魚柄仁之助さんの「うおつか流食べつくす!」は、昔の魚柄ファンにとってとても楽しめる内容です。中でも保温調理が一番興味深く、豚汁が5分の加熱で完成できるとか、鶏レバーを臭み抜きなしで調理するなど、新しい発見がありました。また、今までの習慣で時間をかけて煮込んでしまうと、味を落として栄養も壊してしまうことが改めてわかりました。
魚柄仁之助「うおつか流食べつくす!」を読んだ
魚柄仁之助さんの新しい本、「うおつか流 食べつくす!: 一生使える台所術 (かんがえるタネ)」を読みました。
1990年代の終わり頃、魚柄さんの本が好きで買い集め、日本橋丸善で行われた講演会にも行きました。久しぶりにその頃の面白さを感じさせてくれる本です。
何しろ目次からして面白い。
【其の一】
朝採れ胡瓜・月100本との闘い の巻
【其の二】
古漬け野沢菜・沢庵の再生法 の巻
【其の三】
大豆deチーズとマヨネーズin70’s の巻
【其の四】
路上自炊のばんごはん参加記録in80’s の巻
【其の五】
不人気・タイ米を引き受けるin90’s の巻
【其の六】
ブロイラーが地鶏、ムネ肉がサラダチキンに!?
【其の七】
「時短・無駄無し・省エネ料理」と「保温調理」
【其の八】
「できる!自分」の作り方
目次を見ると懐かしい話題もありますが、この本の中で、特に面白かったのは保温調理です。
保温調理が面白い
本の中で保温調理はこのように説明されています。
沸騰したら5分ぐらい弱火で煮て、火から下ろし、鍋を冷めないように保温して15~20分放置すると、煮物は十分に火が通っていて、味も染み込んでいる、というものです。つまり沸騰後は5分ぐらいしか加熱しない。それでも鍋が冷めないように15分ほど保温しておけば料理は完成している・・・という調理法が保温調理です。
加熱時間は案外短くて済む
以前、鶏胸肉はブライニングしないで塩を擦り込むとよいという記事を書いた時に読んだ、ザ・フード・ラボ 料理は科学だという本があります。
この本を読んでから、ゆで卵を作るときは、「水から卵を入れて沸騰したらすぐに火を止め、20分待つ」を実践しています。少し前から準備すればよいだけで、沸騰して10分火にかけている必要はありません。
いま、ご飯を炊くときは圧力鍋を使っています。加圧したら火を弱めて3分で火を止め、そのまま10分。そして重りを外して圧を完全に抜くとでき上がりです。
キッチンタイマーは必要ですが、放っておくだけで手間がかからないのがよいです。
豚汁が5分の加熱で完成
おいしい豚汁が沸騰して5分の加熱でできるというのです。大切なところにラインマーカーを引いておきました。
保温調理なら肉や野菜からアクがでない
「なに、煮込むのに時間がかかるって?これ、沸騰させてから5分煮ただけ!」
「えっ、5分!?」「こんなに具がいろいろ入っているのに、5分で煮えるんですか?」と、にわかには信じられない二人。
すると魚柄さん、台所の奥からなにやら白い物体を運んできた。よく見るとそれはバスタオルにくるまれた鍋だった。
「沸騰したらグツグツ煮込まずに、火から下ろしてこうしておけば、しっかり火が通り、肉も野菜もアクが出ない。失敗知らずの煮込み料理が勝手にできるんでっす!ちまたでも話題の『保温調理』って、じつは特別な道具はいらないんですの。豚汁なら、ちょいと厚手のふた付き鍋にだしも具も調味料もぜーんぶ入れたら数分間沸騰させて、タオルでくるむだけ。20分もすれば、誰でも味しみしみ~の具だくさん豚汁ができちゃいます。(後略)」
煮込まないとアクがでないとは知らなかったです。魚柄さんの料理の特徴は、だしも調味料も最初から入れるっていうのがあったなと思い出しました。
煮込まなければ素材の持ち味を損なわない
カレーや豚汁を作ると少し煮込みます。しかし、肉のうま味はどんどん抜けて煮込めば煮込むほどバサバサになっていきます。煮込まなければいけないと思っていたんですね。タンパク質は熱がずっと加わると硬くなります。
保温調理は、時短調理法でもありますが、素材の持ち味や栄養を損なわない調理法だと書かれています。
保温調理の特徴を整理してみるとこのような点が挙げられます。
- 茹でたり煮たりするときに100℃を続ける必要はない
- 味を染み込ませるには保温してゆっくり冷ますことである
- 素材の持ち味や栄養を損なわないためには余分な加熱はしないほうが良い
- 鍋のふたを開けなければ保存性が保てる
これは改めて知ってよかった。もう一つ。レバーの調理法について書いておきましょう。
鶏レバーを臭み抜きなしで調理する
焼き鳥屋さんに行くと必ずレバーも注文します。最近はあまり食べないけれど、(こちらはブタですが)レバニラ炒めも好きです。とはいうものの、自分でレバーを買ってきて料理した記憶がないのは、臭みを抜いたりするのが(やったことないけど)面倒だからです。
これは保温料理、「ゆでる」の一例です。
魚柄さんが続いて運んできたのは鶏レバーだ。
「レバー、下処理からして難しそうで、買ったこともないです・・・」そういう小林に、魚柄さんはニヤリ。
「難しい?保温調理なら、これも切って軽く火にかけるだけ。やれ牛乳に浸けたり水に浸けたり、小難しいことはいりまっせん。火が通りやすいように薄く削ぎ切りする、それだけがポイントね」
その後、保温調理でゆで上がったレバーを包丁の腹で手際よく潰し、あっという間にレバーペーストが完成(よりなめらかに仕上げたいときは、裏ごしをします)。魚柄さんお手製のバジルペーストなどを添えて、「いただきます!」
「ほんとだ!臭みがなくて、おいしい!」
こういうのを読むと、是非、やってみたくなってきます。
生協パルシステムのKOKOCARAに記事があります
生協パルシステムのサイト、KOKOCARAで魚柄さんの記事を読むことができます。
包丁の研ぎ方、鶏ムネ肉をおいしく食べる鶏ハムの作り方、もちろん、保温調理についても書かれていました。
NOTE
昔読んだ魚柄さんの本を参考に、つい最近、圧力鍋で米を炊きながら同時に野菜を蒸すという記事を書きました。
魚柄さんの本を読んでいると、とても楽しい気分になります。料理を手短にしたり、材料をむだにしない工夫が面白いのは、私が山小屋で働いていたからかもしれません。
資金力がなく貧乏な小屋だとヘリは使えないので、食料は全部自分で背負って揚げないといけません。足りなくなったら八百屋さんに行って買ってくるわけにはいかないのです。
また、一度にたくさんの人数分の料理をするので、短時間にできれば、1日の仕事終わりも早くなります。ご飯を炊きながら同時にもう一品作るなんてたまらなく魅力があります。