「丁先生、漢方って、おもしろいです。」は面白い

「丁先生、漢方って、おもしろいです。」はとても面白い本です。その中から3つ面白かった話を書きます。この本は健康を気にかける年代の方は、読んでみるとよいと思います。

漢方

丁先生、漢方って、おもしろいです。を読みました。

著者は、丁宗鐵(てい・むねてつ)先生とイラストレーターの南伸坊さんです。人名にウイキペディアのリンクを貼っておきました。1980年代、南伸坊さんはCMによく出てくる人でした。

丁宗鐵先生は、よくテレビに出演されている漢方の先生です。内容は、丁先生が生徒の南伸坊さんに漢方について教える本なのですが、タイトル通り、実に面白い。

丁先生の博学多識ぶりとお人柄がよくわかります。

どこを開いても面白い話の連続なのですが、特に面白かった話を3つ抜き書きしておきます。面白いなと思われたら、ぜひ、この本を読んでみてください。

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体を外敵から守るには風呂に入らない

子供の頃から清潔を保つことをしつけられてきた私たちには、「ええっ?」という話です。10年くらい前でしたっけ、抗菌グッズがとても流行ったのは。

きれいにしないこと。できないけど、面白い。

 そういえば先生、ホームレスの人、糖尿病にはなるが水虫はいないって話もありましたね。

 風呂に入らないから、皮膚が丈夫です。われわれの皮膚には皮脂腺というのがある。不飽和脂肪酸を出して、それで細菌感染を防いでいます。

よく免疫が大切といいますが、免疫というのは病原菌が体の中に入ってきてから。免疫系が働くというのは、複雑なシステムが連動する必要があってすごく体力を消耗します。

風邪を引いてウイルスが体の中に入る。熱が出てぐったりしてくる、頭痛がして、肩もこってくる。ですから、免疫系が動き出すってのは大変なことで、その前に防御しておいたほうが効率がいい。

皮膚と粘膜を丈夫にしておくことです。乾布摩擦がいいとか、いろいろ言いますが、一番いいのは風呂に入らない。

 えーっ!?そんなこといったってえ。そうはいかないでしょう。

 まァ、湯舟で温まる、はいい。ごしごし洗ったらダメです。皮膚の垢というのはすごく大事です。

人間の生体防御力を一〇〇とすると、そのうちの九五以上が皮膚と粘膜で体内の免疫系というのは五%以下ですよ。

 え?本当のことですか?

 ですから、やけどをして皮膚が広範囲に脱落すると、皮膚呼吸ができなくなるということもありますが、それよりそこからばい菌が入って敗血症になる。

体表の四〇%以上をやけどすると命が危険です。いかに皮膚が大事かということです。

免疫力を上げましょう。それにはお腹の健康が大切ですといわれます。その通りですが、免疫系が働き出すとは、風邪を引いた時のようなもので、熱が出たり体が消耗する。

それ以前に皮膚と粘膜で防御するのが大事で、そのためにはムダに垢を落としてきれいにしない・・・。

きっとできないけれど、石けんを使わないで風呂に入る人は結構いるみたいですね。

葛根湯はマクロファージを活発にする

私は風邪を引きそうな時に葛根湯を飲みます。

以前、薬局のご主人から教えてもらったのですが、葛根湯を飲むときは水で飲むのではなく、湯飲み茶碗に入れて、熱いお湯で(市販の)甘いしょうが湯と一緒に溶かして飲むのがよいそうです。

葛根湯は、葛(くず)の根(ね)が原料で、葛湯を飲むととろみがあって温まるから風邪によいのかなと思っていました。ところが・・・。

 でも先生、漢方には、その免疫力を強くする薬っていうのがあるわけですか?

