ごまの原産地はアフリカのサバンナ地帯です。そこからインド中国を経由して日本に伝わったのは3000年くらい前のこと。日本は年間15万トンも輸入する国ですが、国内生産は年間100トン程度。ごまは栽培に手間がかかるようです。
ごまを使っている国は、ちょっと考えただけでも、インド、中国、韓国、日本と浮かびます。ごまの原産地はインドなのかなと思っていました。
ごまの原産地はアフリカ
ゴマの来た道を読むと、ごまの原産地はアフリカなのです。
ゴマは熱帯アフリカのサバンナ植生のなかで生まれたという考えだ。この考えの最も大きな根拠は、このサバンナ植生地帯には、何といっても野生ゴマの種類が多く、しかもその変異性に富んでいることが挙げられる。
われわれが食べるゴマを栽培ゴマ、または栽培種と呼び、これは世界で一種のみであるのに対して、野生種には、三六種ほどあって、その大部分は熱帯アフリカのサバンナ植生地帯に生育分布している。
これらの野生種のなかには、形態的に栽培種と全く異なるものから、よく似たもの、さらに両者の間で交配のきくもの、つまり栽培ゴマの親戚のような野生ゴマまである。
このような事実が、ゴマのふるさとは、熱帯アフリカのサバンナ植生であるといわれるゆえんである。
栽培種は1種しかないこと。野生種がアフリカにだけ36種もあるというのがその証拠だというわけです。アフリカでは6000年以上前からゴマが栽培されていたのではないかと考えられています。
さらに科学でひらくゴマの世界を読むと、大まかに日本まで伝播してきた時期が分かります。
インドへは5000年前に
約5000年前、ヨーロッパ系アーリア人が侵入して築いたといわれるインダス文明が栄えたインダス河流域の大都市,モヘンジョダロやハラッパ(現パキスタン)の遺跡から,大量の炭化したゴマが出土している。
このことから,ゴマは,インダス文明の重要な作物であったことがうかがえる。
中国へも5000年前に
20世紀の積極的な遺跡発掘によって,長江流域や上海近郊の太湖南岸の良渚(りょうしょ)遺跡などから多数の炭化した黒ゴマが出土した。
これらの炭素年代測定により,約5000年前頃のものであることがわかった。良渚遺跡からはコメ以外にゴマ,ウリ,マメなど,サバンナ起源と考えられる作物も出土している。
胡麻(芝麻)は「胡の国,西域から来た麻ににた種(たね)」であり,胡麻のほかにも胡椒(コショウ),胡瓜(キュウリ),胡桃(クルミ),胡豆(エンドウ),胡葱(アサツキ)など,「胡」のつく食品が西アジアから中国へ入ってきたといわれている。
日本へは3000年前か?
縄文晩期(約3000年前)の遺跡(埼玉県さいたま市真福寺)から炭化ゴマが出土していて,かなり古いことがわかる。(中略)
日本の食文化史では,ゴマは仏教伝来(538年)とともに中国からもたらされている。確かに,そのときにも伝播しただろうが,縄文末期頃から各地で少しずつ栽培されていたので,大宝律令(701年)の租庸調の調税(副物)のひとつとなり,油火として貢納されていた。
ごまの生産
世界のゴマ栽培とその流通によるとこのように書かれていました。
インド、ミャンマー、中国、エチオピア、スーダンが主要生産国
ゴマの 5 大生産国は,インド,ミャンマー,中国,エチオピア,スーダンであり,この 5 か国で世界生産量 350 万トンの 2 / 3 を占めるが,アフリカ,アジア,中南米の非熱帯雨林エリアにおいて広く生産されている.
そのうち 3 分の 1 にあたる 120 万トン程度が貿易で流通している.10 年前まで世界一の輸出国だった中国は,今や 50 万トンを輸入する世界一の輸入国に転換している.100 万トン内外の貿易市場の中で突如50 万トンの輸入国が出現すること自体で需給バランスが揺らいでいる状況をご理解いただけると思う.
