海苔の生態はイギリス人が発見した

海苔は毎日食べないけれど、おにぎりに海苔がないと困ります。海苔の養殖は江戸時代から始まりましたが、日本で海苔の養殖が安定して行えるようになったのは、イギリス人の学者が海苔の生態を明らかにし、それが伝えられた第二次大戦後のことでした。

海苔

海藻の歴史 (「食」の図書館)を読みました。原書房のこのシリーズ、私は好きです。翻訳本ですが、いままで知らなかったことを教えてくれる本です。

この本を読むと、海藻を食べる文化は日本だけではないことがよく分かります。しかし、おにぎりには欠かせない海苔の養殖に貢献したのがイギリス人だったとは知りませんでした。

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江戸時代海苔の養殖が始まった

海苔がよく食べられるようになったのは江戸時代から。しかし、海苔の養殖は安定せず、生産量が安定して多くならないので、ぜいたく品だったそうです。

言い伝えによると、家康は鮮魚と海苔が大好物だったという。家康は、新しい都(のちの東京)に置いた江戸城に、毎日魚を運ぶよう地元の漁師に命じた。

漁師達は毎日一定の魚を確保できるように、現在の東京湾に竹で生け簀(いけす)を作り、魚をかこっておいた。

そしてこの生け簀の柵にした竹にノリが育っていたことから、将軍がノリの養殖を推奨したといわれる。当初は、潮の満ち引きのある海に木の枝の束を沈め、それに生えたノリを採っていた。

これでようやく、以前よりも幅広い層の人々が口にできるノリが収穫され、ノリを求める声も大きく増した。とはいえ、枝の束にはノリ以外の海藻はよく育ったのに、当時は理由はわからなかったが、ノリを安定して収穫することはなかなかできなかった。

このため以前よりも手が届きやすくなったものの、海苔は相変わらずぜいたく品だったのである。

このような状況はなかなか解決されませんでした。なんと、その後1930年代まで解決できなかったそうです。

それを解決したのは、イギリス人の藻類学者でした。

イギリス人学者が海苔の繁殖サイクルを発見

ウェールズ地方では海藻がやはりよく食べられています。日本だけではありませんでした。

イギリス人藻類学者のキャスリーン・ドゥルー=ベイカー博士がウェールズ地方でアマノリ属の標本を採取して研究し、ついにノリの複雑な繁殖サイクルを解明した。

ただしイギリスではベイカー博士の発見は見向きもされず、やがて第2次世界大戦が勃発する。

終戦後、ベイカー博士が親交のあった日本人藻類学者たちにこの発見を知らせると、学者たちはこれでようやくノリの商業養殖が軌道にのることを確信した。

戦後の日本経済は壊滅的状態にあり、何年も食料不足に苦しんでいた国民の健康状態は悪化していた。

国内外向けのノリの量産化に成功すれば、日本経済にも国民にも恩恵をもたらすことになる。ベイカー博士の発見と、それをもとに研究を重ねた日本人化学者および養殖者の努力のおかげで現在のノリ養殖の土台ができあがった。

ノリはようやく日本全国で安定して手に入れられるようになり、鮨が手軽につまめる食べ物となったのである。

ベイカー博士が日本を訪れたことはないが、ノリの一大生産地である熊本県の有明海を臨む神社では、ベイカー博士を「海の母」とたたえる「ドゥルー祭」が毎年行われ、日本の海藻産業と鮨革命、そしてノリに対する博士の貢献をしのんでいる。

調べてみると、熊本県宇土(うと)市のことでした。有明海を一望できる住吉公園に記念碑が建立され、顕彰碑のある住吉神社で毎年4月14日に「ドゥルー祭」が行われています。