 たくさんある。実際に動物実験でも人でも証明されています。たとえば、風邪に使うので一番有名な漢方薬は葛根湯(かっこんとう)ですね。

もちろん、葛根湯が抗体をつくるってんじゃないですよ。

マクロファージという免疫細胞がある。マクロファージは貪食細胞といって、異物を包み込んで食べてしまう免疫細胞です。

このマクロファージが、葛根湯を飲むとすぐ、一、二時間で活発になります。これがバカスカ、ウイルスを食べちゃうわけです。

初期にこのマクロファージに活躍してもらえば、あっさり治る。

どうも最近の風邪は高熱になるらしく、38.5℃くらい当たり前のように出ます。体にとって熱を出すことは大事だからしばらくそのままにして寝ていますが、だんだん体がくたびれてくるので風邪薬を飲みます。

そうすると、一時的に熱が下がって急に体が楽になります。効くなあと思いますが、本当は熱を下げない方がよいことはわかっています。

西洋医学の鎮痛解熱薬、というのは、たとえばアスピリンを風邪のときに飲みますと、風邪の熱は治まる。が、その間ウイルスはどんどん増える。

結果として免疫反応を遅らせているわけです。

西洋で強い薬が求められたわけ

西洋人は、強い薬がよい薬だと考えていて、これには理由がありました。単純に、東洋と西洋の人々の考え方の違いだろうと思ったのですが、先生の説明を読むと、それだけではすまない面白さがあります。

ヨーロッパは植物相が貧弱

地理的条件として、ヨーロッパは緯度が高いのですね。忘れていました。基本的に寒い。

一方、温暖で湿潤な気候に恵まれた地域には、いろいろな植物が育ちます。

アジアは薬になる材料には豊富に恵まれていたのですが、ヨーロッパは気候の関係で多種多様な植物に恵まれていなかったということのようです。

病気を治す薬は、西洋でもアジアでも基本的に毒を含むものです。

 (前略)アジアで手に入る植物には毒草が多い。アジアのほうがヨーロッパに比べて植物相がバラエティーに富んでいます。(中略)

なるべく毒のないもの、毒のないものでもさらに蒸したり炒めたりして毒性を減弱させて薬に使う、という習慣ができた。

ヨーロッパは植物相が貧弱ですから、植物も限られている。長い間いい薬草がなかったので強い薬を求めていた。確実に効く薬を求めていました。

ところが、大航海時代を境に、ヨーロッパでも世界中の植物が手に入るようになった。中にはすごく効くものがある。

アヘンやキニーネなどもそうですが、ヨーロッパにないものが入ってくるようになって、そういうものをどんどん取り入れて、より強いもの、より確実に効くもの、よりピュアなものが求められた。

となると次に求められるのは、成分を濃くする方法です。

ヨーロッパでは成分を濃縮する

 (前略)ヨーロッパでは薬はマテリアルだと、いうことですね。動物や鉱物も一部使っていますけれども、西洋でも薬はほとんど植物で、その植物の中から、有効成分エッセンスをなんとか抽き出そう、とする。

最初は水で抽出している、それからアルコール抽出という方法が出てくる。「何とかチンキ」というのはアルコール抽出のことです。アルコールに溶解したという意味。

アルコールはあとで蒸発させられるので濃縮できます。

バケツ一杯の生薬が一粒にできる。毒性も上がるけれども効き目も上がる。そういうことをやりだした。有効成分を純粋化する、精製できれば、今度は注射もできて、さらにダイレクトに効く、というふうに物質的に進歩した。

これが西洋の薬学の進歩です。

材料に恵まれている地域と恵まれていない地域の差を感じます。アルコールで抽出するのは、成分を濃くすることと、ひょっとすると保存性を上げるためという目的もあったかもしれませんね。材料が手に入りにくいわけですから。

一方、薬の材料に恵まれている東洋では、薬の効果をあげるために別な方法をとります。

東洋ではブレンドする

漢方薬も煎じるのは水(お湯)で成分を抽出することです。しかし、それ以上成分を濃くすることを求めないのは、毒に対しての考えの違いと、ひょっとすると、ヨーロッパと違って薬の材料が手に入りやすかったからかもしれません。

続きです。

しかし、東洋では薬はアモルファスで曖昧なものでいい。で、毒性がないほうがもっといい。といっても毒がなければ弱いし、天然物をそのまま使うと不安定です。ここで「ブレンドするといい」ということに気づきます。

