ごまはたんぱく質と脂質が多い食品です。ミネラルではカルシウム、マグネシウム、リン、鉄、亜鉛、銅が多いですが、カルシウムがずば抜けて多いです。カルシウムは表皮にとても多く、むいてしまうと激減します。そのため、食べるならむきごまでなくすりごまがよいです。
川島四郎先生の日本食長寿健康法を読みました。
ごまペーストを食べていたことがあります
20年前のこと。当時、まだ30代なのに白髪がぐっと増えたので、黒ごまペーストを食べるようになりました。豆腐の上にのせたり、パンを焼いてバターのかわりに塗って食べたりしました。
残念ながら髪はさらに白くなるだけでしたが、黒ごまペーストはおいしいなと思いました。
しかし、ごまはその気にならないと買って来て食べようと思わないものです。いつからか忘れてしまいましたが、ごまをもらったことはあっても、買って来た記憶がありません。
リノール酸が多いから避けていたのだが
そして、特にここ数年、リノール酸を摂りすぎるとよくないという話を聞いてからは、リノール酸が多いごま油もごまも避けてきました。
摂りすぎたリノール酸が体の中でアラキドン酸に変換されると、プロスタグランジンという炎症がひどくなる物質の原料になるというのがその理由なのですが・・・。
しかし、ごまは昔から体によいといわれているので、改めてごまについて調べてみようと思いました。
栄養成分にも興味がありますが、それよりももっと興味があるのは、昔の人がごまをどのように評価していたかです。
仙人が食べていた胡麻
まずは、いつもの川島四郎先生の本をひっくり返していたら少し書かれていました。
仙人が食べていた胡麻
胡麻の「胡」の字は、中国を中心にした四周の国のうち、西北方に当たる国々をさしたものだ。胡瓜(きゅうり)、胡椒(こしょう)、胡弓、胡蝶(こちょう)などいずれもその方面の国から入ってきたものだという意味で、胡麻もその例にもれない。
アラビアンナイトの古い物語にも、胡麻がでてくるのである。
したがって、胡麻は日本列島古来の土着植物ではなくて、古代に中国から直接、あるいは朝鮮半島を経て渡来したものである。
現在、日本で収穫される量はわずかで、毎年六万トンぐらいを中国、スーダン、南米各地から輸入している。
胡麻は昔から、栄養豊富な食物ということで、携帯食や不老長寿の食物として用いられていた。皮を除いて食べると一層、消化もいい。
兵糧丸(携帯口糧、八戸せんべい、南部せんべい)に使われたのをはじめ、山伏(やまぶし)、山の先達(せんだつ)、仙人、山にこもる僧侶(そうりょ)、狩人(かりゆうど)などは、いずれも胡麻を携えていたものだ。
また、乃木(のぎ)将軍が弁当の副食に必ず胡麻味噌(みそ)を入れていたのも、こういう事実を評価してのことである。
これを現代の栄養学にてらしてみると、「なるほど」と思える点が非常に多い。
タンパク質や脂肪分が多いことは周知のことだが、とくにあげていいたいのは、胡麻にはミネラル、カルシウムが法外に多いことである。
たいていの食品は焼いて灰にすると、どれも一パーセント前後の灰分しか残らず、二パーセントを残すものとなるとごく少ない。
ところが、胡麻を焼いて灰にすると、五パーセントにもなるのである。
現今の栄養学ではまだ充分に解明されていないが、この灰分中の微量元素が胡麻を「不老長寿の食物」たらしめるのに大きな役割を担(にな)っていることは、間違いのないところだろう。
カルシウムが法外に多いと書かれています。まず栄養成分から調べてみましょう。
ごまの栄養成分
ごまの栄養成分を調べてみました。乾燥させたもの、むきごま、いりごまです。
ごまには白ごま黒ごま、そして金ごまもありますが、日本食品標準成分表では、区別されていなかったので、栄養成分として特別な差はないのだと思います。
たんぱく質と脂質が多い
表を見ると、たんぱく質は肉並みに多く、全体の半分以上を脂質が占めます。油を絞れるのですから当たり前です。炭水化物は少ないので、低糖質食品ですね。
カルシウムが多い
表を見ると、確かにカルシウムが突出して多いことが分かります。ただし、むきごまでは激減します。つまり表皮にたくさん含まれているのでしょう。
皮を除いて食べると消化がよいと書かれていましたが、皮をとってしまうのはもったいない。それで、すりごまにするのでしょう。
ごまを一度に100g食べる人はいませんが、10gで120mgと考えれば、カルシウムは多いです。
マグネシウム、リン、鉄、亜鉛、銅も多い
