ヴィム・ホフ・メソッドには低温の水に浸かるコールド・トレーニングと呼吸法があります。コールド・トレーニングは血管を柔軟にし、燃えやすい褐色脂肪細胞を増やし、白血球を増やします。呼吸法によって酸素がたくさん吸えるようになりエネルギーがたくさん作られます。コールド・トレーニングを読んでいて温冷浴を思い出しました。
氷漬けになった男が表紙の本
少し前にツイッターを見ていたらとんでもない表紙の本をすすめる記事が流れて来ました。「ICEMAN 病気にならない体のつくりかた」という本です。
私は北海道で生まれ育ったので、寒いとか冷たいとか痛い感覚にはなじみがあります。しかし、氷の中に入浴する?のはとても普通のことではないので、興味を持って本を取り寄せました。私の感覚だと流氷の中にわざわざ入るようなものです。
しかも、その本に、「病気にならない体のつくりかた」とテレビ番組みたいなタイトルがついているので、何だこれは?と思いました。氷水に浸かると体が強くなるのでしょうか ―― ?
ヴィム・ホフ・メソッドは、コールド・トレーニングと呼吸法の2つ
氷水に浸かるのはヴィム・ホフ・メソッドと呼ばれる方法の1つです。コールド・トレーニングと呼ばれています。ヴィム・ホフ・メソッドにはもう1つ呼吸のトレーニング法があります。
コールド・トレーニングの目的
低温にさらすと体が冷えます。特に毛細血管を収縮させることに意味があるようです。
毛細血管を鍛えてやわらかくする
たとえば冷たい湖に入るなどして低温にさらされると、身体は自動的に生命維持にかかわりの薄い部分への血流を止める。(中略)小指の先まで充分な血液を届けるよりも、心臓を動かし続けることのほうがずっと大切だからだ。(中略)
こうして四肢につながる動脈が収縮し腕や足に供給される血液が減ることで、生命維持に欠かせない臓器 ― すなわち心臓や肝臓、肺、腎臓など ― は機能し続けられるだけの血液を確保できる。四肢への血流が制限されると腕や足がうずき始め、やけどしたような感じがするかもしれない。だが再び身体が温まれば、血管は拡張されて血行は通常の状態に戻る。
冷たい雪の中に手を入れていると、痛くなったりしびれたりします。その後ストーブにあたって手を温めると、かゆいようなしびれが解消する時特有の感覚があって元に戻ります。子供の頃よくやりました。
毛細血管を収縮させ元に戻すことを繰り返すことで、血管が収縮・拡張し、血管の柔らかさを取り戻すことを目的としているようですね。
脂肪を燃やす褐色細胞を増やす
体の中で脂肪をためるのは脂肪細胞です。脂肪細胞には白色脂肪細胞と褐色脂肪細胞があります。褐色脂肪細胞にはミトコンドリアがたくさんあり、脂肪を燃焼させるのに役立つのですが、コールド・トレーニングを行うことで、褐色脂肪細胞が増えると説明されています。
「コールド・トレーニング」を積み重ねることで、ヴィムは多くの「褐色細胞」を持つようにもなった。これが身体を温かく保つことを、さらに容易にしている。ちょっと奇妙に思うかもしれないが、褐色細胞は「脂肪が脂肪を燃やす」という現象を体内で起こしているのだ。
体が冷え切った状態になると死んでしまうのですから、何とか熱を作りだそうと適応するのです。太り過ぎの人にはよい刺激になるでしょう。
これは以前、私も脂肪をため込む脂肪細胞は肥満すると増えるよという記事を書いたことがあります。
免疫に関係する白血球が増える
本の中には『白血球が増え免疫力が上がる「コールド・トレーニング」』とタイトルをつけられて2ページほど説明が書かれていましたが、なぜ白血球が増えるのか?詳しい説明は書かれていませんでした。
オランダ血栓症基金による調査では、毎日冷水シャワーを浴びる人も白血球が多いという。この白血球の増加について研究者たちは「免疫機構が活性化することで白血球がさらに生成されるからだ」と説明している。
冷水シャワーと氷水の入ったボウルで始める
コールド・トレーニングの(多分初期の)具体的方法として、冷水シャワーと氷水の入ったボウルについて説明が書かれていました。1ヵ月続けるとよいそうです。
冷水シャワー
冷水シャワーは、普段通りの温かいシャワーを1分浴びて3~5秒間隔で吸って吐いてをくり返し、呼吸を整えます。その後少しずつ温度を下げて1~2分、呼吸のペースを変えず冷水シャワーを浴びるというものです。
氷水の入ったボウル
両手が入る大きめの容器に冷水を入れ、氷を入れます。0℃近い水に手を入れると冷たさよりも痛みを感じますが、しばらく入れているとそれを感じなくなり手が温かくかんじるようになります。そうしたら、両手を出します。
