ごまの効能を調べてみた

ごまの効用は、ゴマリグナンであるセサミンの老化防止がよく知られています。しかし、とんでもなく古い時代、神農本草経や神仙術の抱朴子からごまは実に効果的だと書かれていたんですね。

ごま

セサミンで老化防止

基本的なことをまず知りましょう。

からだにおいしい 野菜の便利帳 (便利帳シリーズ 高橋書店 2008) にはこのように書かれていました。

原産地は、アフリカのサバンナ地帯といわれています。日本には中国から伝わり、奈良時代には重要な農産物になっていました。

昔から「不老長寿の薬」とまでいわれていたごまは、栄養の宝庫。不飽和脂肪酸のリノール酸やオレイン酸、タンパク質、ビタミンE、B群、カルシウム、鉄などのミネラルを豊富に含んだ健康食品です。

なかでも注目されているのが、脂質に含まれるゴマリグナン。ここにもっとも多く含まれるセサミンには強い抗酸化作用があり、老化防止、肝機能の改善、悪玉コレステロールを低下させ動脈硬化を防ぐ、血圧を下げるなどの効果が期待できます。

しっかり吸収するために、すって食べるとよいでしょう。

これだけで終わらせてもよいのですが、せっかくですからもっと詳しく調べましょう。

本草書に書かれたゴマの効能

科学でひらくゴマの世界を読みました。

この本の一つの魅力は、大昔の本草書にどんなことが書かれていたか、調べられているところです。

本草書は大雑把にいうと、薬草辞典のようなものです。

太古の昔、百草を試みて薬効を確かめた伝説上の人物,”神農”様が本草学の開祖といわれているが,その内容を集大成した『神農本草経(しんのうほんぞうきょう)』を,500年頃に陶弘景(とうこうけい)が整理し,『神農本草経注』を著している。

この本はのちの本草学の原点となって,中国のみならず,韓国,日本へと伝えられている。

500年頃の本なんかあてにならないだろうと思う方もいらっしゃるかもしれませんが、この神農本草経も含めて、これから出てくる本草書はとても有名です。

アマゾンで調べてみると、昨年、神農本草経の植物という本が発刊されていました。それ以外にも神農本草経について解説本が結構あります。

私は古い時代から長く記録が残されているものは、効果があり信頼できるものだと思っています。

気力を増進させる

久しく服用すると転身不老となると書かれると、なんとも魅力的です。

この『神農本草経』に,「身体が悪くて虚弱な場合,胡麻は五臓を補い,気力を増進させ,肌肉を成長させ,髄脳(骨髄や脳髄)を充実させる。久しく服用すると軽身不老となる」と,ゴマの効用が明確に述べられている。

すなわち,ゴマは,内臓の機能や,病気や衰えた体を治すことができる。また,肝,心,脾,肺,腎の五臓の機能を補い,元気や体力を増し,肌を生き生きとさせ,さらに髄液や脳に作用をし,久しく服用すると身が軽くなり,老いを防止するという内容である。

この本草書ができたのは,学問らしきものがなかった時代である。

にもかかわらず,ゴマの効用は科学や医学が発達した今日にも十分通じるものであり,人類の体験と伝承が重要な役割を果たしていることがわかる。

本草学では薬草を上薬(上品)の予防薬,中薬(中品)の常備薬,下薬(下品)の治療薬に分けている。

この中でゴマは,もちろん,上薬に名をつらね,特に”巨勝”(黒ゴマ)という品種を勧めている。

白髪が黒くなる

抱朴子は、ウイキペディアによると、「とくに内篇は神仙術に関する諸説を集大成したもので、後世の道教に強い影響を及ぼした」とあります。

葛洪(かっこう)の『抱朴子(ほうぼくし)』(317年頃)には,炒って粉にしたゴマを白蜜で団子にし,1日3回服用し続けると,2年で白髪が黒くなり,5年で走っている馬に追いつくことができるということも書かれている。

神仙術とは仙人になる方法です。白蜜はどうもハチミツのことのようです。やってみますか?中華街で売っているお菓子の中にありそうですね。

抱朴子 内編 (東洋文庫)が日本語訳で書かれていて読みやすく、とても面白いです。

巻四「金丹」、巻十一「仙薬」に巨勝(黒ごま)が出てきますが、ただ、白蜜と団子にするレシピは出てきません。どうも、本草綱目に「抱朴子云・・・」とこのレシピが出てくるようです。

『飲膳正要(いんぜんせいよう)』(1330年)では,ゴマは神仙の食べ物で,これを食べるとすべての疾病を治し健康に長生きできると書かれている。

飲膳正要は、元代に成立した中国唯一の西域・モンゴル系の料理書といわれています。

李時珍(りじちん)の『本草綱目(ほんぞうこうもく)』(1596年)には『神農本草経』と同様の老化防止効果が強調されている。

特に『本草綱目』は,日本,朝鮮,ベトナムなどの食物草本にも影響を与えており,その中にゴマの効用は必ず書かれている。

本草綱目はウイキペディアによると中国の本草学史上において、分量がもっとも多く、内容がもっとも充実した薬学著作だと書かれていました。全52巻、収録薬種は1892種とか。

