トウガラシはカレーの辛みをつけるスパイスです。その他に、食欲増進や新陳代謝をよくしたり、食塩の量を減らせる効果があります。そうそう、忘れるところでした。辛いものを食べると、テンションが高くなります。
子供の頃、辛いものを食べるとバカになるとか、物忘れがひどくなるとかさんざんおどかされたものです。
その反動なのでしょうか、大人になると辛さに対してチャレンジする人が多いのは?
トウガラシはメキシコから
丁宗鐵先生編著のスパイス百科 ~起源から効能、利用法まで~にはこのように書かれていました。
ヨーロッパが海洋進出に乗り出した1492年、コロンブスによる,いわゆる新大陸発見の”土産”として持ち帰られた植物の1つにチリ,すなわちトウガラシがあった.
日本には天文11(1542)年にポルトガルの宣教師がもたらしたものの,時期については天文21年の誤記とする説もある.
チリはその語から,国名としてのチリとの関連が強いと思われがちだが,そうではない.実際には,アステカ人の言語,ナワトル(Nahuatl)語でトウガラシを指すチリchilliに由来する語であり,メキシコ原産の果実を指す.
さらに効果についてはこのように書かれていました。トウガラシの主要成分は、辛味成分のカプサイシンが知られています。
胃の保護作用
カプサイシンはエタノールやインドメタシンによって誘発された胃粘膜傷害から胃を保護する作用がある.最近の研究では,カプサイシンが辛さ,つまり痛みを引き起こさせる仕組みは,知覚神経上にあるTRPV1(トリップV1)という受容体の刺激によることが明らかにされた.
カプサイシンは適量では刺激になる一方,大量では神経ペプチドの枯渇を来たしたり,神経毒性を示すこともまた明らかにされている.
抗菌作用
カプサイシンには溶血性連鎖球菌に対する抗菌作用があるとされる.
引赤作用
トウガラシには刺激作用があるが,この作用は皮膚に対しては引赤発泡作用をもたらすものである.この刺激の応用がかつてのリウマチのツボ刺激療法であったが,現在ではあまり使われない.
カプサイシンが脂質燃焼に寄与するとの報告は数多く見られ,減量目的で使用を勧める向きも多い.日本では当初,食用よりも血行促進による温感促進効果に用いたとされる記述もある.
本格的な記載が見られるのは『庖厨備用和名本草(1671)』で「番椒」の名で「宿食を消し,結気を解き,胃口を開き,邪気を退け,腥気諸毒を殺す」と記されるほか,『大和本草』にトウガラシ末を紙や布に広げてハップ剤を作り頭や腹などの痛むところに貼り,よく効くとする旨が書かれている.
辛みをつけ、食欲増進や新陳代謝をよくする
ハーブ&スパイス事典: 世界で使われる256種を読むと大体のことがわかります。
赤トウガラシの果実を乾燥させたもので、料理の味を濃くせずに辛みだけを足す場合に利用する。
また獣肉の臭みを消すためにも用いられる。カイエンは品種名ではなく、フランス領ギアナのカイエンヌという地名に由来した名前。
辛み成分カプサイシンを含み、食欲増進や消化不良に対する健胃薬になるほか、末梢血管の拡張作用もあるため新陳代謝をよくするともいわれている。
トウガラシは古くはヨーロッパで高価だった黒コショウの代用として普及したもので、コロンブスがスペインに持ち帰ったことが始まりといわれる。チリとも呼ばれている。
獣肉の臭みを消すと書かれていますが、辛いだけではなく、特有の香りがあります。辛さであまり目立たないですけれども。
トウガラシの減塩効果
スパイスなんでも小辞典を読みました。さすがブルーバックスは詳しいです。読んでいてなかなか楽しい本です。
塩分と高血圧の関係はずっと言われていて、減塩は私がものごころついた1960年代の終わりからずーっといわれています。きっともっと前からなのでしょう。
なんとなく覚えているのですが、1980年代は減塩して1日10gを目安にといわれていたものです。今はさらに、厳しくなっています。
日本人の食事摂取基準(2015年版)では食塩摂取の目標値が男性は8.0~8.5gに、女性は、7.0~7.5gに厳しく設定されていました。
しかし、あまり減塩してしまうと、料理が味気なくなります。私の実家も薄い味噌汁を飲んでいますが、薄すぎてあまりおいしくありません。
減塩するためには、うま味を効かせる、酸味を利用することはよく聞きます。この他にスパイスを使う方法があります。
トウガラシをかけると塩分を強く感じる?