宇土市のドゥルー女史に関するページ

キャスリーン・メアリー・ドリュー=ベーカー博士について、ウイキペディアにも記事がありました。

しかし、この本には海苔の生態について詳しい話は出ていませんでした。

海苔の生態

それで、少し本を探してみると、海苔をまいにち食べて健康になるという本が見つかりました。

この本には、キャスリーン・メアリー・ドリュー=ベーカー博士が発見した中身について書かれていました。

海苔の胞子は貝殻の内側に潜んで夏を越す

イギリスの海藻学者ドリュー女史が貝殻の内部に入り込んで、ごく細い糸のようになっている海藻がノリの夏を越す姿であることを見つけ出してからのことです。

カキの殻を思い出して下さい。たった一個の細胞でしかないノリの胞子は、あの内側のスベスベした硬い真珠層に穴を開けて内側に入り込み、そこで育ち夏を過ごしているのです。

しかも、秋の彼岸の頃になると、糸状の体に上にできた胞子の袋が表面近くにまで立ち上がってきて、再び硬い真珠層に穴を開け、ノリになる胞子を送り出しているのです。

たった一つの細胞でしかない胞子が、どのようにして真珠層に穴を開けているかは、まだ分かっていません。

もし、人間が穴を開けようとするならば、手についたりすれば火傷(やけど)しかねないような強い酸、例えば塩酸などを使わなければならないのです。

それなのに、ノリの胞子はヤスヤスと真珠層を溶かして内側に入り込んだり、外側に胞子を送り出したりしているのです。(中略)

上で書いたように品川で海苔の養殖は行われていたものの、海苔のタネがどこから流れ着いて夏を越しているのか住処が分からなかったので、安定した養殖ができなかったのです。

海苔の分裂スピードは2日間で3回と遅い

貝殻の中で夏を越したごく細い糸状の姿をしたノリは、秋の彼岸の頃から新しい胞子を出し始めます。

貝殻から胞子が出されるのは、朝の光が当たり始めたごく暗い頃からですが、その胞子が網などにつけるようになるためには、千ルックス以上のやや強い光が必要になります。(中略)

貝殻から出た胞子は、自分の力で網についてくれるのです。数時間かけてしっかりと網についた胞子は、やがて分裂を始め二つになり、その数を増やして行きます。

しかし、分裂する速さは2日間に3回程度、決して速いものではありません。このノリ芽が生長を始めて10日から14日たちますと、そのノリ芽の大きさは、まだ虫眼鏡では見えず、顕微鏡でなければ見えないほど小さなものですが、ノリ芽の先の方の細胞一つひとつが、四角く区画整理されたような形に変わります。

これがメス・オスの区別がない無性の胞子で、ノリ芽から出ると近くの網などにつき新しい芽に育っていきます。

ですから、のり網の上には、親芽が育ち、その下に二次芽になる胞子がつき、その胞子が育ち始めて10日から14日がたつと、その芽の先に細胞が胞子に変わって芽から離れ、新しい三次芽となります。

といった具合に、約2週間おきに新しい芽がつくられ続けていきますので、のり網の上には代々のノリ芽が数を増しながら順についていきます。

親芽が摘み取られますと、下についている二次芽が伸びて、二回目の摘みができるようになり、さらにその下芽が伸びてきて、三回目の摘みとなります。

海苔の栄養成分

最後に海苔の栄養成分を調べてみました。われわれが食べている海苔は、「あまのり」といわれるものだそうです。

最初に書いておきます。海苔を100g食べる人はいません。海苔1枚は約3gです。(出典)このぐらいなら食べる人はいるでしょう。現実的な量は、表に出てくる数字の1/30くらいだと思ってください。

たんぱく質が多い

海苔はたんぱく質が多いです。乾燥させているとはいえ、乾燥大豆よりも多いです。植物の中では断トツかもしれません。同じ海藻でもわかめやこんぶとは違います。

食物繊維が多い

炭水化物38.7g中、食物繊維が31.2gあります。海苔1枚でも約1gありますから、なかなか多いです。

ミネラルは海苔1枚で考えれば特に多いものはありません。少し前に、わかめを毎日たくさん食べてヨウ素摂りすぎにならない?という記事を書きました。

乾燥わかめを戻して毎日食べようと思いました。ヨウ素の過剰摂取が気になり調べましたが、海藻を当たり前に食べる日本人には、ヨウ素の過剰摂取の害は起きにくいようです。しかし、閉経後の女性は、ヨウ素を摂りすぎると、甲状腺がんの原因になるかもしれません。

ヨウ素の量を調べましたが、海苔は大したことはありませんね。

ビタミンB12は海苔1枚で十分

ビタミンの中で、ビタミンB12だけは海苔1枚で足ります。以前、ビタミンB12が欠乏する貧血は、胃か回腸に原因があるという記事を書きました。

この記事では、ビタミンB12について、吸収されるときの特徴と、ビタミンB12の作用。欠乏するとどうなるか。巨赤芽球性貧血とはどんな貧血か。過...