呼吸法はゆっくり吸って吐くことが基本
こちらは簡単です。普段の自分の1分間の呼吸数を観察し、それよりも意識的にゆっくり呼吸するようにするのです。呼吸をゆっくりするとリラックスすることはよく知られているので、説明はいらないと思います。息を止める過程を入れると、段階を追って酸素がたくさん入って来るようになります。
ゆっくりと息を吸ってゆっくりと吐く。その時に最後まで吐ききらない。(苦しくならないためにでしょう)それを30回。
次に同じくゆっくり息を吸ってゆっくり吐く。今度は最後まで吐ききり、その反動があるので思い切り息を深く吸う。
その次に、息を吐いた時に止めます。そして吸いたくなったら吸うようにします。酸素がたくさん入って来るとエネルギーがたくさん作られるようになります。
本を読んで興味をひかれたところ
極寒の中で体温を上げるテクニックツンモについて書かれていました。また、呼吸をゆっくりにすると、吸った時吐いた時で鼓動のリズムも微妙に変化するものですが、それが当たり前なのだと初めて知りました。
ツンモ
ヴィムの「呼吸エクササイズ」の源流はチベットのツンモという瞑想技術にある。(中略)ツンモでは、呼吸に視覚イメージを組み合わせる。深く息を吸い、ゆっくりと吐く呼吸を繰り返す際に炎を思い浮かべる。これは体温を上げる助けになるが、決して新年が引き起こす奇跡といった類(たぐい)のものではない。
私がツンモのことを知ったのは、成瀬雅春さんのヒマラヤ聖者が伝授する《最高の死に方&ヨーガ秘法》の本を読んだ時でした。この本は、小説仕立てのヨーガ指南書でとても面白いです。
心拍の「揺らぎ」は健康のバロメーターだった
私はヨガの呼吸法の練習をしていますが、吸った時と吐いた時の心拍のリズムの違いに気がついていて、少し不安に思っていたのですが、当たり前のことでした。よかった。
心拍変動とは脈と脈の間の時間の変化を指すものだ。(中略)たとえば安静時の心拍数が1分間に60の人が、毎拍のあいだにかならず約1秒間の間があるとしたら、ストレスなどにより身体のパフォーマンスが低下した状態だ。(中略)
一般には心拍は安定していた方がいいと考えられがちだが、心拍の間隔には変化があることが大切だ。健康的な心拍は、安静時には息を吐くときよりも吸うときのほうが速い状態にある。つまり呼吸にともなって心拍に変動が生じるわけだ。
アドレナリン値が高まり炎症が抑えられる
アドレナリン値が高くなると炎症が抑えられる。逆かと思っていました。これは改めて調べてみようと思います。
バンジージャンプをしている人と同等か、それ以上にアドレナリン値を高められることは非常に意義深い。アドレナリンは炎症過程を抑制することが知られているため、非常に大切なホルモンだ。慢性的なストレスは健康に害を成すが、制御された強烈なストレスは人間がつくり出す薬のひとつなのである。(中略)
ヴィム・ホフ・メソッドを実践したグループは、自分の身体がつくり出すアドレナリンを利用することで、なんと炎症反応の50パーセントを抑えるという驚きの効果を達成した。
この研究結果は『ネイチャー』や『PNAS』といった主要な科学論文誌で発表された。
改めて温冷浴のことを思い出した
この本を読んでいる途中から頭にずっと浮かんできたのは、温冷浴のことです。ずいぶん前のことですが、ほぼ半年以上毎日のように温冷浴をしていたことがあります。やらなくなったのは、水道代がバカ高くなるので、禁止令がでて止めました。
温冷浴については記事を書いています。
温冷浴は、氷水に浸かるところまで求められませんが、水に浸かり、お湯に浸かりを繰り返して、冷たさ熱さの刺激を感じなくなったら最後に水に浸かって上がります。
風呂の湯がとても汚れますが、石けんで洗うより体がきれいになります。そして、爪とくちびるの色がとてもきれいになるのが印象的でした。もちろん、気分もすっきりし、少し体重が減ります。
ヴィム・ホフ・メソッドほど極端な低温を求められませんが、同じような効果がありそうだなと思いました。
NOTE
私は毎朝ヨガをしているので、呼吸が大切なのことは実際にできているかどうかは別として知っています。氷温の水に浸かりたいとはあまり思いませんが、低温の水に浸かるという単純なことで体に刺激を与えて、元気に生きて行けるのはとてもよいと思いました。自分の体を観察できるところがよいですね。
本には病気の改善についても書かれていました。ご興味があれば読んでみてください。