小さい太陽光パネルでもクルマのバッテリーにフル充電することができます。12Vのバッテリーで交流100Vの電化製品を稼働させるには、インバーターが必要です。また、安いインバーターは、正弦波ではなく疑似正弦波を出力するものがあります。疑似正弦波の場合、使えない電化製品もあります。
自分で非常時のためにバッテリーに充電しておく
1万円でできる! ベランダでできる! 独立太陽光発電所の作り方を読みました。
この本は、家庭で太陽光発電をしてその電気を電力会社に売る、いわゆる「売電」の話ではありません。自分で使うために太陽光発電したものをバッテリーにためる話です。
毎年のように地震台風など災害があり、停電の話をよく聞きます。
停電すると、いま一番困るのはスマホに充電できなくなることです。電話とネットを遮断されると、安否確認ができずニュースも入って来なくなります。そうならないように、自分で使える電気を持とうという提案です。
この本は、なるべく安く必要な材料を揃えて、発電した電気をバッテリーに蓄電する仕組みについて説明してくれています。
小さい出力の太陽光パネルを使って大きなバッテリーに毎日充電する
たとえ、小さい太陽光パネルを使っていても、大きなバッテリーをいっぱいに蓄電できます。
定格出力5Wの太陽光パネルは、太陽に雲がかかったり、朝と夕方は発電量がほんの少しになるため、平均すると定格出力は1W程度しかないというところから話が始まります。
それでも十分なのです。
太陽光パネルの1Wの発電量で直接照明などの電気製品を使うわけではありません。日常的に「溜める」ことで、大きな力が発揮できるのです。(中略)
「では、バッテリーはどのくらいの容量が必要なのでしょうか?」
最低でも自動車用バッテリー(40B19)くらいの量は欲しいところです。このくらいなら、1週間もお天気が続けばバッテリーをいっぱいにすることができます。(中略)
しかし、できるならもっともっとたくさん蓄電できるよう、大きなバッテリーにしましょうか。バッテリーをいっぱいにするのに、1ヵ月掛かったって3ヵ月掛かったって構わない。
溜めた電気の量が多ければ、その分使うときには大きな力になるんですから。
太陽光パネルは大きくなければ実用にならないのではないか…‥と思っていました。小さいパネルを使っても、毎日充電し続ければいずれ満タンになる。そうなのか!と思いました。
この本を読んで、多分、一番よかったことです。
自動車用バッテリー(40B19)は容量28Ahと書かれていました。ネットで調べると、3000~3500円で買えるようです。
充電を理解するのに必要な電気の知識
ワット(電力)を求める公式は中学生の時に習ったのだったか、まだ覚えていました。(出典)
しかし、悲しいことに電力、電圧、電流について、その意味するところがわかりません。YAMAHAのサイトの中に電気の基礎知識があり、そこで説明されていました。
電力、電圧、電流について
電力は1秒間に流れる川の水の量。電圧は高低差(つまり高さ)で電流は川幅だと覚えておきます。
電気はよく水の流れに例えられます。川をイメージしてみましょう。上流と下流に高低差があるほど水の勢いが増し、川幅が広くなるほど流れる水の量が多くなることが分かると思います。
このときの高低差に相当するのが「電圧(V ボルト)」、川幅に相当するのが「電流(A アンペア)」です。
「電力(W ワット)」は単位時間あたりの仕事率のことなので、ある時間のなかで上流から下流へ移動した水の量と覚えておくと良いでしょう。この電力は電圧と電流を掛け算することで求めることができます。
単位時間というのは基本的に1秒間のことです。
5Wの太陽光パネルで12Vのバッテリーに充電すると
充電を考える時に知る必要があるのは、最大出力時電圧と最大負荷時電流です。それをかけ合わせると最大出力電力が出ます。
また、太陽光パネルの最大出力時電圧が、バッテリーの電圧よりも高いことが必要です。
このパネルの仕様は、
- 最大出力電力(Pmax):5W
- 開放電圧(Voc):21.6V
- 短絡電流(Isc):0.34A
- 最大出力時電圧(Vmp):17V
- 最大負荷時電流(Imp):0.28A
ここで必要なのは、最大出力時電圧と最大負荷時電流です。最大出力時電力は、この2つの積で求められます。
計算すると、
17V×0.28A=4.78W
これで、最大出力電力が約5Wのパネルとなります。しかし、12Vのバッテリーに充電すると、
12V×0.28A=3.36W
となってしまいます。
電圧の差が必要
少し前に、「電圧は高低差」であると書きました。充電するにはこの差が必要です。この例では、太陽光パネルは17Vでバッテリーは12V。5Vの差があります。