辛いものを食べると塩分が少なくても満足できるというわけでなく、辛味の神経への刺激が塩分の摂取量に関係しているようなのです。
こんなことが書かれていました。
トウガラシの辛味成分カプサイシンをごくわずか(0.014%)添加したエサで育てたラット(A群)と、無添加のエサで育てたラット(B群)で、食塩水を飲む量を比較した報告があります。
それによると、A群のラットでは、食塩水を飲む量、すなわち食塩の摂取量がB群のラットよりも少なかったのです。
また、味を感じさせないためにカプサイシンを胃に直接投与した場合でも、食塩摂取量は低下しています。
このことから、カプサイシンによる食塩摂取量の低下には、味覚神経を介さない体内吸収後の作用もかかわっていることが考えられます。
食塩の刺激は、舌の味細胞を興奮させ、味覚神経を介して大脳に塩味の情報を送って塩味を感じるといわれています。このとき、いっしょに唐辛子などのスパイスを食べると、その辛味情報が味覚神経からの塩味情報を強くすると考えられています。
血圧が高くて減塩しなければいけない人は、ご参考まで。
青トウガラシも使ってみる
また、カレー大全 カレー伝道師の160話にはこんな話が書かれていました。効果については他の本とほぼ同じです。
ただ、青トウガラシの食べ方について書いてあるのがカレーの本らしいです。シシトウを買うとたまにとんでもなく辛いのが入っていることがありますが、青トウガラシを八百屋さんで買ったことはなかったです。
きれいな黄色のスパイスがターメリックならば、赤い色味は唐辛子である。もちろん、たいせつなのは色ではなく、辛みのほうだ。
唐辛子の辛さの素は、カプサイシン。カプサイシンには発汗、強心作用と新陳代謝を促す効果がある。
体温を上昇させるので冷え性にもよく、脂肪を燃焼させるはたらきもあるため、ダイエットにも有効だ。
そこで、最近ではカプサイシンを配合したダイエットサプリメントも数多く見受けられる。
加えて、唐辛子にはビタミンCも豊富。血管壁を保護し、抗酸化作用があるため、風邪予防や美肌に欠かせない栄養素の一つだ。
つまり、老化防止や体力維持にも強い味方である。ただし、体内で生成されないので、食べものから摂る必要がある。
まず丸ごと利用する方法がある。切らずに原形のまま、いわゆるタカノツメとして鍋に入れる。まちがって食べるととんでもないことになるので、ご注意を。
北インドでは生の青唐辛子をそのままポリポリとやる人も多い。南インドでは、唐辛子を塩入りのヨーグルトに漬け込み、天日でからからに乾燥させたカード・チリとよばれるものを箸休めにする。
どちらも唐辛子を丸ごと味わうのが、インド的だ。
それでも使いやすいのは、やはり粉末。インドでも丸ごとの唐辛子よりも、粉末のほうが一般的なスパイスだ。
さらに、唐辛子の種をすりつぶしたイエロー・チリ・パウダーなるスパイスもある。
ちなみに、赤く成熟する前の青唐辛子は、辛みとともに、ピーマンやししとうのようにほろ苦さや青い香りが珍重される。
テンションを高める
インドごはんではこのように紹介されています。料理を職業とする人の紹介文は面白いです。
「陽を浴び熟す元気の素」
たかのつめ、精悍な名前ですね。この辛さは直接的なものですよね、バーンと襲ってくるような、これはカプサイシンの辛さです。
唐辛子により分泌されるアドレナリンの量は人が激怒した時とほぼ同等なのだそうで、人を熱く興奮させテンションを高める魔法を秘めています。