カルシウムとともに骨に関係があるマグネシウムが多く、不足することはまずないのですが、リン。そして、鉄もそこそこあります。そして成人男女に1日8~10mg必要とされる亜鉛も多く、また成人男女に1日0.6~0.9mg必要とされる銅も多いです。
ごま/乾 | ごま/いり | ごま/むき | ||||
エネルギー | 586kcal | 599kcal | 603kcal | |||
水分 | 4.7g | 1.6g | 4.1g | |||
たんぱく質 | 19.8g | 20.3g | 19.3g | |||
脂質 | 53.8g | 54.2g | 54.9g | |||
炭水化物 | 16.5g | 18.5g | 18.8g | |||
灰分 | 5.2g | 5.4g | 2.9g | |||
食塩相当量 | 0 | 0 | 0 | |||
ナトリウム | 2mg | 2mg | 2mg | |||
カリウム | 400mg | 410mg | 400mg | |||
カルシウム | 1200mg | 1200mg | 62mg | |||
マグネシウム | 370mg | 360mg | 340mg | |||
リン | 540mg | 560mg | 870mg | |||
鉄 | 9.6mg | 9.9mg | 6mg | |||
亜鉛 | 5.5mg | 5.9mg | 5.5mg | |||
銅 | 1.66mg | 1.68mg | 1.53mg | |||
マンガン | 2.24mg | 2.52mg | 1.23mg | |||
ヨウ素 | Tr | Tr | 1μg | |||
セレン | 10μg | 27μg | 43μg | |||
クロム | 4μg | 4μg | 1μg | |||
モリブデン | 92μg | 110μg | 120μg | |||
レチノール | ‘(0) | ‘(0) | ‘(0) | |||
αーカロテン | 0 | Tr | Tr | |||
βーカロテン | 8μg | 7μg | 2μg | |||
βークリプトキサンチン | 1μg | 1μg | 1μg | |||
βーカロテン当量 | 9μg | 7μg | 2μg | |||
レチノール活性当量 | 1μg | 1μg | Tr | |||
ビタミンD | ‘(0) | ‘(0) | ‘(0) | |||
αートコフェロール | 0.1mg | 0.1mg | 0.1mg | |||
βートコフェロール | 0.2mg | 0.2mg | Tr | |||
γートコフェロール | 22.2mg | 23.4mg | 31.9mg | |||
δートコフェロール | 0.3mg | 0.4mg | 0.5mg | |||
ビタミンK | 7μg | 12μg | 1μg | |||
ビタミンB1 | 0.95mg | 0.49mg | 1.25mg | |||
ビタミンB2 | 0.25mg | 0.23mg | 0.14mg | |||
ナイアシン | 5.1mg | 5.3mg | 5.3mg | |||
ナイアシン当量 | 11mg | 11mg | 11.1mg | |||
ビタミンB6 | 0.6mg | 0.64mg | 0.44mg | |||
ビタミンB12 | ‘(0) | ‘(0) | ‘(0) | |||
葉酸 | 93μg | 150μg | 83μg | |||
パントテン酸 | 0.56mg | 0.51mg | 0.39mg | |||
ビオチン | 11.7μg | 14.8μg | 10.6μg | |||
ビタミンC | Tr | Tr | ‘(0) | |||
水溶性食物繊維 | 1.6g | 2.5g | 0.6g | |||
不溶性食物繊維 | 9.2g | 10.1g | 12.4g | |||
食物繊維総量 | 10.8g | 12.6g | 13g |
ごまはカルシウムがとても多くていいなあと思っていたら、それに少し水を差すような話ですが発見してしまいました。
ごまのカルシウムはシュウ酸と結合している
ゴマの科学を読んでいたら、こんなことが書かれていました。
ゴマには2%近くシュウ酸が含まれる.そのシュウ酸はほとんどが種皮に存在するので,種皮を除けばシュウ酸は大幅に減少するが,ゴマのカルシウムもシュウ酸カルシウムとして種皮に存在するので脱皮することによりカルシウム含量も減少する.