ブレンド技術を発見したのは、中国の伝説によると、伊尹(いいん)という人、食事療法に通じた食医で、出汁(だし)をつくるのと同じ技術でブレンドしたのです。出汁っていうのも材料一種類だけじゃなく二種類、三種類とふやしていくと、深みがでておいしくなる。

ブレンドすると薬効が安定するばかりでなく副作用も打ち消し合って、場合によっては薬効が高まることもあるし、飲みやすくもなる。

これは東洋の特許のようなもんです。特許料は取っていませんけどね。このブレンドのときは風邪に効く、このブレンドのときは腹痛に効くというようにして、ブレンドにいろんな種類ができてきます。

牛乳は体によいのかよくないのか?

牛乳は小学校中学校の給食に必ず出てきていて、高校になると給食はなくなりますが、運動部の生徒は、ジュースを飲むなら牛乳を飲めといわれたものでした。

そして、牛乳をたくさん飲んでいた子供は、身長が高く体も大きくなった印象があります。私は牛乳は嫌いではないですが、たくさん飲みたいと思うほど好きでもなかったので身長は高くないです。

今でも牛乳を飲む習慣がないので詳しく知らないのですが、牛乳がからだによい/よくないについて、いろんな説があるようです。数年前から代替(ナッツなどの)ミルクがあることは知っていました。

先生も牛乳について話をされています。

 でもこれは、言い方に気をつけないといけない。酪農家を批判するとか誹謗中傷することになっちゃいけない。

しかもこれはまだ、科学的に証明されたわけじゃない。が、現象論的にはかなり疑ったほうがいいんじゃないか、ということなんです。

昭和四十年(一九六五)は日本のそれまでの病気とその後の病気が全く変わってくるターニングポイントです。

例えば乳がんというのは昔はそんなになかった。華岡青洲が乳がんの手術をしたという記述がありますから、当時から乳がんはあったけれども、きわめて珍しい不治の病でした。

今はすごいですよ、アメリカ人は女性の七~八人に一人は乳がんになる。日本人は十四人のうち一人ぐらいです。

これが昭和四十年頃を境にして増えているんです。日本ではいろんな病気が昭和四十年頃を境にして増えてるんです。

日本ではいろんな病気が昭和四十年を境に変わった。がんはそれまで胃がんが最も多かったんですが、乳がん、大腸がんが増えて胃がんが減ってきた。

一番食生活に関係があるのは胃腸の病気です。潰瘍性大腸炎や、やはり炎症性腸疾患であるクローン病、こういう病気も昭和四十年以前はほとんどなかった。

それが昭和四十年頃を境に激増します。日本人の体やDNAが突然変わるということはありませんから、生活習慣が変わったか、食べ物が変わったかです。

 それは我々には実感がありますね。一九六五年っていったら東京オリンピックの次の年ですよ、あのころ食生活だけでなく、いろんなものがガラッと変わりました。

 特に変わったのは食生活です、冷蔵庫が普及して冷たいものが自由に食べられるようになった。そうしてふんだんに乳製品が食べられるようになります。

それまで牛乳は牛乳屋さんに行かないと買えなかった。牛乳瓶が紙パックにかわって、大きなパックで冷蔵庫に保管できるようになった。

先生の見立てが正しいのか正しくないのかは分かりません。

ただ、このように感じている先生がいると知っておくのはよいことだと思います。お子さんが牛乳嫌いで飲まないで困っているというお母さんは、こんな話もあると思っていただいて、無理して飲まさなくてもよいのではないかと思います。

まとめ

この本は本当に面白いです。まえがきで南伸坊さんが、編集者が漢方の入門書のようなものをつくりたいと話を持って来たときの答えが書かれています。

「漢方についてのマジメな本は、たくさん出てます。私にはそういう本をつくる能力も興味もない。私にあるのは、わからずやの才能と、おもしろ好きの才能だけです」

それで、ちょうど、南伸坊さんのかかりつけの漢方のお医者さんが丁先生だったのです。博学多識の丁先生とおもしろ好きの南伸坊さんのコンビだからこんな面白い本になったのでしょう。

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