おひたし、よく食べますか?青い葉っぱは葉緑素が豊富で、赤血球のヘモグロビンをつくるために必要です。1日に青い葉っぱを400gおひたしにして食べる必要があるそうです。ゆでる時間は30秒。昔の栄養の本はとても参考になります。
川島四郎先生の日本食長寿健康法を読みました。
おひたしは葉緑素
私がまだ子供だった1970年代初め、青い野菜は葉緑素だから体に必要だと家庭科(?)で習ったような記憶がかすかにあります。
今は、健康に関する情報があふれていて、細かい栄養成分についても「○○にいい」「××にいい」と解説されます。
しかし、葉緑素についてはあまり聞いたことがありません。しかし、この本の著者、川島四郎先生は、昔の栄養学の先生ですからきちんと書かれています。
ご存じのように青色野菜の青さは葉緑素によるもので、青ければ青いほど葉緑素が余計に含まれている。
この葉緑素が、じつはわれわれの体内を流れる血の中の、ヘモグロビンをつくるために欠くことのできないものなのである。
これは、葉緑素とヘモグロビンの分子式を見れば一目瞭然(いちもくりょうぜん)である。簡単に言えば、両方ともピロール核というものを四つ持っている点でまったく同じ形をしている。
そして、その四つのピロール核を結ぶ中心にマグネシウムの分子があるものが葉緑素で、鉄の分子のあるものがヘモグロビンというわけだ。
すなわち、ヘモグロビンと葉緑素は、色は赤と緑でまったくちがうが、本体はほんの一部分が異なるだけの、双子の兄弟のようなものだ。
マグネシウムが鉄に変わればすぐヘモグロビンになるわけで、現実に体内ではそれを行うことによって、血液をつくっているのである。
葉緑素とヘモグロビンを比べる
実際に、葉緑素とヘモグロビンを構成するヘムを比べてみましょう。
葉緑素とヘムの構造式を調べました。これは細胞の分子生物学第4版に出ていた図を真似して描きました。ちなみに、最新版は第6版が出ています。
葉緑素とヘムを比べると、葉緑素の場合、4つのN(窒素)に囲まれた中央にMg(マグネシウム)が入っています。一方、ヘムの場合は、Fe(鉄)が入っています。
葉緑素には長いしっぽがついていますが、中心部分は確かによく似ています。形がよく似ていることを確認して、次に行きましょう。
おひたしは二把分食べる
おひたしはおいしいですが、どのくらい食べたらよいのでしょう?
昼に食べる定食についてくるおひたしは、小鉢に入っていて一口二口で食べられる量ですが、どうもそれでは全然足りないようです。
1日400gの青菜を食べる必要があると書かれています。400gは八百屋さんで買うホウレンソウや小松菜が2把分だそうです。
最近、産地によって1把の量がまちまちなので、一度キッチンはかりで重量を調べてみたほうがよいかもしれません。
今日、さっそく私が八百屋さんで買ってきたほうれん草は、1把360gありました。これなら1把食べればよいでしょう。
おひたしの歴史は相当に古いが、これもわれわれの先祖たちが葉緑素の重要性を痛感し、「どうすれば青い野菜をおいしく、たくさん食べることができるか」と工夫を重ねてきた、その賜物(たまもの)と言うべきものだ。
ともかく、これを山盛り食べるように心がけてほしい。
では、山盛りとはどの程度かといえば、一人一日四百グラムは食べたいところだ。ホウレンソウやコマツ菜は一把(わ)が約二百グラムなので、一人分は二把ということになる。
一度で食べてもいいし、二、三回に分けてもいいから、毎日、これだけの量は食べていただきたいのである。
「こんなにたくさん食べなければいけないの?」と思う方もいようが、その通り。これだけの量の青野菜を人間の身体(からだ)は必要としている。
おひたしの材料は、青ければ青いほどいい。ホウレンソウ、コマツ菜、ニラ、ミツバ、それにニンジンやダイコンの葉などは、最高の葉緑素源である。(中略)
和野菜だけでなく、洋野菜にもすぐれた緑野菜があるので充分に利用したい。チンゲン菜などの中国野菜やブロッコリーなどはホウレンソウなどと同じく、アルカリ土金属をすべて含んでいる。
400gとは、なかなか、すごい量だなと思います。
簡単におひたしにできる野菜は、ほうれん草、小松菜、チンゲンサイでしょう。せっかくなので、それぞれの栄養成分を並べて比較してみましょう。
ほうれん草、小松菜、チンゲンサイの栄養成分
それぞれ生の葉っぱについて調べてみました。
ただし、おひたしを食べるのは葉緑素をとることであるというのがこの記事の主旨なので、栄養成分を単純に比較してもあまり意味がないと思ってください。