脂肪を燃焼させる効果も有名ですが、燃焼時に奪われる気化熱で身体が冷えてしまうほど使うというのは考えもの。
夏の暑い日に熱帯の国を見習って唐辛子を上手く使って食欲を出す、気力が乏しい時に身体の奥から活を入れるかのごとく、元気を出すために適量を使う。
私はそんな使い方を提唱したいのです。インド料理以外でも、このスパイスは熱帯以外の土地でも根づくという性質上たくさんの品種となってたくさんの国々の料理をレベルアップしました。
食べた後、ゆったりと満足した気分になる
スパイス、爆薬、医薬品 – 世界史を変えた17の化学物質という少し変わった本にはこんなことが書かれていました。
我々は火のようなホットなものを食べた後、ゆったりと満足した気分になることがある。
これは恐らくエンドルフィンによるものだろう。痛みに対する自然な反応として、脳内に生ずる麻薬に似た物質のことである。
この現象は、辛い食べ物が癖になってしまう人々がいることを説明するかもしれない。
唐辛子が辛いほど、痛みが強いほど、分泌されるエンドルフィンの量は多く、最終的に脳の快感は強くなる。
からだは刺激を受けると正反対な働きをしてバランスを取ります。辛いカレーを食べたあとの満足感の中には、リラックスした気分も入っているのかもしれません。
注意する点
あまりに辛いものを食べると、翌日トイレでお尻が熱くて大変な思いをします。ハーブ&スパイス事典: 世界で使われる256種からです。だいたい予想できる内容です。
潰瘍、胃炎、腸炎、消化管の炎症、粘膜の炎症などの症状がある場合は使用を控える。
使いすぎない
昔、真っ赤な激辛ラーメンを食べて翌日、胃の調子が悪くなったことがあります。辛いものを大量に食べると、胃とお尻が大変です。
胃にはカプサイシンに反応する神経(カプサイシン感受性神経)があり、大量にカプサイシンを摂取すると、その神経が働かなくなってしまい、胃の粘膜保護がうまくいかなくなるのだそうです。スパイスなんでも小辞典からです。
スパイスとして通常の量のトウガラシを摂取するくらいなら、そのカプサイシンは胃の粘膜を保護する働きをします。
ところが、激辛料理などでトウガラシを大量に食べると、胃内のカプサイシン濃度が非常に高まり、カプサイシン感受性神経が麻痺して、しばらく働かなくなります。
すると、胃粘膜が損なわれやすくなります。つまり、辛いスパイスはほどほどにしないと、胃を痛めることになりかねません。
ほどほどなら辛いものは胃を守るために役に立つと覚えておきましょう。何ごともほどほどに・・・。
まとめ
カレーに使うトウガラシは、カイエンペパーと書かれますが、要はトウガラシの粉(パウダー)です。需要が多いですから乾物屋さんに行くと、たいてい安いのがあります。
私はたいていGABANのスパイスを買います。品質がよいからです。しかし、カイエンペパーは、乾物屋さんおすすめの安いのを買っています。
カレーの辛さはカイエンペパーで調整します。カレーな薬膳に書かれていて、いつも思い出すのですが、辛さと塩加減は拮抗します。辛さが立っている時は、塩を少しずつ足していくとちょうどよいところがあります。
私もどちらかというと辛いものが好きですが、辛さを自由に選べるカレー屋さんの常連の皆さんには、とうてい太刀打ちできません。チャレンジャーだなと思いながら見ています。
しかし、胃にはよくないようなので、ほどほどに辛さを楽しんで下さい。
スパイスカレーについては、スパイスカレーを自分でつくって食べようを読んでみて下さい。