ケチャップの歴史はキノコからトマトへ

たまに食べたくなるナポリタン。しかし、使われているケチャップは、17世紀後半にイギリスでキノコや魚介類から作られたソースでした。アメリカにも輸出されていましたが、19世紀初めにトマトから作られるようになり、ハインツが世界に輸出する大メーカーになるとともに現在のような味ができ上がりました。

時々、ナポリタン食べたくなりません?

以前、神保町の近くで働いていた時、「さぼうる2」のナポリタンは外せない昼飯の1つでした。見た目ほど量はないですが、皿に大盛になったナポリタンが運ばれてくると、とてもうれしく思ったものです。私は「ナポリの山」と呼んでいました。

さぼうる 2 (神保町/洋食)
★★★☆☆3.49 ■予算(夜):~¥999

そのせいか、よく使うわけではないけどなんとなく冷蔵庫のケチャップを切らさないように買っています。

ピクルスと漬け物の歴史 (「食」の図書館) を読みました。

この本の中に、ケチャップは野菜の漬け物から生まれたと書かれていました。ケチャップといえば、トマトケチャップのことだと思っていましたが、トマトケチャップができるまでに歴史があるようです。

最初はキャチャップ(carchup)と呼ばれた

ケチャップの歴史は17世紀後半のイギリスに始まり、19世紀のアメリカまでかかります。

ケチャップ(ketchup)のもとは、キャチャップ(carchup)と17世紀後半にイギリスで呼ばれた中身がよくわからないアジアのソースにあります。

キャチャップという名称の由来は不明だ。同じく、このアジア生まれのソースの原材料も謎のままである。

現在のタイのフィッシュソースのような、魚を塩水に漬けた一種の魚醤だったのかもしれないし、1種類ではなくいくつもの商品だったのかもしれない。

この東南アジアの塩辛く奥深い味を再現したいとの願望から、イギリスの厨房ではさまざまな試みがなされた。

当時、イギリスでは、キノコ類の漬け物からしみ出す黒っぽい濃厚な液体が味のよい調味料になることが分かり、東南アジア生まれのソースと似ていることからその謎のソースを再現しようということになったのです。

トマトとはほど遠い話です。

イギリスでの初めてのケチャップ

イギリスでできた最初のケチャップのレシピが紹介されていました。

アンチョビー、タマネギの一種のエシャロット、白ワイン、酢、セイヨウワサビ、レモンピール、香辛料を用意した。

これらの材料を混ぜて煮立て、瓶詰めにする。1週間寝かせるあいだ、毎日瓶を振る。

魚が入っているので、しつこさがあるのとダシが出るだろうなと予想できますが、エシャロットを始め、その他の材料がくさみを消すものばかりなので、案外、あっさりしたものではなかったかと思います。

より濃厚なものを

ソースは濃い方がうまいに決まっています。それで、さまざまな試行錯誤が行われました。

最初はキノコ類から始まり、すぐに青いクルミ、アメリカニワトコの実、キュウリ、ザルガイイガイ、カキが続いた。

濃厚で複雑な味わいの調味液を作るために、塩水や酢に漬けたそれらの食材に、ストロングエール、赤ワイン、アンチョビー、ニンニク、セイヨウワサビ、シェリー酒またはポートワインを加える。

最後に全体を濾して香りづけの材料は捨て、残った液体を煮詰める。こうしてできた芳しいケチャップは大流行した。

青いクルミがわからなかったので検索すると木からクルミの実を取って食べるまで。という記事が出て来ました。写真をたくさん載せて説明されている丁寧な記事です。腐らせて種をとるなんて初めて知りました。

このレシピのケチャップでは貝を使ったようです。ストロングエールはビールの1種です。出来上がりが想像できないのですが、かぐわしいと書かれているので、香りがよかったのでしょう。

このタイプのケチャップが人気を呼び、大量生産されるようになるそうです。年代的には1780年頃のことです。

トマトケチャップはアメリカ生まれ

アメリカには、上で紹介したレシピのケチャップと料理本がイギリスから入りました。ケチャップはアメリカでも人気が出たそうです。

そして、19世紀初頭にトマトケチャップのレシピが出版されました。

1804年、フィラデルフィアの卓越した科学者ジェームズ・ミースが「ラブ・アップル(トマト)」は「おいしいケチャップ」になると述べた。

6年後、ミースは世界初となるトマトケチャップのレシピを出版する。トマトを薄切りにし、塩をふってひと晩寝かせる。

翌日やわらかくなるまで煮て、メースやオールスパイスで風味をつけ、エシャロット少々とブランデーとともに瓶に詰める。

トマトを薄切りにして塩をふるとすぐにおいしくなります。私の友人にトマトがあればいくらでもビールが飲めるという人がいますが、その気持ち、わかります。

トマトが好きな方ならわかると思いますが、生トマトは味の濃さにかなりブレがあります。水っぽくて味が薄いとガッカリします。しかし、そんな時でも塩をふるとうま味が感じられるようになります。

料理が好きな方なら、トマト缶を煮詰めて塩をふるとうま味が強くなるのをご存知でしょう。

もちろん、これだけではありません。

初期のトマトケチャップのレシピはすぐに改良された。調味料がたっぷり加えられるようになり、タマネギ、エシャロット、ニンニク、コショウ、セイヨウワサビ、アンチョビーに加えてマスタードや黒コショウ、粉トウガラシ、オールスパイス、クローブ、ショウガが使われ始める。

やがて防腐剤として酢も加えられるようになった。

この時点でかなりおいしそうです。トマト自体がおいしいですからね。

クローブは私もカレーを作る時に使います。独特の香りがあります。以前、クローブ(丁子)の効果:カレーに使うスパイスという記事を書きました。

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砂糖が加えられ酢の使用量が増える

この記事の最初に、ナポリタンの話を書きましたが、トマトソースのスパゲティとナポリタンでは違いがあります。ナポリタンはケチャップ味です。

トマトソースはかなり酸味がありますが、トマトソースだけでナポリタンを作っても、ナポリタンになりません。

ケチャップの味に欠かせないのはほのかに感じる砂糖(甘さ)なんだろうなと思いました。

世界最大のケチャップメーカーであるハインツがトマトケチャップの販売を始めたのが1876年だったとあります。もちろん、世界に輸出するメーカーになります。その間に味にも変化がありました。

市販のケチャップの甘酸っぱい味は、鮮やかな色と強い粘性と相まって、アメリカの消費者の心をとらえた。

伝統的なレシピは変化し、「改良」された。何より大きな変化は、砂糖と酢の使用量が数十年のあいだに大幅に増えた点だろう。

こうしてトマトの甘味と酢の酸味が感じられる典型的な現代のアメリカのケチャップができあがったのである。

まとめ

ケチャップはもともとイギリスでキノコソースがもとになって作られました。その後、アンチョビーや貝などが入れられるようになります。そして量産されるようになりました。

ケチャップは料理本と一緒にアメリカに渡り、ここで、トマトを主な材料として使う一大変化が起きます。

ハインツが量産を始め、世界最大のトマトケチャップメーカーになります。

その間に、砂糖が加えられ酢が足されて現在のような粘度があるケチャップができ上がりました。

トマトが好きなので、いくつか記事を書いています。