お茶の出がらしを食べるなんて話を知ってびっくりしました。栄養成分を調べてみると、緑茶は栄養価がとても高く、ビタミンAとなるβカロテン、ビタミンE(α-トコフェロール)、ビタミンK、葉酸、ビタミンCが多く、ミネラルも豊富です。また、緑茶の茶葉の重量比10~18%がカテキンです。紅茶は、緑茶と比べるとビタミンの量がだいぶ少なくなります。出がらしを食べる時、私は少し絞ってから熱い味噌汁を注いでもらいます。
非常食の中に煎茶を一袋入れておくとよいかもしれません。
お茶の出がらしを食べる
川島四郎先生と漫画家のサトウサンペイさんの対談、続々 食べ物さん、ありがとうを読んでいてぶったまげてしまいました。
いつでも手元に置いておけるとっておきの青い野菜は煎茶
その部分を抜き出します。
先生 サンペイさん、いつでも手元に置いておける、とっておきの青い野菜、お教えしましょうか。
サンペイ 野菜は生鮮食品でしょ。そんな便利なものがあるんですか。
先生 あります。煎茶です。煎茶の葉を食べ物としてみると、青い野菜のトップグループに入ります。A、Bをはじめとするビタミン類、ミネラル、そして葉緑素がたくさん含まれています。
サンペイ そういえば、先生はぬれたお茶のでがらしを生で食べる、とおっしゃいましたね。
先生 そうです。上等のお茶っ葉ほど栄養が豊富なので、私は、お茶だけは、ぜいたくをしています。少々値が張っても、おいしいお茶を飲んで、ついでに青い野菜の補給もできますから、結果的には安上がりです。
サンペイ そのまま召し上がるんですか。
先生 おろしショウガと醤油を少しつけて食べます。オツなものですよ。以前、冒険家の植村直己さんが、北極を犬ゾリで横断なさったとき、私は、玉露をもっていってもらいました。植村さんは、冒険に出るときは、いつも紅茶を持っていく、とおっしゃっていました。でも、紅茶にはほとんど栄養がありません。同じ持っていくなら、ビタミンや栄養素がたっぷり入っている玉露の方が、植村さんの体のためにいい、と差し上げたのです。それにしても、アラスカでの遭難は残念でした。
サンペイ 本当に惜しいことをしましたねえ。
お茶にビタミンが多いとかミネラルが多いのは、細かくは分からないけれど、感覚的に分かります。しかし、私ならお湯を沸かしてお茶をいれて飲んで終わりです。
出がらしをその後に食べる。しかも、おろしショウガと醤油を少しつけて食べるなんてことはどうやっても考えつきません。
植村直己さんに玉露を渡す話が出て来ますが、これを非常食だと考えると、玉露一袋は、栄養豊富な緑の乾燥野菜だと考えればよいのですね。
早速、お茶の葉っぱの栄養成分を調べてみましょう。
緑茶と紅茶の茶葉に含まれる栄養成分を比較する
お茶の茶葉の栄養成分を表にしました。紅茶は栄養がないと書かれていましたが、そんなことはありませんでした。結構、栄養成分が豊富です。
しかし、紅茶はビタミンAとEが少なく、Cがありません。お茶の中では煎茶が一番栄養成分が豊富です。
まず、表をご覧下さい。どう感じますか?
最初に書いておきますが、これは茶葉なので乾燥物です。
玉露/茶 | 抹茶 | せん茶/茶 | 紅茶/茶 | |
エネルギー | 329kcal | 324kcal | 331kcal | 311kcal |
水分 | 3.1g | 5.0g | 2.8g | 6.2g |
たんぱく質 | 29.1g | 29.6g | 24.5g | 20.3g |
脂質 | 4.1g | 5.3g | 4.7g | 2.5g |
炭水化物 | 43.9g | 39.5g | 47.7g | 51.7g |
灰分 | 6.3g | 7.4g | 5.0g | 5.4g |
ナトリウム | 11mg | 6mg | 3mg | 3mg |
カリウム | 2800mg | 2700mg | 2200mg | 2000mg |
カルシウム | 390mg | 420mg | 450mg | 470mg |
マグネシウム | 210mg | 230mg | 200mg | 220mg |
リン | 410mg | 350mg | 290mg | 320mg |
鉄 | 10mg | 17mg | 20mg | 17mg |
亜鉛 | 4.3mg | 6.3mg | 3.2mg | 4.0mg |
銅 | 0.84mg | 0.6mg | 1.3mg | 2.1mg |
マンガン | 71mg | – | 55mg | 21mg |
ヨウ素 | – | – | 4µg | 6µg |
セレン | – | – | 3µg | 8µg |
クロム | – | – | 8µg | 18µg |
モリブデン | – | – | 1µg | 2µg |
レチノール | ‘(0) | ‘(0) | ‘(0) | ‘(0) |
αーカロテン | – | – | – | – |
βーカロテン | – | – | – | – |
βークリプトキサンチン | – | – | – | – |
