半田そうめんは、太いそうめんでコシが強いのが特徴です。なぜ、徳島県の特定の地域で、このようなそうめんが作られるようになったのか調べました。
半田そうめんの小麦は讃岐うどんの小麦
「阿波や壱兆」の一年中そうめん(田中 嘉織著 文化出版局 2017)は、徳島県出身の方が書かれた本です。
この本は、半田そうめんの出汁を自分で作るでご紹介しています。
半田そうめんの歴史についてこのように書かれていました。
半田そうめんの始まりは天保年間(1830~1844)。「四国三郎」の呼び名で愛される徳島県の一級河川・吉野川を行き来する運搬船の船頭が、冬の間の副業として、地元・半田町でそうめんを作り始めたのが最初だといわれています。
当時は吉野川のきれいな水と、自家製粉した手延べそうめん用の粉を使い、一般的な細めんのそうめんを作っていました。
吉野川をはさんだ香川県からの人やものの往来があったため、讃岐うどんの粉を使うようになるなど、やがてうどんのようなコシのあるそうめんになっていったのだそう。
江戸時代の半田そうめんは、贈答用の細いそうめんが主流だったため、偶然太いそうめんができてしまったときは”規格外品”として地元の人たちが食べていたそうです。
しかし、この”規格外品”が、だんだんと「安くておいしい」と評判になり、現在のような太い半田そうめんが広まっていきました。
半田そうめんは明らかにコシが強いです。その理由の少なくとも一つは讃岐うどんの粉にありましたか。
なぜ、一般的なそうめんより太いのかなと思いましたが、”規格外品”だったとは、いかにも特産品のルーツらしいです。
私はそれほどうどんが好きではなかったのですが、実家が徳島にある数年間にうどんが好きになっていました。だしが独特なのと、コシの強さが魅力です。
そうめんをつくるときは油を使う
半田そうめんの製麺所を調べていたら、小野製麺さんのサイトに写真付きの詳しい製造工程がでていました。
撚りをかけて延ばす
半田そうめんって撚りをかけて延ばすのですね。撚りって「ねじる」ことです。そして、「ひまわり油を麺の表面に塗ります」と書かれていました。
そうそう。そうめんの袋を見ると、必ず植物油などと書かれています。
うどんは練って寝かせて畳んで切るのですが、そうめんはずっと細く延ばしていくので油を塗らないと乾燥して切れてしまうのかもしれないです。
撚りをかけるとは糸を切れにくく強くすることと同じです。これはコシがでるだろうなと思いました。
乾燥させない切れないように油を塗る
伝統食品のそうめんに食用植物油を読むと、こんなふうに書かれていました。
手延べそうめん製造の特徴は、図5(引用者注:省略します)に示したとおり製造工程で熟成を繰り返すことにあります。
しかし熟成作業を十数回も繰り返すため、製造に一日以上の時間を必要とすることになります。
その過程でめんの表面が乾燥して延ばすことができないという問題が発生します。この問題を解決するため、先人たちは植物油を利用したのです。
そうめんは何度も撚り延ばして細くしていくので、熟成工程が何回か必要らしく、時間がかかります。そこで乾燥すると切れやすくなるので、植物油を塗るのです。
これ、最初は半田そうめんの独特の工程なのかと思っていましたが、違いました。
手延べ干しめんの日本農林規格というのがあるのです。
半田そうめんだけでなくJAS規格で「手延べ干しめん」について決められていた
JAS規格についてウイキペディアではこのように説明されています。
農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律(JAS法、1950年公布)に基づく、農・林・水・畜産物およびその加工品の品質保証の規格である。
英語名称が Japanese Agricultural Standard であるため、一般にJAS(ジャス)と略されたり、その規格をJAS規格(ジャスきかく)と呼ぶことが多い。
この規格に適合した食品などの製品にはJASマークと呼ばれる規格証票を付した出荷・販売が認められている。
半田そうめんは、「手延べ」が特徴ですが、JAS規格で、手延べ干しめんについてキッチリ決められていました。
つまり、半田そうめんだけでなく「手延べ干しめん」と称するなら、この条件をクリアしなければならないのです。
用語 | 定義 |
手延べ干しめん | 次に掲げるものをいう。 1 小麦粉に食塩水を加えて練り合せた後、食用植物油又はでん粉を塗付してよりをかけながら順次引き延ばしてめんとし、乾燥したものであって、第3条の規格を満たす方法により生産されたもの 2 1に調味料又はやくみを添付したもの |
熟成 | めんの生地又はめん線を常温で一定期間放置することにより、次に掲げる変化を生じさせることをいう。 1 めんの生地については、水分の均一化 2 めん線については、それを引き延ばすことにより生じるグルテンの構造のゆがみの復元 |
手延べ干しめんの規格は決まっています。もし疑問があれば、手延べ干しめんの日本農林規格を参照してみて下さい。
事項 | 基準 |
小麦粉に対する食塩水の配合割合 | 45%以上であること。 |
手作業の工程 | 小引き工程(かけば工程(よりをかけ、交ささせつつめん線を平行にかけることをいう。以下同じ。)を経ためん線を引き延ばすことをいう。以下同じ。)から門干し工程(乾燥用ハタを使用してめん線を引き延ばしてめんとし、乾燥することをいう。以下同じ。)までの間において、めん線を引き延ばす行為のすべてを手作業により行っていること。 |
熟成期間 | 熟成が次の期間以上行われていること。 1 混合工程(小麦粉に食塩水を加えて練り合わせることをいう。)とかけば工程の間の工程における熟成については、6時間(長径を1.7mm以上に成形するものにあっては、3時間) 2 かけば工程と小引き工程の間の工程における熟成については、1時間 3 小引き工程と門干し工程の間の工程及び門干し工程における熟成については、合計12時間 |
手延べ干しめんの定義に「撚り」をかけることを条件とするのが、しびれるくらいの魅力があります。
まとめ
半田町は、水量豊富な吉野川が流れていますが、山間部で平地が少ないので、決して水田に適した土地ではなかったでしょう。
そこで小麦を作り、さらに付加価値をつけて換金できるようにそうめんに加工して、今や、人気があるブランドそうめんとして知られるようになっています。
そうめんを作ること自体も、きっと繊維業と関係があったと思いますが、「撚り」という技術によって細くてもコシがあり舌ざわりのよい麺を楽しめる工夫を編み出したのだと思います。
けっして、半田町が最初から傑出した技術をもっていたわけではないと思いますが、人のやりとりや周辺地域とのやりとりはこんなよさを産むのだなと思って、面白いなあと思いました。