食品中に存在するシュウ酸はカルシウムと結合してカルシウムの利用を悪くしている.シュウ酸カルシウムの利用に関してはホウレン草についていくつかの研究があり,ホウレン草のカルシウムの利用はシュウ酸の少ないキャベツのカルシウムに比べ1/4~1/10くらいとされている.
一般にシュウ酸は吸収されることなく排泄されるが,多量のシュウ酸を摂取したとき,体内に吸収され,体内のカルシウムと結合して不溶性のシュウ酸カルシウムを形成し,腎臓結石や膀胱結石の原因となる.
しかし,最近の報告によるとヒトや実験動物にはシュウ酸を分解する大腸菌が存在し,この菌の作用により一部のシュウ酸は分解され,シュウ酸と結合していたカルシウムは大腸から吸収され利用されるようである.
この大腸菌は適応増殖するので,シュウ酸の多量摂取をつづけるとシュウ酸の分解量は増し尿中に出現するシュウ酸量は減少する.
毎日ゴマを食べつづければ,ゴマのシュウ酸を分解する細菌の作用も増し,ゴマのカルシウムの利用が高まることも期待できる。
シュウ酸カルシウムは体の中で使えないと考えておきましょう。
早速、ホウレン草とキャベツのカルシウムを調べてみました。日本食品標準成分表2015年版(七訂)から引用します。
キャベツ/葉生 | 43mg |
ほうれんそう/葉生 | 49mg |
調べてみると、カルシウムの含有量は似たようなものでした。すると、利用率はホウレン草に含まれるカルシウム量の1/4~1/10になると考えればよいのかと思いました。
ゴマに含まれるカルシウムは半分が有効
さらに、ゴマ種子中のカルシウムの分布という論文を読むとさらに詳しく分かりました。論文中、表1をカルシウム分だけ書き写した表です。
ごま種子 | 全Ca | 有効Ca |
洗いごま種子 | 1,210 | 574 |
いりごま種子 | 1,220 | 643 |
むきごま種子 | 62 | 39 |
だいたい半分が使えると考えればよさそうです。ごまを一度に100g食べる人はいませんが、風味がよいので、意外と食べるものだと思います。炒りたてのごまの香りはとても魅力的です。
玄米にごまをかけて食べるのはカルシウムだったか
それで思い出したのは、玄米にごま塩をかけて食べる話です。
私はもう15年以上玄米を食べています。ごま塩はかけていません。何でごま塩をかけて食べるのかなと思ったことがあります。しかし、これで理由が分かりました。
以前、玄米にはリンが多いという記事を書きました。
玄米に含まれているリンとバランスを取るためにカルシウムを摂る必要があり、カルシウム:リンは1:1もしくは1:2が理想的であると知りました。
玄米にごまをかけるのはカルシウムを摂るためだったのです。今は、玄米を食べながら青野菜を必ず食べるようにしています。ごまも玄米にかけて食べるだけでよいのですから私もやろう。
ごますり用のミルを買って来た
早速、ごまを買って来ました。すりごまを買ってもよいのですが、コーヒー豆を買うのと同じで挽いてしまえば風味が落ちるのは早いです。それでいりごまを買って来て、ごますり器を買いました。買ったのはこれ。
食べ慣れたら乾燥ゴマ1キロを買って来て、自分で炒るようにするつもりです。乾燥ゴマなら炒ってないので日持ちするはず。
京セラ セラミックミル ゴマ専用 イエロー CM-15N-YL
京セラのスパイスミルは、同じ物を15年以上使っていて品質のよさはわかっています。今日からごまミルも使います。
まとめ
ごまは皮の部分にカルシウムがとても多く、むきごまにしてしまうと激減します。ごまを買ってきて、すりごまにすれば、香りもよくカルシウムも摂れます。
私のように玄米を食べている方は、リンとバランスを取るためにカルシウムを余分に摂る必要があります。青菜を食べることと、玄米にごまをかけて食べれば、カルシウム補給はできますよ。
自分であらいごまを買って来て、炒って、すりごまを作る時は、卓上に置くすりごま器を使うほか、電動コーヒーミルも使えます。私は200gずつすりごまを作って、タッパーに入れてたくさん使うようになりました。
少し油がつきますが、ペーパータオルで落ちます。においがつかないので、コーヒーと共用しても大丈夫です。