント対一〇・五八パーセントで、統計学的に一パーセントのレベルで有意)。

それぞれ飲み続けていて、脚を切断しなければならなくなった患者の人数にずいぶん差があるように感じます。

末梢性あるいは閉塞性の動脈疾患患者は、ある程度の距離を歩くと、筋肉への酸素の供給が足りなくなって、ふくらはぎが激しく痛みだす。

その距離を五〇パーセント延ばした者は、ビタミンE患者の七五パーセントに対して他の患者では二〇パーセントだった ー 二倍以上に延ばした者は、ビタミンE患者で三八パーセント、他の患者ではわずか四パーセントだった。自覚症状の改善も、ビタミンE患者のほうがより著しかった。

ほかに、多くの研究がこれと同様な結果を出している。ボイドとマークスの報告(一九六三年)は、アテローム性動脈硬化症の患者一四七六人を対象に、一〇年間ビタミンE療法を施したものである。

それらの患者の一〇年生存率は、ビタミンEを与えない類似の研究のどれよりも高かった。

アテローム性動脈硬化症とは、日本医師会のサイトによると、動脈の内膜にコレステロールなどの脂肪からなるドロドロした粥状物質がたまってアテローム(粥状硬化巣)ができ、次第に肥厚することで動脈の内腔が狭くなることをいいます。(出典

アテローム性動脈硬化症患者の10年生存率とは、簡単にいえば、血栓や心筋梗塞など血管が傷ついたことが原因の病気で死去しなかったということです。

最後に、ポーリング博士は、このように結論づけています。

これまで述べた証拠と、シュートら以外の有能な医師たちが行った医学文献の報告から、私の得た結論は、心臓疾患や糖尿病とともにしばしば起きる末梢動脈疾患の抑制に、ビタミンEが大きな効果をもち、また血栓(血栓塞栓症や血栓静脈炎)の予防と治療に効果があるのは確かだということである。

過剰摂取するとどうなるか

日本人の食事摂取基準(2015年版)には、これまで、α-トコフェロールを低出生体重児に補充投与した場合、出血傾向が上昇することが一部示されていたという記録しかないようです。

ほとんど心配がないと考えてよいと思います。

1日の摂取量

日本人の食事摂取基準(2015年版)から調べました。成人男性は目安量が1日6.5mg、成人女性は目安量が6.0mgです。

ビタミン E の食事摂取基準(mg/日)1出典
性 別男 性女 性
年齢等目安量耐容上限量目安量耐容上限量
0~ 5(月)3.03.0
6~11(月)4.04.0
1~ 2(歳)3.51503.5150
3~ 5(歳)4.52004.5200
6~ 7(歳)5.03005.0300
8~ 9(歳)5.53505.5350
10~11(歳)5.54505.5450
12~14(歳)7.56506.0600
15~17(歳)7.57506.0650
18~29(歳)6.58006.0650
30~49(歳)6.59006.0700
50~69(歳)6.58506.0700
70 以上(歳)6.57506.0650
妊婦6.5
授乳婦7.0
1α-トコフェロールについて算定した。α-トコフェロール以外のビ
タミン E は含んでいない。

耐容上限量は、毎日摂取しても害がない上限量という意味です。耐容上限量の設定方法は次のように決められたようです。

ビタミン E の耐容上限量を設定する場合、出血作用に関するデータが重要となる。

これまでα-トコフェロールを低出生体重児に補充投与した場合、出血傾向が上昇することが一部示されているが、健康な成人男性(平均体重 62.2 kg)においては 800 mg/日のα-トコフェロールを 28 日間摂取しても、非摂取群に比べて血小板凝集能やその他の臨床的指標に有意な差は見られなかったとの
報告がある。

このことから、健康な成人のα-トコフェロールの健康障害非発現量は、現在のところ 800 mg/日と考えられる。

ビタミン E に対する最低健康障害発現量は現在のところ存在しないことから、不確実性因子を 1 として、小児を含め、800 mg/日と参照体重を用いて体重比から性別及び年齢階級ごとに耐容上限量を算出した。

