食べ物さん,ありがとうは、全部で3冊あります。その中の最初の本です。時々読み返すと、都度新しい発見があり、そこから調べものが始まります。手放せない本です。
「食べ物さん,ありがとう」は川島四郎先生ファンによく知られた本だと思います。漫画家のサトウサンペイさんとの対談本です。1986年7月に朝日文庫から第1刷が出て、私がもっているのは、1989年2月に発行された第8刷です。
なかなか人気があった本みたいです。読むとわかります。この本はたまに読み返すとまた新しい発見があります。
川島四郎先生を紹介する記事は、ウイキペディアの川島四郎に書かれていますが、この本のまえがきでサトウサンペイさんが書かれた紹介文の方が、ずっと面白い。
ちょっとご紹介しましょう。
「何しろね、グアム島で横井庄一さんが発見されたとき、そのあと、自分も行って、穴の中で四日ぐらい泊まってこられたんだ」
「どうしてなんですか?」
「横井さんがどんなものを食べていたか、栄養学者として見届けておく必要があるってね。それで、ぼくも羽田まで見送りに行ったんだ。お弟子さんの岸田さんや、みんなでロビーで待っているんだが、なかなか来られないんだよ。
何しろご高齢だからね。ずいぶん心配していたら、出発の三十分ほど前にね、スタスタと登山帽に半ズボンルックの軽装で現れて、サッサッと行ってしまわれた。なれたものよ。
戦前から世界中を回っておられたんだからね」
「へー・・・‥」
川島先生は家が京都で家系がみな絵かきさんという芸術一家である。昔のことで一人くらい軍人さんにと、川島先生だけが陸軍経理学校に行かされ、さらに、そこの大学部を卒業。
「当時、首席から三番まではハクヅケのために、さらに東大法学部に入れられたんです。しかし、私は兵隊の体を丈夫にするのが、強い陸軍をつくる根本になると考えるので、農学部で食糧と栄養の研究をやらせてほしい、と陸軍省にダダをこねました」。
異例のことだが、許されて農芸化学に入られる。そのときの主任教授が、かのビタミンB1発見者の鈴木梅太郎博士であった。
自分でもためして自分の体で検証した話が多いので面白いのです。よい紙を使った本で、サトウサンペイさんの挿絵はカラーで描かれています。
中身を知りたい方のために目次をご紹介しておきます。
- おなかの中でいろんな酵素が働いている
- 年相応、食べ物を獲得する力に応じて食べる
- 赤い血を作るのに欠かせない青野菜
- お腹がすいたときに少しずつ食べる
- 育ち盛りには小魚骨ごと「丸のまま」を
- カルシウムはイライラを鎮める
- にくづき偏の「脂」は駄目、さんずい偏の「油」がいい
- 酸っぱい果物と種子が活力を生む
- アフリカの百五歳、長生き婆さんも青野菜が大好き
- 生命力にあふれた米と麦に惚れこもう
- 豆腐は夏バテに最高の食品
- 内臓(わた)も骨も食べてしまおう。魚は栄養の”宝庫”