クロムは今後も必須栄養素であるかどうかわからないミネラル

クロムは3価クロムが食品に含まれます。3価クロムは糖尿病のラットに投与すると症状を改善しますが、その量は食品では摂れないほど必要なので、今後も必須栄養素であるかどうかわからないそうです。健康な人が3価クロムを摂りすぎると、逆にインスリンが効きにくくなるので、耐容上限量が設定されています。

クロムはインスリン作用を増強する

日本人の食事摂取基準(2020年版)(2)微量ミネラルにはこのように書かれています。3価クロムを含むクロモデュリンがインスリン受容体の活性を維持するので、受容体を活性化させて、インスリンの効きをよくするという意味です。

食品に含まれるのは3価クロムであるので、食事摂取基準が対象とするのは 3 価クロムである。(中略)

耐糖能異常を起こしたラットや糖尿病の症例に3価クロムを投与すると、症状の改善が認められる。一方、クロムを投与した動物の組織には、四つの3価クロムイオンが結合しているクロモデュリンと呼ばれるオリゴペプチドが存在する。

クロモデュリンは、インスリンによって活性化されるインスリン受容体のチロシンキナーゼ活性を維持して、インスリン作用を増強する。したがって、クロムは必須栄養素であると考えられる。

ただし、今後も必須栄養素であるかどうかわからない

ところが、クロムの効果を出すためには食事からの摂取量では間に合わないそうです。これでは薬扱いで、栄養素にはならないかもしれないですね。

一方、実験動物に低クロム飼料を投与しても糖代謝異常は全く観察できず、ヒトの糖代謝改善に必要なクロムの量も食事からの摂取量を大きく上回る。これらのことから、3価クロムによる糖代謝の改善は薬理作用に過ぎず、クロムを必須の栄養素とする根拠はないとする説が最近、有力である。

1日の摂取量

クロムの摂取基準量は、乳児と18歳以上の成人男女に設定されています。

乳児に目安量が設定されているのは、母乳を調べて含まれるクロムの平均値が「だいたいこのくらいある」という数字から算出されたようです。

実際はもっと食品分析表の数値より多くクロムを摂っている

成人男女については、同一献立について食品成分表を用いた算出値と化学分析による実測値を比較した場合にずれがあり、実際は、化学分析による実測値の方が含まれるクロムの数値がずっと大きいそうです。しかし、献立など日本食品標準成分表をもとに考えられているので、日本食品標準成分表のデータを基準としたと書かれていました。

日本人の食事摂取基準(2020年版)Ⅰ総論にこのように書かれています。

目安量と耐容上限量について

目安量は、実際に毎日食べられている食品から量を算出していて、まあこのぐらい食べていたら不足することはないということです。

十分な科学的根拠が得られず、推定平均必要量と推奨量が設定できない場合は、「目安量」を設定する。一定の栄養状態を維持するのに十分な量であり、目安量以上を摂取している場合は不足のリスクはほとんどない。

過剰摂取による健康障害の回避を目的として、「耐容上限量」を設定する。

少々歯切れが悪い説明を読んで表を見ると、耐容上限量に注意すべきなのかなと思います。

クロムの食事摂取基準(µg/日)
性 別男 性女 性
年齢等目安量耐容
上限量
目安量耐容
上限量
0~5(月)0.80.8
6~11(月)1.01.0
1~2(歳)
3~5(歳)
6~7(歳)
8~9(歳)
10~11(歳)
12~14(歳)
15~17(歳)
18~29(歳)1050010500
30~49(歳)1050010500
50~64(歳)1050010500
65~74(歳)1050010500
75以上(歳)1050010500
妊婦(付加量)10
授乳婦(付加量)10

摂りすぎるとどうなる?

血糖値が正常な人が、3価クロムを毎日1000µg(=1mg)摂っていると、インスリンが効きにくくなる。つまり血糖値が下がりにくくなるそうです。それで、安全性も考慮して、耐容上限量500µgが決められたのですね。

クロムの場合、通常の食品において過剰摂取が生じることは考えられないが、3価クロムを用いたサプリメントの不適切な使用が過剰摂取を招く可能性がある。

肥満でなく(BMI が 27 未満)、血糖値が正常な 20〜50 歳の男女に 1,000 µg/日の3価クロム(ピコリン酸クロム)を 16 週間にわたって投与した研究では、クロム投与がインスリンの感受性を高めることはなく、クロム投与者では血清クロム濃度とインスリン感受性との間に逆相関が認められている。このことは、クロム吸収量の増加がインスリン感受性を低下させることを意味している。

クロムが多く含まれている食品

一番のあおさは上の画像です。あおさだけ多いですが、他の食品は、毎日口に入るものが多く、特に大豆が好きな人は、結構摂ってますね。

クロムが多い食品100gあたり
順位食品名成分量
1あおさ/素干し160µg
2アサイー/冷凍/無糖60µg
3バジル/粉47µg
4あおのり/素干し39µg
4てんぐさ/粉寒天39µg
6パセリ/乾38µg
7梅干し/塩漬37µg
8パプリカ/粉33µg
8刻み昆布33µg
10こしょう/黒粉30µg
11きくらげ/乾27µg
12ほしひじき/ステンレス釜乾26µg
12ほしひじき/鉄釜乾26µg
14あまに/いり25µg
15ミルクチョコレート24µg
16カレー粉21µg
16さんしょう/粉21µg
18カットわかめ/乾19µg
18魚醤油/いしる(いしり)19µg
20紅茶/茶18µg
20キムチの素18µg
20ライスペーパー18µg
23とうがらし/粉17µg
24つるにんじん/根生16µg
24ぶた/チョップドハム16µg
26まこんぶ/素干し14µg
26まつたけ/生14µg
26シナモン/粉14µg
29ぶた/レバーソーセージ13µg
29昆布茶13µg
29黒砂糖13µg
29かぼちゃ/いり味付け13µg
29あずき/あん/さらしあん13µg
34いり大豆/黒大豆12µg
34こしょう/混合粉12µg
34青汁/ケール12µg
34きな粉/全粒大豆/黄大豆12µg
34ぶた/ロースハム12µg
39ドライトマト11µg
39ぶた/ロースハム/焼き11µg
39うし/ビーフジャーキー11µg
39ぶた/ロースハム/ゆで11µg
39魚醤油/しょっつる11µg
44豆みそ9µg
44干しぶどう9µg
44ウスターソース9µg
44ぶどう/ストレートジュース9µg
44あさ/乾9µg
49わさび/粉からし粉入り8µg
49だいず/がんもどき8µg
49チアシード/乾8µg
49せん茶/茶8µg
49顆粒中華だし8µg
49顆粒和風だし8µg
49ぶた/ロースハム/フライ8µg
※日本食品標準成分表2015年版(七訂)

NOTE

クロムにはよい印象を持っていません。私が子供の頃、6価クロム事件というのがあったのです。

日本人の食事摂取基準(2020年版)にもこのように書かれていました。

6価クロムを過剰に摂取すると、腎臓、脾臓、肝臓、肺、骨に蓄積し毒性を発する 。しかし、6価クロムは人為的に産出されるものであり、自然界にはほとんど存在しない。

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