成人男子の1日推奨量は2.4μgです。成人女子も同じ、1日推奨量は2.4μgです。100gあたり77.6μgありますから、海苔1枚分、1/30しても十分間に合います。

なぜかEPAがある

脂質3.7gの中にEPA(イコサペンタエン酸)が1200mg、つまり1.2gもあります。EPAは青魚の脂肪に含まれている脂肪酸です。血液サラサラ成分としても知られています。

何で魚の成分が・・・と思われる方もいるかもしれません。魚は、EPAやDHAを自分で作れません。ヒトと同じで必須脂肪酸です。海苔のような、藻を食べていたり藻を食べたプランクトンを食べて自分の脂肪に取り込んでいます。

必須アミノ酸9種類

必ず食事で摂る必要があるアミノ酸を必須脂肪酸といいます。

バリン、ロイシン、イソロイシン、トレオニン、メチオニン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン、リシン、が海苔には含まれています。

100gあたりの栄養成分
あまのり/ほしのり
エネルギー 173kcal
水分 8.4g
たんぱく質 39.4g
脂質 3.7g
炭水化物 38.7g
灰分 9.8g
ナトリウム 610mg
カリウム 3100mg
カルシウム 140mg
マグネシウム 340mg
リン 690mg
10.7mg
亜鉛 3.7mg
0.62mg
マンガン 2.51mg
ヨウ素 1400μg
セレン 7μg
クロム 5μg
モリブデン 93μg
レチノール (0)
α-カロテン 8800μg
β-カロテン 38000μg
β-クリプトキサンチン 1900μg
β-カロテン当量 43000μg
レチノール活性当量 3600μg
ビタミンD (0)
α-トコフェロール 4.3mg
ビタミンK 2600μg
ビタミンB1 1.21mg
ビタミンB2 2.68mg
ナイアシン 11.8mg
ナイアシン当量 19.9mg
ビタミンB6 0.61mg
ビタミンB12 77.6μg
葉酸 1200μg
パントテン酸 0.93mg
ビオチン 41.4μg
ビタミンC 160mg
脂肪酸総量 2.2g
飽和脂肪酸 0.55g
一価不飽和脂肪酸 0.2g
多価不飽和脂肪酸 1.39g
食物繊維総量 31.2g
20:5n-3イコサペンタエン酸 1200mg
イソロイシン 1600mg
ロイシン 2800mg
リシン 1900mg
メチオニン 850mg
シスチン 650mg
フェニルアラニン 1400mg
チロシン 1200mg
トレオニン 1800mg
トリプトファン 480mg
バリン 2400mg
ヒスチジン 550mg
アルギニン 2100mg
アラニン 4200mg
アスパラギン酸 3500mg
グルタミン酸 4300mg
グリシン 2300mg
プロリン 1600mg
セリン 1500mg
ヒドロキシプロリン
※日本食品標準成分表2015年版(七訂)

まとめ

この記事を書いて、海苔を普段、いつ食べるだろうと思い出していました。蕎麦を茹でた時、たまに(あれば)刻み海苔をかける時があります。

最近は、滅多にありませんが、コンビニでおにぎりを買ったら海苔が巻いてあります。たまに巻き寿司を買うことがありますが、もちろん海苔が巻いてあります。

子供の頃は、缶入りの味つけ海苔をもらったりして、夕食の時にそれに醤油をたらしてご飯を巻いて食べたりしましたが、最近は味つけ海苔自体をあまり見かけないような気がします。

海苔は香りがよく、おにぎりには欠かせません。もっと食べてもいいなと思いました。

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