それでは、この5Vの電位差(17V ― 12V)はいったいどうなってしまうのでしょうか。水に置き換えて考えてみましょう。
水は高いところから低いところへ流れます。そのためには落差が必要です。電気も同じです。12Vのバッテリーへ充電するためには、それ以上の電圧つまり電位差が必要なのです。
消えてしまう5Vは、電気が流れ込むためには必要な落差なのです。電位差があることで充電が可能になります。
でも、この差が大きくては捨てる分も大きくなってしまいます。同じ5Wでも、最大負荷時電圧が14~15Vくらいならもっと効率が良くなります。
この電位差を電流に置き換え、充電効率を上げるコントローラーもあります。
重要なところにマーカーを引いておきました。「14V~15Vくらいならもっと効率が良くなる」。
いま、バッテリーの電圧を仮に15Vとしましょう。すると、太陽光パネルの最大負荷時電流は2.8Aですから、バッテリーに充電するときは、4.2Wになります。
15V×0.28A=4.2W
フル充電したクルマのバッテリーで液晶テレビを見る
クルマに使われている12Vのバッテリー、40B19は容量が28Ahです。これを使って定格消費電力53Wの液晶テレビを何時間見ることができるか?説明が書かれていました。
はじめに、バッテリーの容量からテレビを観ることのできる時間を予想してみましょう。使用するバッテリーの規格40B19は容量が28Ahです。バッテリー電圧が12Vですから、以下の計算になります。
12V×28Ah=336Wh
336Wh×0.75=252Wh(実際に使える電気量)
252Wh÷53W≒4.75h
この計算から、この自動車用バッテリーでテレビを観られる時間は、約4時間45分と予想できます。
さて、この計算式。計算自体はなにもむずかしくないのですが、よく意味を考える必要があります。
バッテリーの容量は28Ahです。Ahはアンペアアワーと読みます。電流と時間の積算値です。たとえば、このように考えてください。
28Ahとは、単純に28Aの電流を1時間(1hour)流すことができるという意味です。バッテリーの電圧は12Vですから、出力できる電力は、336Whです。
336Wh(ワットアワー)は、336Wの出力を1時間続けることができるという意味です。ただし、バッテリーは放電していくうちに電圧が下がります。あまり下がるとバッテリーを傷めるので、安全に使えるのはその75%です。
それが、252Whの意味です。
その次の式がバッテリーで液晶テレビを何時間見ることができるか?という計算です。液晶テレビの定格消費電力は53Wです。これは1秒間のことでした。1時間なら53Wh消費します。
つまり、1時間あたり252Wh出力できるバッテリーに、1時間あたり53Wh消費する液晶テレビをつなげたので、だいたい、4.75h(時間)見られることがわかりました。
バッテリーで交流100Vの電化製品を動かすにはインバーターが必要
インバーターを使う時は、最大電流に注意して使う電化製品の消費電力を考えなければいけません。
直流12Vのクルマ用のバッテリーで、交流100Vが必要な液晶テレビを見ることはできません。インバーターを間につなげて、直流(DC)12Vを交流(AC)100Vに変換する必要があります。
クルマのシガーソケットから直流12Vを取りだし、交流100Vに変換するインバーターがたくさんあるようです。
注意事項は、シガーソケットは何も表示がなければ最大電流15Aまでとされているため、使える電力は下の計算式になります。
15A(最大電流)×12V(バッテリー電圧)=180W
180Wまでは使えるということ。これを超えると電線が発熱して持たないかもしれません。液晶テレビなら53Wだから大丈夫。
正弦波と疑似正弦波がある
通常、コンセントから出力される電気は波形があり、正弦波です。三角関数のsinカーブのことです。一方、インバーターから出力される波形は正弦波もあれば、疑似正弦波もあります。
安いインバーターは、疑似正弦波を出力している場合があります。正弦波であれば全ての電化製品が使えますが、疑似正弦波の場合は使えないものもあると覚えておきます。
まとめ
小さい太陽光パネルでもクルマのバッテリーにフル充電することができます。バッテリーの容量を調べれば、家電製品がどのくらいの時間稼働できるか計算できます。
12Vのバッテリーで交流100Vの電化製品を稼働させるには、インバーターが必要です。インバーターはクルマのシガーソケットから12Vを取るタイプが多く、最大電流は15Aのものが多いです。つまり、180Wまでしか使えません。
また、安いインバーターは、正弦波ではなく疑似正弦波を出力するものがあります。疑似正弦波の場合、使えない電化製品もあります。