これを読むと過剰摂取の心配がほとんどないとわかりますね。1日800mgなら毎日飲み続けても健康に害はないだろうと考えられています。

では、一般的な食品にはどのくらいビタミンEが含まれているのでしょう。

ビタミンEを多く含む食品

一見して、植物油にたくさん含まれていることがわかります。しかし、せん茶が一番多いとは知りませんでした。

この中で現実的に100g食べる食品は、アーモンド、あん肝、まつ(実)、すじこ、青汁くらいです。

α-トコフェロール : 含有量(出典)
食品名成分量
100gあたりmg
せん茶64.9
ひまわり油38.7
アーモンド/乾30.3
とうがらし/果実乾29.8
綿実油28.3
抹茶28.1
ぶどう油27.5
サフラワー油27.1
米ぬか油25.5
菊のり25.0
とうもろこし油17.1
玉露16.4
なたね油15.2
あんこう/きも生13.8
まつ/生10.8
しろさけ/すじこ10.6
大豆油10.4
米ぬか10.4
紅茶9.8
青汁/ケール9.4

以前、お茶を食べると栄養価の高い野菜だってという記事を書きました。

お茶の出がらしを食べると栄養価の高い野菜だって
お茶の出がらしを食べるなんて話を知ってびっくりしました。栄養成分を調べてみると、緑茶は栄養価がとても高く、ビタミンAとなるβカロテン、ビタミンE(α-トコフェロール)、ビタミンK、葉酸、ビタミンCが多く、ミネラルも豊富です。また、緑茶の茶葉...

お茶を飲むだけでは、脂溶性のビタミンEはほとんど摂れないのではないかと思います。しかし、この記事で、お茶の出がらしを食べるレシピを紹介しましたが、出がらしを食べるとよいと思います。

ビタミンE発見の歴史

ビタミンE発見の歴史について栄養学を拓いた巨人たちにはこのように書かれていました。

栄養学を拓いた巨人たち
栄養学を拓いた巨人たちを読むと、ビタミン研究は、今では考えられないことに、死に至る病だった欠乏症を解決するために進んだことがわかります。

米国カリフォルニア大学のエバンスは1923年、ラットの飼育実験により「繁殖因子」ともいうべき新しい物質の存在を発見した。

この因子の欠乏は、成体のラットの健康には影響しない。だが、雌のラットに不妊または死産を起こす。胎児が吸収されることもある。

また、雌雄ともこの因子の欠乏により成長が阻害され、筋肉や中枢神経の障害が起こった。

これらの症状の軽減には、麦芽油などの植物油が効果的であった。だが多くの研究者がこの実験を追試しても、容易にこの結果は再現できなかった。

そのため、エバンスを信用できないという者もあった。この理由はのちに、この因子は熱には強いが、紫外線や酸化物によって容易に分解し、消失するためであることがわかった。

この原因は、栄養学の歴史によると、油が急速に酸敗し、作られた酸化産物がビタミンEを分解したためだと書かれていました。

多くの疑問を呈されながらもエバンスはこの因子の純粋化に努力し、1936年、ついにこれに成功した。

その構造決定はいくつかの研究室により共同でおこなわれ、「トコフェロール」であることがわかり、「ビタミンE」と命名された。

 

まとめ

ビタミンEは植物油にたくさん含まれています。しかし、いまどきはリノール酸がどのくらい入っているのか気になるのと、何しろ油は1gあたり9kcaもあるのでたくさん摂っていると確実に太ります。

もし、日常的に余分にビタミンEを摂るとしたらサプリメントに頼ることになると思います。しかし、私はサプリメントが好きではないです。ほとんど信用していないのです。

もしお使いになる場合は、原料に何を使ってどんな方法で製造されているのか。品質をご自分でよく調べて、納得できるものを探してくださいね。

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