海藻は昔中国では稀少で薬の材料だった

乾燥わかめの袋をひっくり返すと中国産がとても多いです。しかし、中国では昔、海藻が採れず、輸入していました。また、貴重な海藻は、食品でなく薬の材料となり、皇帝や貴族に処方されていました。

海藻

海藻の歴史 (「食」の図書館)を読みました。原書房のこのシリーズ、私は好きです。翻訳書ですが。

中国は昔、海藻を輸入していた

少し前に、わかめを毎日たくさん食べてヨウ素摂りすぎにならない?という記事を書いたのでわかめを毎日食べるようになりました。

わかめを毎日たくさん食べてヨウ素摂りすぎにならない?
乾燥わかめを戻して毎日食べようと思いました。ヨウ素の過剰摂取が気になり調べましたが、海藻を当たり前に食べる日本人には、ヨウ素の過剰摂取の害は起きにくいようです。しかし、閉経後の女性は、ヨウ素を摂りすぎると、甲状腺がんの原因になるかもしれません。

それで、ある程度の量が入ったカットわかめ(乾燥)を買いに行くと中国産がほとんどではないかと思うくらいです。

ところが、昔は中国は海藻の輸入国だったそうです。

中国では、1912年の清朝終焉までは海藻はほとんどが高価な輸入品だった。(中略)毛沢東のもと1949年に中華人民共和国が建国されるまでこの状態が続いた。

そして文化大革命を代表とする一連の「改革」が30年近く続き、輸入品や海藻などのぜいたく品は一時的に禁止されるなど、非常に厳格な施策が導入された。

また耕作地への負担を減らすため、海産物の消費量を増やす策の一環として、海藻を海底に植え、あるいは海に浮かべた筏(いかだ)で海藻を養殖する試みも行われたが、うまくいったのはごく一部だった。(中略)

毛沢東の後継者たちは食料生産の急増を命じた。しかし耕作地が酷使されるのみで中国の海の資源開発は進まなかった。

そこで、第二次世界大戦後に海藻の養殖に成功した日本を参考にして熱心に養殖海藻の市場開拓を進め、輸出による収入を得て国民の食生活の改善に努力した。やがて劇的な変化が生じた。

中国が生産する海藻は、1980年には26万2000トン、2005年には154万2000トンまで増加したのである。今日、中国は世界最大の食用海藻の生産国だ。

日本人にとって海藻はとても身近です。

子供の頃、海岸を散歩すると昆布が流れついていて、食べはしなかったですが、拾って歩いたことを思い出します。中国はもともと海藻の生育には適していなかったようなことも書かれていました。

海水の温度が高かったとか

中国は長い海岸線をもつが、その沿岸部の海は比較的温かく、日本沿岸の海ほど海藻の生育に適していない。

このため当初は供給量がかぎられ、紀元5世紀には中国が、ヨウ素が豊富なコンブを北海道から輸入していたという記録が残る。

そのせいか、日本では海藻は食品ですが中国は薬の原料になっていたそうです。

中国で海藻は薬の材料

中国では海藻に本来薬効があると考え、薬として利用しました。具体的なレシピが書かれている箇所がありました。

貴族層向けの古代の書には「海藻酒」作りに関する記述があり、4世紀前半の「肘後備救方(ちゅうごびきゅうほう)」(応急処置法)にこう書かれている。

海藻酒

約0.5キロの海藻(ハイツァオ[学名 Sargassum siliquastrum])の塩分を洗い流す。この海藻を絹の袋に入れ、約1リットルの透明な酒(清酒 チンチュウ)につける。

春と夏には2日間海藻をつけておき、3日目以降に、この酒を1日に盃2杯飲む。飲んでしまったら、この海藻をまた1リットルの酒につけ、同様にして飲む。酒を飲んだあとに残った海藻は乾燥させ、これも内服する。

この酒はおいしいうえに、甲状腺腫の治療に用いられた。

この海藻はヨレモクというようです。

ヨレモク

さらに元の時代にはこんなことが書かれていたようです。

海藻は、陸地で採れた生薬に比べると文献に出てくる頻度が非常に少ない。1330年に中国で書かれた「飲膳正要(いんぜんせいよう)」でもそうだ。

これはモンゴル人による中国王朝である元(げん)の皇帝の健康維持のための料理書だ。掲載されたレシピはどれも、薬と食がほとんど区別されていない。

またこの料理書からは、モンゴル帝国が強大だったからこそ求めることができた異国のさまざまな品が宮廷に持ち込まれていたことがよくわかる。

ただし海藻は例外だ。稀少だったことは間違いがなく、貴族の医薬とされていた。甘草(かんぞう マメ科の多年草でさまざまな薬効をもつ)を含む薬を服用直後には、皇帝に海藻を食べるのを控えるよう忠告する内容もある。

この場合の海藻はホンダワラ属のヒジキまたはウスイロモク(学名 S.Pallidum)であり、薬茶(くすりちゃ)として飲まれることが多いが、錠剤で服用される場合もあった。

海藻が手に入りにくく稀少だった様子が分かります。その後も使われていて、さらに効果が発見されているようです。

元の時代から500年あまりのち、ホンダワラ属(学名 Sargassum)の海藻は「肝臓を癒やし、腫瘤(しゅりゅう しこり)をほぐす錠剤」の材料に使われていた。

これは清の11代皇帝、光緒帝(こうしょてい 1871~1908)の宮廷医が処方したものだ。

近年の研究では、「ホンダワラ属の海藻は抗炎症、抗ガン、抗菌、抗ウイルス性があり、また肝臓を守り、抗酸化作用をもつ」可能性が示唆されている。

まとめ

中国は海藻があまり採れず昔は輸入国でした。そのため、なのか、海藻は薬の材料となり貴重な扱いを受け、皇帝や貴族に処方されていました。

中国での海藻の使われ方を読むと、普段食べているわかめやダシを取る昆布にありがたみを感じます。

その後、中国では生産量が増え、1980年には26万2000トン、2005年には154万2000トンまで増加しました。今日、中国は世界最大の食用海藻の生産国となっています。

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