私も一時興味を持って、国会図書館に国訳本草綱目を読みに通ったことがありました。国訳本も10冊以上に分かれていました。

本朝食鑑での効用

江戸時代、元禄年間に発行された本朝食鑑という本草書があることがわかりました。口語訳本が、図書館にあったので借りて来て読むと実に面白いのです。

本朝食鑑 (東洋文庫)
本朝食鑑という本草書があることを知り、調べてみると、平凡社から漢文を口語に翻訳されたものが今でも買えることがわかりました。オンデマンドなので紙は高く、電子書籍なら半額以下で買えます。 いつもツイッターを見ているのですが、つい最近、本朝食鑑と

[気味]甘平。無毒。白胡麻は甘、微温、無毒。あるいは大寒であるともいう。また、白胡麻の生のものは性が寒で病を治し、炒(い)ったものは性が熱で病を発し、蒸したものは性が温で健康を補うともいう。必大(わたし)の考えでは、黒白ともに性は平であり、炒蒸すれば温となり、人体に有益なものである。

[主治]黒胡麻は腎に作用し、白胡麻は肺に作用する。倶に五臓を潤し、血脈(血管を血液がめぐること)をよくし、大腸・小腸の調子をととのえる。

[発明]近世では、滋陰(女性の精力を増強すること)・壮陽(男性の精力を増強すること)を貪(むさぼ)る者が、専ら巨勝を求めて常に服用している。但(ただ)これが陰を益するとのみ知って陽を補う面のあることを知らないのである。それでは早く命を失うことになる。

そればかりでなく、真の巨勝はどんなものかをも知らず、仍 (しきり)に黒胡麻の中に覓(もと)めているが、我が国に巨勝はないといって、はるばる中華の巨勝を覓(もと)め、たまたまそれを得ることがあっても、巨勝に類似した茺蔚子(めはじき)の横行を知らないで、妄(みだり)に蒸熟して調服しているとは、まことに憐むべきことである。

たとえ巨勝を知らないでも、黒胡麻を服用すればよいのではなかろうか。予(わたし)の厳父は毎(つね)に黒胡麻・胡桃肉(くるみ)・枸杞(くこ)葉・五加葉・山椒・白塩等を調整し、細末にして、飯の後で白湯に入れて服用し、これを朝夕の日課としていたが、老を終わるまで強健・無病であった。予(わたし)も、これを遺訓として、今日までずっと服用しているのである。

今の少子高齢化時代、人々に一番求められているのは健康を維持することですが、本朝食鑑が発行された元禄時代は、精力増進がどうやら一番の関心事だったとわかります。

ごまは栄養豊富

ごまの三大栄養素を見ると、この通り栄養豊富です。タンパク質は大豆(33.8g)ほどはありませんが、ほぼ20%を占めます。脂質が50%以上占めているのでカロリーも600kcal程度あります。

100gあたりの栄養成分
日本食品標準成分表2015年版(七訂)による
ごま/乾ごま/いりごま/むき
エネルギー578kcal599kcal603kcal
水分4.7g1.6g4.1g
たんぱく質19.8g20.3g19.3g
脂質51.9g54.2g54.9g
炭水化物18.4g18.5g18.8g
灰分5.2g5.4g2.9g

ごまは保存性もよいですから、携行する食べものとしてはかなり性能がよいですね。しかし、栄養豊富なごまというより次に紹介する機能性の方がいまはよく知られていますね。

抗酸化作用があるゴマリグナン

ゴマリグナンには、セサミン、セサモリン、セサミノールがあります。よくTVCMで流れているので、セサミンが一番知られています。

構造式を調べました。

 

ゴマリグナンの研究は日本から

科学でひらくゴマの世界にはこのように書かれています。

ゴマリグナンの健康増進研究は日本から

25年ほど前に、ゴマの中からセサミノールなど,4種の抗酸化リグナン(リグナンフェノール類)が見出され,3000年以上にわたる”ゴマは体にいい”という伝承に科学的メスが入った。

これをきっかけに栄養学の研究者によって,ゴマリグナンの生体内の作用について,基礎研究(モデル実験や動物実験)がスタートした。

そして,生活習慣病予防,すなわち活性酸素を抑え,体内の脂質の酸化を抑えることに関連する数々の成果が世界に向けて発信されていった。

この本は、2013年発行の本なので、1988年頃、ごまのセサミンなどが日本で発見されたということなのでしょう。確かに1990年頃、活性酸素がよく話題になっていた記憶があります。

最初の研究のことが書かれていました。この研究は、セサミンの研究ではありません。ゴマの効果を調べた研究です。

ゴマ添加食による老化の抑制

山下らは,老化促進マウス(毛が抜け,背中が曲がり,白内障が進むなど老化現象が早くから現れる)に20%ゴマを含む餌を与えて,老化防止にゴマが有効かどうかを7か月にわたり調べた。

すると,6か月後では,老化指標の目の充血(眼周囲炎)や毛のつや・硬さなどが,老化の進んだ普通食マウスに比べて,明らかに目の充血もなく,毛のつやも正常であった。

また,脱毛の程度にも差を認めている。

この研究で,ゴマに老化を防ぐ作用があることが明らかとなり,次々と基礎研究が発展した。

「20%ゴマを含む餌」とは総カロリーに対して20%という意味ではないかと思いますが、興味があるので、掲載誌を探してみます。

まとめ

ごまは調べるほど魅力的です。今はサプリメントが多いですが、有名なセサミンはごまの中の一つの成分です。

ごまは栄養豊富で、おいしくて保存性もよい食べものです。おはぎやおにぎり(いまはごま塩で握ったのはあまり見ないような気がします)に使われていたのは、昔の人の知恵なんだなと思います。

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