βーカロテン当量 | 21000µg | 29000µg | 13000µg | 900µg |
レチノール活性当量 | 1800µg | 2400µg | 1100µg | 75µg |
ビタミンD | ‘(0) | ‘(0) | ‘(0) | ‘(0) |
αートコフェロール | 16.4mg | 28.1mg | 64.9mg | 9.8mg |
βートコフェロール | 0.1mg | 0 | 6.2mg | 0 |
γートコフェロール | 1.5mg | 0 | 7.5mg | 1.6mg |
δートコフェロール | 0 | 0 | 0 | 0 |
ビタミンK | 4000µg | 2900µg | 1400µg | 1500µg |
ビタミンB1 | 0.30mg | 0.60mg | 0.36mg | 0.10mg |
ビタミンB2 | 1.16mg | 1.35mg | 1.43mg | 0.80mg |
ナイアシン | 6.0mg | 4.0mg | 4.1mg | 10.0mg |
ナイアシン当量 | 10.9mg | 12.0mg | 8.2mg | 13.4mg |
ビタミンB6 | 0.69mg | 0.96mg | 0.46mg | 0.28mg |
ビタミンB12 | ‘(0) | ‘(0) | ‘(0) | ‘(0) |
葉酸 | 1000µg | 1200µg | 1300µg | 210µg |
パントテン酸 | 4.1mg | 3.7mg | 3.1mg | 2.0mg |
ビオチン | – | – | 51.6µg | 31.9µg |
ビタミンC | 110mg | 60mg | 260mg | 0 |
水溶性食物繊維 | 5.0g | 6.6g | 3.0g | 4.4g |
不溶性食物繊維 | 38.9g | 31.9g | 43.5g | 33.7g |
食物繊維総量 | 43.9g | 38.5g | 46.5g | 38.1g |
※日本食品標準成分表2015年版(七訂) |
緑茶紅茶とも炭水化物が多いが、ほぼ食物繊維である
たんぱく質、脂質、炭水化物の3大栄養素の中では、炭水化物が多いです。しかし、それぞれ一番下の食物繊維総量を見てください。炭水化物は、ほぼ、消化できない食物繊維であることがわかります。
食物繊維はとても大切です。いくつか記事を書いていますので、食物繊維の記事一覧をご覧下さい。
カリウム、カルシウムが多い
カリウム、カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛、銅が多いです。
紅茶は緑茶よりビタミンが少ない
緑茶は、ビタミンAとなるβカロテン、ビタミンE(α-トコフェロール)、ビタミンK、葉酸、ビタミンCがとても多いです。
紅茶と緑茶の違いは、紅茶にはビタミンCがまったくないことと、βカロテン、ビタミンE、B1、葉酸とも紅茶の方がかなり数値が落ちます。
お茶をそのまま食べたらかたくて苦いだけですが、おいしくお茶を飲んで、お湯でふやけた葉っぱを少し味つけして食べたらどんな感じなのでしょうね。
急須に一回入れる茶葉の量は、伊藤園の煎茶のいれ方によると4gだそうです。お茶を飲んだ後茶葉まで食べれば、上の表にある数値の1/25の栄養成分がとれます。大航海時代、ビタミンCが欠乏して乗組員が壊血病になって命を落とす有名な話がありますが、もし緑茶を携行していればそんなことは起きませんでしたね。
数年前に話題になったカテキンも入ってます。
煎茶と抹茶の違い
煎茶と抹茶を比べると、カリウム、βカロテン、ビタミンE、ビタミンB1、ビタミンCで数値が大きく違います。なぜこんなに違うのかなと思ったら、栽培方法とお茶にするときの製造工程が少し違っていました。
白瀧製茶さんのサイトに詳しく説明されていました。
抹茶は日光を遮って栽培
抹茶はお茶の葉を摘む前に藁や専用の黒いシートを約20日間被せて日光を遮る「覆下栽培」と呼ばれる栽培技術を用いてつくられます。
日光を遮るとお茶の葉に含まれる葉緑素が増えるため葉の緑が濃くなります。また渋みの元とされるカテキンの生成が抑えられるので、まろやかな風味のお茶ができます。
もちろん、煎茶は日光を当てて栽培されます。
抹茶はもまないで乾燥させて挽く
煎茶は急須で淹れて飲むようにつくるため成分が溶け出しやすいように揉みながら乾燥させてつくられます。煎茶をつくるときに出る粉を集めたものが粉茶になります。
抹茶はお湯に溶かして飲むようにつくるので、揉まずに乾燥させてつくり、石臼で細かくひいてつくられます。
カテキン
ポリフェノールの一種であるカテキンにはすぐれた抗酸化作用があり、発がんや転移の予防に有効なことが分かっています。
また、悪玉コレステロールを減らす、糖の吸収を穏やかにして血糖値の上昇を抑える、高血圧を予防・改善する、といった健康づくりに役立つ作用も。
日本の高齢者を対象にした調査から、緑茶を多く飲む人は認知機能低下のリスクが低くなるという結果が得られています。(出典)
