カルダモンは肉を使ったカレーによく使います。かなり強い芳香があります。肉のにおいを消す効果がある他には、消化を促進し、口臭をとるのにも使われました。ノルウェーやスウェーデンではカルダモンをとてもたくさん使うそうです。
南西インド原産の古いスパイス
丁宗鐵先生編著のスパイス百科 ~起源から効能、利用法まで~にはこのように書かれていました。
カルダモンは日本薬局方に「ショウズク(小豆蔲)」として収載され,医薬品としても用いられるスパイスである.医薬品にもなる食用植物には,スパイスに分類されているものが多い.
実際に,生姜,ウコン類,唐辛子などがそれにあたる.
カルダモンと呼ばれるスパイスは,一般にショウズクの種子のことである.この植物は,南西インド原産で東南アジアを中心に広く栽培され,最も古いスパイスの一つとされる.
カルダモンと 呼ばれるスパイスには,ブラックカルダモン(=ネパールカルダモンなど)とグリーンカルダモンの2種類がある.
カレーを作る時に使うのは、一般にグリーンカルダモンです。さらに効果についてはこのように書かれていました。
胃腸薬の原料
我が国の薬局方における「ショウズク」の適用は芳香性健胃薬として胃腸薬などの原料とする.また,漢方処方用薬として,健胃消化薬とみなされる処方においてビャクズク(白豆蔲:A. kravanh)の代用とされる.
マウスや細胞レベルの研究においてカルダモンには,抗酸化活性,胃粘膜保護作用,抗炎症作用,血圧降下作用,抗痙攣作用,血小板凝集阻害作用,抗菌作用,抗腫瘍作用などさまざまな作用があることが報告されている.
これらすべての作用がカルダモンの精油で説明がつくものではないらしく,未知のポリフェノール類やフラボノイドが関連している可能性が示唆されている.
なお,ブラックカルダモンからは,カレー粉の主原料となるターメリックに含まれるジアリルヘプタノイド(クルクミン類)が含まれていることが報告された.
また,グリーンカルダモンからは,キャベツやケールにも含まれるフィトケミカルのインドール-3-カルビノール(indole-3-carbinol)や,ジインドリルメタン(diindolylmethane)が見いだされていて,発がん予防作用があるとして注目されている.
メタボリックシンドロームを誘発させたラットに2種のカルダモンを投与して効果を比較した研究報告によれば,グリーンカルダモン,ブラックカルダモンはいずれも体重増加や血圧を下げたり,脂質レベルを低下させたりするが,ブラックカルダモンのほうがグリーンカルダモンよりも有効性が高かったとされる.
消化促進剤
ハーブ&スパイス事典: 世界で使われる256種を読むと大体のことがわかります。
インドではキリスト誕生以前から珍重されているスパイスの一つ。「スパイスの王」といわれるペパーに次いで、カルダモンは「スパイスの女王」と呼ばれている。
おもにカレーパウダーやガラムマサラ、プディングやアイスクリームに使われ、アラブ諸国ではカルダモンコーヒーに。
スカンジナビア半島の諸国ではケーキやパンに使用。アーユルヴェーダでは最も安全な消化促進剤であり、脾臓の働きを活発化して、神経バランスの回復によいと考えられている。
消臭効果
世界一やさしい! 野菜薬膳食材事典にはこんな効果が書かれていました。
世界最古のスパイスで、「香りの王様」と呼ばれます。また砂漠の民、ベドウィンの人々はカルダモンコーヒーを楽しむ習慣があります。
カルダモンの精油成分は、胃腸のぜん動を促し、消化不良やおなかの張りを解消。消臭作用もあり、口臭を予防します。
さらに効果についてはこのように書かれていました。
胃腸にたまった余計な水分を除去する
胃腸にたまった余計な水分を除去する働きがあり、吐き気やおなかの張りを改善します。
スーッとする香りは、「気(き)」の巡りをよくして、胃のもたれやのどのつかえをとる効果もあります。
乳児が母乳を吐いてしまうときや妊婦のつわりにもよいでしょう。
口臭を清める
スパイス入門 (食品知識ミニブックスシリーズ)にはカルダモンについてより詳しく書かれていました。
紀元前四、五世紀頃のインドでは、カルダモンは泌尿器科系の病気を直し、脂肪をとる生薬とされた他、上流階級の人々は、カルダモンやクローブ(丁子ちょうじ)をビンロウジの葉に包んで食後に噛むと、だ液の分泌が良くなり消化吸収の助けになるとして用いていた。
さらに、口臭を清め、まわりの悪臭も消えうせると考えられ、噛んだ後はしばらく左横向きに寝て休息をとるのが良いとされていた。
今日でも、カルダモンやクローブ、コリアンダー、クミン、フェンネルの実をそのまま、食後に噛む習慣が残っている。
少し気の利いたカレー屋さんに行くと、レジのところにフェンネルなのかクミンなのかがスプーンを添えておいてあります。におい消しのためです。
スカンジナビアの人々はカルダモンが好き
ノルウェーやスウェーデンの人はカルダモンがとても好きなのだそうです。
スカンジナビア半島の人々はカルダモンを特に好み、クリスマスのシーズンになると、ノルウェーでは国中カルダモンの匂いが立ちこめるほどだ。
スウェーデンでは、シナモンよりカルダモンの方がより広く使われ、一人あたりの消費量はアメリカのそれに対比して五〇倍以上であるといわれる。
スカンジナビアでのカルダモン愛好の歴史は、バイキング時代(八~一一世紀)にまでさかのぼる。
バイキングは、ヨーロッパ沿岸を荒らし回っただけでなく、特にスウェーデンのバイキングは、東方ロシアにしばしば侵入し、ロシアのいくつかの河川を利用してコンスタンティノープル(現トルコのイスタンブール)を襲った。
この都の市場で初めてカルダモンを手に入れた彼らは、これを母国に持ち帰り、教えられたとおりスパイスとしての調理法を伝えた。
それが発端となってさらに用途が広がり、スカンジナビアは今日のようなカルダモンの大消費圏にいたったのである。
インド原産のカルダモンが、北欧で人気が出て大量消費されているとは、スパイスって魅力的なんだなと思います。
まとめ
初めてカルダモンを知ったのは、若い頃山小屋で働いていた時に、先輩がいれてくれたチャイ(インドのミルクティ)を飲んだときでした。彼はカルダモンが大好きで、たくさん使うのです。
一口すすると、思わず、なんだかトイレ洗剤のようなにおいがするといって、ひんしゅくを買ったものでした。独特の芳香があるのです。
その後、規則正しく週に2~3回食べていたお茶の水のエチオピアのカレーは、カルダモンとクローブが香るカレーでした。
今ではカルダモンは、うちの冷凍庫にいつも入っています。
スパイスカレーについては、スパイスカレーを自分でつくって食べようを読んでみて下さい。