ごまのことを調べると、栄養豊富で保存性も高く健康にもよい作物だと分かります。しかし、世界生産量はとても少ないです。
一般社団法人日本植物油協会の植物油の道を見ると、ごまの年間世界生産量350万トンがいかに少ないのか分かると思います。
ごま栽培は収穫に手間がかかる
ごまは単純に炒るだけでも香ばしくおいしくなります。50%が脂質ですから大豆よりも油を搾るのには適しています。
なぜ大規模栽培されないのかなと思ったら、栽培が面倒だという問題があるようです。栽培後期に、ぱらぱら地面に落ちてしまうようです。
世界のゴマ栽培とその流通に書かれていました。
ゴマは収穫後畑で乾燥させたのち脱粒して出荷する.栽培後期から鞘が開裂して種子がこぼれやすくなるために機械化しにくいことから,刈取・乾燥・脱粒作業を人手で行わざるをえず,労働集約型の作物である.
生産量が少ないと、生産者は価格について主導権を持つことができません。
作物としての生産規模は350 万トンであるが,3 大穀物に比べると200 分の1 程度,油糧種子として比較しても大豆の70 分の1,ナタネの20 分の1 程度である.
小規模作物ゆえ価格決定プロセスも発達しておらず,シカゴ相場のような国際マーケットもなく,取引は基本的に相対で成立する.
このため,生産者,需要家ともにリスクヘッジの方法も限られており,価格は
需給動向や天候情報に敏感にしかも大きく変動する.
日本のごま輸入
ウイキペディアによると、日本で使用されるゴマは、その99.9%を輸入に頼っています。鹿児島県、茨城県、沖縄県などで生産されているものの、総生産量は100トンにも満たないそうです。
ごま輸入について、幸書房の最新油脂事情で紹介されています。2011年の記事なので、少し前の話になります。
年間15万トンを輸入
わが国の搾油ゴマはアフリカの5カ国(ナイジェリア、タンザニア、ブルキナファソ、ウガンダ、モザンビーク)からの輸入が大半を占めている。
つい数年前までは、わが国のゴマ輸入量15万トンはだんとつの世界一で、世界のゴマ市場における存在感は圧倒的だった。
ところが以前は輸出国だった中国(今でも黒ゴマは輸出)が数年前から輸入国に転換し、瞬く間にわが国を抜いて、年間30~40万トンのゴマを輸入するようになった。
この中国の大量輸入が世界のゴマ市場をタイトにし、ゴマ価格を押し上げることになった。
さらに、日本国内での需要についてこのように書かれていました。
国内のゴマ油需要は、業務用、家庭用、食品加工用にほぼ3分されている。業務用は主に天ぷら向けで、江戸前の天ぷらはゴマ油が中心になっている。
純正ゴマ油が中心だが、最近のデフレ環境で、大豆油やナタネ油を混ぜた調合ゴマ油が増加している。
家庭用のゴマ油は年間1万4,000トン、金額では 170億円とされている。ここでも圧倒的に純正ゴマ油が多いが、ここ1~2年は大手製油メーカーから調合ゴマ油の新製品が投入されたこともあり、低価格の調合ゴマ油の伸びが高くなっている。
まとめ
アフリカ原産のごまが東へ東へと伝播し、日本に来たのは3000年くらい前(もっと前と考える方もいらっしゃるようですが)だと考えられています。
日本で稲作が始まったのは弥生時代だと小学校か中学校で習った記憶があります。ごまが日本に入ってきて食べられるようになったのはもっと早いということなのでしょうか。
ごまは日本人に好まれていて、天ぷら油を始め、お菓子や料理にもかなり使われています。その割に生産量が需要の0.01%にも満たないのは、一番は価格だと思いますが、収穫に手間がかかることも原因なんでしょう。