山椒はしびれるが体を温めて血行をよくする

山椒のしびれる成分はサンショオールによるものです。そして、山椒は漢方薬にも使われています。体を温める。皮膚や髪にもよい影響があるなど、山椒の効果についてお知らせしましょう。

山椒

山椒は子供の頃あまり好きではなかったように思います。
佃煮のちりめん山椒を食べると舌がしびれるのがいやでした。
しかし、いつの間にかあの辛いというよりしびれる感じがとても好きになっていました。

山椒の木は、昔、実家の庭にもありました。思い出すのは、アゲハチョウの幼虫が葉によくついていたことです。

アゲハチョウの幼虫は、角(つの)を出すととてもくさいのですが、山椒やニンジンの葉っぱなど、においがとても強い葉っぱにくっついていました。
においが強い葉っぱを食べているので、あのようなにおいを出すのだろうなと思いました。

山椒はミカン科の植物で、日本では古くから香辛料として使われてきた歴史があるようです。

サンショオールはシビれる

「さんしょうは小粒でもピリリと辛い」といわれますが、麻婆豆腐に山椒を十分にかけてもらって食べると、舌が麻痺する感じがします。

実際、山椒の辛味はとうがらしの辛味成分カプサイシンの1/200程度しかないようです。
辛いというよりしびれるということです。

α-サンショオールはこんな物質です。

α-サンショオール

スパイスなんでも小辞典によると次のように書かれていました。

サンショウの辛味成分はサンショオール類と総称されています。(中略)サンショウの実に多いのは、サンショオールとヒドロキシサンショオールです。

どちらかというと、サンショオールにはピリピリとした辛味、ヒドロキシサンショオールには舌のしびれ感が強く感じられます。

ピリピリした辛味だけでなく、しびれ感もあるサンショウの味は、ここから来るのです。

山椒の実ではもともとヒドロキシサンショオールの割合が多いのですが、実が成熟するにつれてしびれ感の強いヒドロキシサンショオールが増加していきます。

舌をピリピリさせる「しびれ」は、中国では「麻味」と呼ばれています。

山椒といえば麻婆豆腐

山椒というと、まず麻婆豆腐を思い出します。
中華料理を食べに行ったとき、麻婆豆腐を頼みますが、必ず山椒は多めにかけてもらいます。しびれる感じがなんともよいのです。

私は味にうるさいわけではないのですが、麻婆豆腐を頼むと、お店の料理への姿勢がなんとなく分かります。
店によっては、化学調味料か何かでごまかしているなあなんて思います。

麻婆豆腐

それで、自分でも麻婆豆腐を作るようになりました。自分でつくると塩加減などはともかく、必要な調味料を全部入れて作るとこんな感じの味になるということが分かります。

麻婆豆腐には花椒(かしょう)を入れるのが正式なのでしょうが、お店でも凝ったところは何種類か用意してあって山椒を入れてくれます。私も山椒を使います。

ちなみに最近は、 上沼恵美子のおしゃべりクッキングのサイトに出ている麻婆豆腐のレシピで作っています。

山椒の効果

山椒は、漢方薬の材料として、種子、葉、根が使われるそうです。

薬剤師であり、あん摩指圧マッサージ師でもある橋本紀代子先生の食べものはくすりを読むと、山椒を材料とした漢方薬について書かれていました。

食べものはくすり
野菜やくだものについて、昔の本草書に出ているような効果を解説してくれる「食べものはくすり」をご紹介します。 食べものはくすりは、大手出版社ではなく、本の泉社という文京区の出版社から発行された本です。しかし、使っている紙も含めて手間がか...

体を温める

果皮を乾燥させたものは「日本薬局方」にも載っている医薬品です。体を温める働きが強いのが特徴です。

漢方薬の「大建中湯」(だいけんちゅうとう)という古くからよく知られている処方に配合されています。

大建中湯は、冷えのために、おなかが痛む、嘔吐、下痢、動悸がするときなどに用います。

どうやら冷えに効果があるのが一般的な性質のようです。

サンショウの果皮の粉末が粉サンショウ。あまり熟しすぎないものが良いとされています。

粉ザンショウは、夏バテに効果があり、胃腸の働きをととのえます。また、あぶらっこいウナギの消化を助け、食あたりや胸焼けを予防します。(中略)

青い実を佃煮にして食べると、冷えによる腹部膨満感、生理痛なども軽くなります。

ものもらいには青い実を「五粒ほどとり、これを米のりで丸薬にして、かまないようにして飲」むとよいそうです。

山椒の実を載せるのを忘れていました。

山椒の実

皮膚や髪にも?