八百屋さんで買うときに、小松菜が一番栄養バランスがとれているんだなと思い出していただければよいのです。小松菜は、カルシウムも鉄も多いです。400gだと下表の数字の4倍になります。
こまつな葉生 | ほうれんそう葉生 | チンゲンサイ葉生 | |
カロリー | 14kcal | 20kcal | 9kcal |
水分 | 94.1g | 92.4g | 96.0g |
たんぱく質 | 1.5g | 2.2g | 0.6g |
脂質 | 0.2g | 0.4g | 0.1g |
炭水化物 | 2.4g | 3.1g | 2.0g |
カリウム | 500mg | 690mg | 260mg |
カルシウム | 170mg | 49mg | 100mg |
マグネシウム | 12mg | 69mg | 16mg |
リン | 45mg | 67mg | 27mg |
鉄 | 2.8mg | 2.0mg | 1.1mg |
亜鉛 | 0.2mg | 0.7mg | 0.3mg |
β-カロテン | 3100μg | 4200μg | 2000μg |
レチノール活性当量 | 260μg | 350μg | 170μg |
ビタミンD | 0 | 0 | 0 |
α-トコフェロール | 0.9mg | 2.1mg | 0.7mg |
ビタミンB1 | 0.09mg | 0.11mg | 0.03mg |
ビタミンB2 | 0.13mg | 0.20mg | 0.07mg |
葉酸 | 110μg | 210μg | 66μg |
ビタミンC | 39mg | 35mg | 24mg |
食物繊維総量 | 1.9g | 2.8g | 1.2g |
小松菜については、以前、小松菜は栄養のバランスがよくて性能がいいなという記事を書いています。
ほうれん草については、以前、ほうれん草はゆでて食べるとβカロテンがたくさんとれるという記事を書いています。
よかったらそちらもお読みください。
草だけを食べている動物に胃がんはない
青い葉物野菜がからだによいのはいうまでもないことですが、草だけを食べている動物に胃がんがまったくないというのは驚きました。
病気といえば、もっとも怖いのがガンだが、牛、馬、羊など草だけを食べている動物に胃ガンがまったくみとめられないということをご存じだろうか。
また、ブロッコリーを多食する地方の人たちにも胃ガンを患った(わずら)人がほとんどいないと言われている。
今の栄養学でまだ解明されていないのは残念だが、青い野菜のなかにはガンを発生させない要素が含まれていることをうかがわせている。
高血圧、脳出血の予防にも青い野菜は絶大な効果を発揮するといわれる。これも、青い野菜のもつ、
- アルカリ性食品なので、血液の粘りを少なくして血圧を下げる
- 葉緑素が多いのでヘモグロビンが増し、体内への酸素をはじめ、諸栄養の配給が都合よくいく
- 野菜には繊維が多いので便通がつきやすく、便秘になりにくい
- 青い野菜にはあらゆるビタミンが含まれている
- 疲労回復に有効な多くの有機酸が含まれている
―などの点が、これらの成人病の予防にもつながるというわけである。
おひたしを作るときはお湯の中で30秒
おひたしを作るとき、沸騰したお湯でゆでる時の「ゆで時間」が気になります。
なんとなく十分にゆでないといけないのではないかと思ってしまいます。しかし、小松菜はアクがなく生でも食べられるくらいですから、ゆでて柔らかくして食べやすくすると考えるのがよいと思います。
ゆですぎると温め直した味噌汁の具のようになるので食べてもおいしくありません。本には30秒くらいでよいと書かれています。
おひたしは三十秒ぐらいでゆであげるのがコツである。青い色が濃ければ葉緑素もそれだけ多いわけで、ゆでる時間がすくなければ青さもそれだけ消えずにすむ。
ビタミンCも、三十秒ぐらいなら一〇パーセント程度しか損失しない。
小さい鍋で1把ゆでるのはなかなか大変です。全体がお湯の中に入るまでに時間がかかってしまいます。
ご家庭にある一番大きな鍋でお湯をたっぷり沸かしてゆでるのがコツです。
まとめ
おひたしは嫌いではないですが、普段、生野菜を食べていると、何となく食べる頻度が少なくなってしまいます。
調べてよさが分かると、毎日食べるようにしようと思いました。
ところで、わかめや昆布など海藻にも葉緑素がたくさん含まれています。
昆布はヨウ素が多いので、食べすぎに注意する必要があると思いますが、乾燥ワカメを大袋で買って来て毎日食べているのもよさそうです。特に、いまのように野菜が高い季節には重宝します。