緑茶の茶葉の重量比10~18%がカテキン
ところで、緑茶にどのくらいカテキンが含まれているんだろうと思って調べました。少し前の文献ですが、市販緑茶の個別カテキン類とカフェインの分析を読むと、緑茶の乾燥茶葉の重量比10~18%がカテキンであることがわかりました。ずいぶん多いですね。
ただし、ほうじ茶になると焙煎されるのでだいぶ減って、乾燥茶葉の重量比4%程度になります。
お茶のフルコース
お茶の科学 「色・香り・味」を生み出す茶葉のひみつを読んだら、お茶を3回楽しんで、残った出がらしを食べる方法が出ていました。
温度を変えてお茶を3回楽しんでから出がらしを食べる
まず、緑茶の茶葉10g(ティースプーン約5杯)を急須に入れます。これに冷蔵庫で冷やしておいた水を湯呑み茶碗1杯分(約100ml)入れ、待つこと15分。
その後、これを最後の一滴まで濾しとると水出しのお茶ができます。まず、この味をみてください。「飲む」ではなく、口に含んで舌に広げる感じです。「お茶をたしなむ」という味わい方です。(中略)
お茶を飲み慣れた方でも、「これは・・・・・!」とうならせることができます。甘みがあり、うま味が凝縮していて、100gで1000円ほどの煎茶でも、玉露のようなまろやかな味わいが楽しめるのです。
その冷えたお茶を楽しんだあとは、残った茶殻に40~50℃くらいのぬるま湯を、同じく湯呑み茶碗1杯分注ぎます。
ここで浸出する時間は1分。ぬるめのお茶ができます。最初の冷えたお茶とは違い、少し渋みも加わった爽やかな味を楽しめるはずです。
残った茶殻に、今度はさらに熱湯を湯呑み茶碗1杯分を注ぎ、1分で濾しわけてみてください。
熱湯で出したこのお茶は、少しの苦みが加わった、また違う味わいのお茶となります。
こうして3種類の淹れ方をしてみると、甘み(うま味)、渋み、苦みというお茶の3つの醍醐味を感じることができるのです。(中略)
さて、ここで終わりではありません。3回分を淹れたお茶の茶葉は捨ててはいけません。驚かれるかもしれませんが、この茶殻を食べてみてください。
まず、酢醤油を少し(好みの量)入れて食べてください。これは「茶殻のお浸し」です。次に、茶殻におかかやジャコ、ごまを入れて、さらに醤油を少し混ぜると、「茶殻のごま和え」となります。これは、お酒のつまみでもいけるおいしさです。
さらに残った茶殻に、今度は豆乳200mlとりんごジュース200mlを加えてミキサーにかけます。すると、「茶殻スムージー」の完成です。
冷蔵庫で冷やした水を使って水出しのお茶から始めるのが、珍しいです。しかもやってみたくなりますね。
お茶の出がらしを食べるレシピ
昔ならお茶の出がらしを食べている人を探してレシピを聞くのは大変な仕事でしたが、今はとても簡単に探せます。ネットのよいところです。
一番簡単なのは、川島先生のように出がらしに味をつけて食べてしまうことです。少し絞ればあとは味付けをすればよいので簡単です。
味噌汁を注ぐ前にお椀に出がらしを入れておく
この記事を書いて以来、出がらしを食べています。最近、とても安直な方法を考えました。出がらしの水を切ってとっておいて、食事の時に食べる味噌汁に入れてしまうのです。
しかし、鍋に入れるのは残ったときのことを考えると気が引けるので、出がらしを自分のお椀に入れ、そこに熱い味噌汁を注いでもらうのです。
これは抵抗がなくおいしくいただけます。味も微妙な苦みが加わりよい感じです。
紅茶は香料が加えられているとむずかしい
まだ、紅茶の出がらしを食べたことはありません。私、ほとんど紅茶を飲まないのです。紅茶は香料を加えているものがあり、出がらしになると香りは幾分減ると思いますが、残っていると少し食べにくいかもしれません。
自分でつくるお菓子に混ぜたり、洋風の料理に混ぜると逆に香りがあるのでおいしくいただけるかもしれません。
茶葉を挽いて粉にして
粉にするのは挽くことになりますが、私みたいなめんどくさがり向けにはミルサーがあります。ミルサーがあると、コーヒーも、ごまも、スパイスも何でも挽けます。
まとめ
お茶はお湯を注いで成分を抽出して飲むものと思っていると、そこからは何も発展しません。しかし、冒頭に書いたように、野菜の一つだと考えると、とても栄養価の高いものでした。
最近は、地震や台風の被害が大きいので非常食を用意しているご家庭も多いと思います。乾燥野菜もありますが、煎茶を一袋入れておくと安心できますね。
いきなり出がらしを食べろといわれると抵抗がありますが、普段から食べていれば、こんな味つけで食べられると練習にもなります。
そして、煎茶を丸ごと挽いてしまえば、出がらしを食べなくてもお茶を1杯飲むたびに常に栄養成分を補給していることになります。
サプリメントをわざわざ買うより、ミルを買って安い煎茶を粉にして飲んでいる方がずっとよいように思います。
ビタミンAについて1日の必要量などは、この記事をお読み下さい。

ビタミンKについて1日の必要量などは、この記事をお読み下さい。

葉酸について1日の必要量などは、この記事をお読み下さい。