果皮の煎じ液は皮膚や髪にも効果があるとか。

しもやけやあかぎれにも有効で、果皮の煎じ液をタライに入れ温かいうちに手や足をつけます。この煎じ液はうるしかぶれにも有効です。

中国の古い薬物書には、果皮を酒に漬けた液をハゲたところに塗ったり、果皮の粉末をラードで練ってから塗ると、髪の毛が生えると書いてあります。

サンショウの成分に白髪の発生をおさえる働きがあることがわかり、育毛剤にも配合されているようです。

山椒の果皮の煎じ液に手足をつけたり酒を塗ると、血行がよくなるということですね。
私は白髪だらけでいまさら白髪の発生をおさえても仕方がないですが、まだ少し白髪が混じった程度の方ならためしてみてもよいかもしれません。

世界一やさしい! 野菜薬膳食材事典にはこんな効果が書かれていました。
いままで書いてきたこととかなり重なります。

世界一やさしい! 野菜薬膳食材事典
世界一やさしい! 野菜薬膳食材事典は、漢方の理論に基づいて、120種類の食材の効能が解説された本です。みんな普通の食べものばかりです。

冷えによる胃の痛みや下痢に

体を温め、冷えを解消します。特に胃や腸を温め、腹痛や胃のけいれん、下痢などを鎮める効果があります。

また、外用剤として皮膚のかゆみを抑える働きもあります。さんしょうは、温める作用がとても強いので、のぼせ、ほてりの強い人は、とり過ぎに注意が必要です。

健胃・整腸・解毒・利尿・駆虫

丁宗鐵先生編著のスパイス百科 ~起源から効能、利用法まで~(丸善出版 2018)にはこのように書かれていました。

サンショウの仲間のサンショウ属は熱帯・亜熱帯および温帯地方に広く分布しており,250種あまりが知られている.

日本薬局方には,サンショウの成熟果皮で,果皮から分離した種子をできるだけ除いたものを生薬・山椒(サンショウ)として収載されている.

漢方医学的には,サンショウは辛・温の性味で,温裏散寒,健胃・整腸,解毒,利尿,駆虫の効能を持つ.

胃腸系を温め機能を促進し,消化不良や胸腹痛の冷痛,嘔吐,下痢,痢疾に応用されている.痛みを止め,疝痛・歯痛にも使用される.

殺虫・駆虫・痒み止めの働きにより腸内寄生虫、婦人陰部の痒み,湿疹・皮膚の痒みなどを主治する.

解毒作用があり魚や肉による食中毒に用いられる.また,鎮痛・鎮痙薬,温裏散寒薬とされる大建中湯,当帰湯に配剤される.

特に大建中湯は術後の腸閉塞防止をはじめ,便秘や消化器系疾患に広く応用されている.

駆風・整腸薬(腸内ガスの排出を良くする)や芳香性健胃薬(消化促進)とされ,民間薬の苦味チンキ(サンショウ,トウヒ,センブリ)の原料の一つであり,苦味チンキは消化不良,食欲低下,下痢などに使用される.正月に飲む縁起物の薬用酒のお屠蘇の材料でもある.

壁土に練り込まれた

スパイスの人類史(アンドリュー・ドルビー 著/樋口幸子 訳 原書房 2004)にはこんなことが書かれていました。

「後宮にはいくつかの小さな庭や、椒房、皇后と妃たちの部屋がある」。こう教えてくれるのは、一世紀に班固によって書かれた『両都賦』である。

班固は後漢の名高い歴史家で、前漢の歴史を記した『漢書』を編纂した人物であり、この情報は信頼できるだろう。

この宮城は長安城、つまり漢の西の都である。「後宮」は女性たちが住んでいた区画であるが、「椒房」つまり「山椒の部屋」とは何か。

七世紀に班固の『漢書』に注を施した顔師古によれば、この「椒房」という建物は、壁土に山椒を混ぜて、部屋を暖めると同時によい香りを楽しめるようにしたものだという。

このことからも、この中国産のスパイスが持つ力、あるいは原産地である中国でいかに重視されていたかがよくわかる。

サンショウ属のいくつかの種が、中国と日本一帯に自生しており、スパイスや香料として使われている。(中略)

山椒はほかの国々ではほとんど知られていない。各種の山椒の中でも最も強力で、後年は中国でも最高と見なされるようになったのが、四川省原産の蜀椒(Zanthoxylum simulans)である。

英語では「シチュアン・ペッパー」(四川のコショウ)と呼ばれることもある。

まとめ

山椒をたくさん入れた麻婆豆腐を食べると、辛くてしびれて頭のてっぺんから汗が出て来ますが、体が熱くて仕方がないという感じではないです。

体表は汗が出ても涼しい感じがしています。気分もシャキッとします。

しかし、山椒の性質は体を温めるようです。唐辛子よりも辛くはないですが、性質は唐辛子の辛味成分カプサイシンと似ているのかもしれません。

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